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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第890話:二人のトラブルメーカー

 ――――――――――一六六日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「ユーちゃん、いらっしゃい」

「遅いヨゥ!」

「すまんよぅ!」


 チュートリアルルームにやって来た。

 今日は朝から凄草の株分けがあったんだよぅ!

 甘くておいしいんだよぅ!


「で? ドーラの誇る美少女精霊使いユーラシアが可愛い後輩を玩具にして……助けてやろうじゃないか」

「本音が透けてるヨゥ!」


 アハハ。

 美少女精霊使いは正直者だから。


「大体のとこは昨日バエちゃんに聞いてるんだ。魔境関係だとか。ジーク君とレノアの考える、笑えるポイントだけをかいつまんで話して?」

「師匠、笑えるポイントなどないのですっ! 今日私はドラゴンを倒して伝説になるのですっ!」

「どうどう。ドーラではドラゴン倒したくらいじゃ伝説になんないから」


 木刀で天を指すレノアを宥める。

 しかし帝国人でもドーラ人でも、ドラゴンって言うとテンション上がる人が多い。

 魔境ドラゴン帯に生息する魔物は、サイクロプスにしてもマンティコアにしてもドラゴンに負けないくらい強いんだが。

 特に儲かるわけでもないのに、ドラゴンは別格なのかなあ?

 魔物強者として知名度高いからか。

 倒せば達成感はあるけどね。


「でもドラゴン倒すと『ドラゴンスレイヤー』って呼ばれるから、それなりに腰の辺りがむず痒いよ」

「むず痒いのは関係ないヨゥ!」

「師匠はどれくらいドラゴンを倒しているのですかっ?」

「え? 一々数えてないからわかんない。倒し過ぎると絶滅して素材が取れなくなるから、マジでやめろって言われるくらい」

「ここに来る冒険者は、ユーラシアは失礼にもドラゴンをザコ扱いしてるって言ってるわよ?」

「誰だ、そんなこと言ってるのは。あたしはちゃんと、ただのドラゴンだからって舐めちゃいけないよって注意してるわ」

「「……」」


 落ち着かせるつもりではあったけど、ジーク君はともかくレノアまでテンション下がっちゃったじゃないか。

 しょうがないなあ。


「うちは四人パーティーで、初めてドラゴン倒した時のレベルは五五だったよ」

「最低五五くらいのレベルは必要ってことかヨゥ?」

「まずレベル五〇を目標にするといいと思うよ。ドラゴン倒すのを考え始めるのはレベル五〇以降だな」

「それ以下のレベルではムリですかっ?」


 だからレノアは真っ直ぐ行き過ぎだとゆーのに。

 どーして死にたがる?

 ドラゴン舐めんなって言っとろーが。


「例えばアイスドラゴンを相手にしたとして、レベル五〇あればあんた達ならそうだな、五回戦えば一回くらいは勝てると思うよ。四回死ぬけど」

「「……」」

「こっちのステータスを下げる技『カースドウインド』を使ってくるレッドドラゴン相手になると、一〇回戦って一回勝てるくらいだな。九回死ぬ」

「「……」」


 ちょっとは頭冷やせ。

 装備とスキルをしっかり揃えてレベル六〇あれば、勝率はうんと跳ね上がるから。


「ちょっとユーちゃん。二人が神妙な顔してるわよ?」

「で、新クエストの笑えるポイントはどうなったかな?」

「『魔境の家』という転送先なんだヨゥ」

「ギルドでオリジナルスキル屋やってるペペさんって人がいるんだ。メチャクチャに高威力の魔法を作り上げて試し撃ちしてたら、ドラゴン吹き飛ばしまくってレベルカンストしたという伝説持ち。つい手元が狂って世界樹折っちゃったこともある」

「すごいですねっ!」

「うん、メッチャすごい。そのペペさんが魔境に住んでるんだ。何かトラブルが発生して困ってるということだと思う」

「少し安心したヨゥ」


 多分ね。

 ホッとしたように続けるジーク君。


「じゃあ魔物と戦闘にはならないのかヨゥ?」

「魔境の魔物なんかまだ到底ムリだってば」

「よかったヨゥ!」

「でもジーク君一人じゃ手に余るかもしれないから、あたしもついてったげるよ」

「リーダー一人じゃないですっ! 私もいますっ!」

「だからだぞ?」

「「え?」」


 わからんのか。

 自覚がない子はしょうがないなあ。

 誰だ、自分のことを棚に上げてなんて思ってるやつは。


「ジーク君はレノア止めるのに精一杯でしょ? ペペさんが暴走したらどうにもなんないじゃん」

「「……暴走?」」


 そゆとこ声揃うのな。


「ペペさんはドーラの行く末を決める会議に呼ばれた一〇人の実力者の内の一人だよ。にも拘らず、何もするなって釘刺されてるほどのトラブルメーカーなの。決して侮ってはいけない」


 ヤバさに気付いた様子のジーク君。


「わ、わかったヨゥ。よろしく頼むヨゥ」

「じゃ、行こうか」


 あっ、ジーク君まだギルドカード持ってないじゃん!

 フレンドでジーク君家に飛べないわ。

 いや、うちの子達は置いてくるか。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 イシュトバーンさん家にやって来た。


「こんにちはー」

「これは精霊使い殿、おはようございます。ただいま旦那様を呼んでまいります」

「え?」


 あたしの返答を待たずにイシュトバーンさんを呼ぶシステムが構築されてるやないけ。

 すぐ『遊歩』で飛んでくるイシュトバーンさん。


「おう、何の用か知らんが連れてけ」

「すげえ大雑把な要求だなー。いや、新人冒険者の案件なんだよ」

「軍人の子供達だな? どうした。まだギルドまで行ってねえんだろ?」

「今は三つ目のクエストなんだけど、『魔境の家』っていう転送先が出たの」

「魔境の家? ああ、ペペちゃんとこか」


 やっぱイシュトバーンさんは理解が早い。


「多分。ペペさんが何かのトラブルに巻き込まれてるのかなーと。おっぱいさんが振ったクエストだから問題ないとは思う。でも愉快なことが起こりそーだからあたしも行こうかと」

「ペペちゃんなら何かあってもおかしくねえな。連れてけ」

「押すなあ」


 おっぱいさん笑ってたくらいだから、大したクエストじゃないはず。

 レベルの高くないジーク君に振られるなら荒事じゃないだろう。

 イシュトバーンさんはペペさんのことを知ってるから、知恵を出してくれるかもしれない。

 連れてったって特別問題はないか。


「じゃ、行こうか。その前にこれあげる」

「ん? ああ、『光る石』のスタンドか。待ちかねたぜ! ありがとうよ」

「いいってことよ」

「昼飯はうちで食ってけ」

「ゴチになりまーす! うちの子達も呼んでいい?」

「もちろんだぜ」

「やったあ、ありがとう!」


 交渉成立。

 いざ、ジーク君家へ。

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