第891話:幼女じゃないかヨゥ!
「こんにちはー」
「待ってたヨゥ! あれ?」
ジーク君家にやって来た。
のはいいが、イシュトバーンさんと新聞記者ズがついて来てるのを不審に思ったのだろう。
だって捕まっちゃったんだもん。
人気者はツラいぜ。
「師匠、これはどういうことなのですかっ?」
「イシュトバーンさんはペペさんを知ってるから、役に立ってくれるかもしれない。記者さん達は、ぜひ『アトラスの冒険者』期待の新鋭を記事にしたいって」
「そ、そうかヨゥ」
「格好良く書いてくださいねっ!」
まー新聞記者ズは記事のネタがないだけだろうけれども。
「ジーク君はドーラ独立後初の、大規模移民の中からの『アトラスの冒険者』だよ。何と『水魔法』と『能動』の二つの固有能力持ち。レノアも『吝嗇』っていう能力持ちで、この二人のコンビは既に二つのクエストをこなしてるんだ」
満更でもなさそうなジーク君とレノア。
新聞読む人は『アトラスの冒険者』を知ってるだろうけど、現在ドーラ全土で憲兵みたいな活動していることもある。
PRを兼ねてちょっとでも記事になった方がプラスだろ。
ハハッ、ジーク君が張り切ってヨゥヨゥ言ってるし、レノアはもっと張り切ってオーバーアクションになっとるわ。
二人へのインタビューが行われる中、イシュトバーンさんが笑う。
「精霊使いのやることはムダがねえなあ」
「でしょ? でも皆あたしが思いつきで物事こなしてると思ってるんだよ。まことにけしからんことに」
「間違いじゃねえんだろ?」
「合ってるけれども」
アハハと笑い合う。
「ところでペペちゃんのトラブルって何なんだ?」
「いや、内容はサッパリ。あそこ結界張ってるからヴィルでも偵察できないし」
「とんでもないことやらかしてるんじゃねえか?」
「あり得るね。でも新人に振られるクエストだからな?」
もっともペペさん関係のクエストと決まったわけではない。
が、魔境に住んでるような物好きがペペさん以外にいるかって言われるとなあ。
おっぱいさんのあの笑顔からすると、このクエストは間違いなく一クセも二クセもあるエンターテインメントだ。
そして少なくともおっぱいさんは新人用の案件と考えている。
おそらくペペさんが困ってるんだろうに、ジーク君とレノアで解決可能と思われてるって、どんなクエストだろ?
「むーん?」
「あんたが考え込むって珍しいじゃねえか」
「割とヒントがあるのに、どんなクエストかまるでわからないんだよ」
「それくらいの方が安心だぜ」
「どゆこと?」
「あんたのカンはヤバい時ほど働くじゃねえか。てことは、ヤバいクエストじゃねえって寸法だ」
なるほど?
さすがイシュトバーンさんだな。
あたしのカンはラブい時ヤバい時は働くから、そーゆー話じゃないってことか。
あれえ? これ本当に面白いクエスト?
「お、終わったか?」
新聞記者ズが頭を下げ、聞いてくる。
「これからどうされるんですか?」
「ジーク君の三つ目のクエストがかなり異色っぽいんだよね。あたしも見物に行こうと思って」
「どんなクエストなんですか?」
「いや、これから行くんでわかんないの。守秘義務もあるから、今は話せないかな。許可が下りて、新聞が売れそうな解決の仕方したら話してあげるよ」
「では、ユーラシアさんの経験したクエストで面白いやつを教えてください」
「えっ?」
そー来たか。
本の世界にしてもテンケン山岳地帯にしても赤眼族にしても、話せないやつが多いんだよな。
話せるやつで面白いのはほこら守りの村の怪だが、記事が話題になって魔力膨大幼女マーシャの人格形成に影響及ぼしでもしたらえらいことになるし……。
「……あたしの持ちクエストじゃないんだけど、関わってるやつで。デミアンっていう黄色くて悪くない冒険者の『クー川右岸魔物退治:至急』ってやつは、相当なエンターテインメントだよ。現役最年長冒険者マウさんの『奇妙なクエスト』も、しんみりしたいい話になると思う。あっ、世界樹折っちゃった話も面白いわ。これはダンかカールっていう冒険者に聞くといいよ」
「「ありがとうございました!」」
「じゃーねー」
イシュトバーンさんが言う。
「あんたのクエストは話せねえやつが多いのか」
「まあ。イシュトバーンさんもある程度知ってるでしょ?」
「だから他の冒険者のクエストを紹介するのか。親切じゃねえか」
「あたしは生まれてこの方徹頭徹尾親切だよ。さあ、行こうか」
いざ、『魔境の家』へ。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「やっぱここかあ」
「予想通りだな」
魔境世界樹エリアのペペさん家でした。
ここ来るのは、折れた世界樹の伐採作業の時以来か。
「遠くにドラゴンがいますっ!」
「サンダードラゴンだね。あっ、ちょっと待った!」
バシュッ。
周囲の状況もわきまえず走り出したレノアが防御結界に弾かれ、気絶して倒れ伏す。
笑えるイベントを提供してくれてありがとう。
「ふーん、結界ってすごいなー」
「落ち着いてる場合じゃないヨゥ!」
「すげえ音したが大丈夫なのかよ?」
「イシュトバーンさんだって笑ってるじゃん。大丈夫だよ」
庭に設置してある回復魔法陣にレノアを放り込む。
あ、起きた。
「ひどい目に遭いました……」
「レノアは自分の欲望のままに、好きで激突してたんだからな?」
まったくドラゴンに向かって一直線ってどうかしてる。
メッチャおもろいけど。
小屋をノックして挨拶っと。
「こんにちはー。美少女精霊使いとその他三名が来ましたよ」
「あ、ユーラシアちゃん? ゆーらじあぢゃあああんんんん!」
ドアを開けた途端、ペペさんが飛びついてくる。
ちなみにレベルカンスト者の全力ダイビングなので結構な衝撃だ。
ヴィルが優しく飛びついてくるのとはわけが違う。
ジーク君が抱き留めてたらエンターテインメントだったのに、惜しかったなー。
「おい、ペペちゃん。何があったんだよ?」
イシュトバーンさんはふつーに質問するが、ジーク君は混乱しているようだ。
「ペペさんって大魔道士じゃないのかヨゥ?」
「ドーラを代表する大魔道士だよ?」
「幼女じゃないかヨゥ!」
「見かけで判断しちゃいけないよ。こんなんでも三八歳だぞ?」
「あっ! 年齢は秘密なの!」
「ごめーん」
「ペペちゃん三八なのかよ?」
「お若く見えますねっ!」
ハハッ、てんやわんやだ。




