第887話:ダイナミックにフラグを立てる
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん。ヴィルちゃんもいらっしゃい」
午後少し時間があったので魔境へやって来た。
何故って言われても困るが、リラクゼーションタイムだから?
「今日ね、帝国行ってきたんだ。例の『カル帝国皇宮』のクエストは一応完了した」
「えっ? 早いですね」
「クエスト自体は簡単だったんだよ。飼ってるガルーダの機嫌が悪いから何とかしろ、みたいな」
「何が簡単なのかよくわかりませんが」
魔境でグリフォンに遭ったのも経験になってたんだよ。
大きい鳥の魔物は友達になれるのだ。
「たまたま向こうで知ってる人に会えてさ。トントーンと話進んだからよかった」
「帝国の皇宮に知人? ユーラシアさんが山ごもりしていた時に戦った軍人とかですか?」
「いや、リモネスっていう聖火教徒。向こうの山にこもってた時、一人で会いに来たんだよ。『サトリ』の固有能力持ちで、こっちの考えてることがわかっちゃうとゆー、えっちな人」
「あっ! 賢者として名高いリモネス氏ですか?」
「うん。皇帝陛下の相談役とかやってるって言ってた」
「ははあ、なるほど?」
なるほどって言う割にオニオン面白い顔してますね?
「考えを読まれるとやりづらくないですか?」
「あたしは正直者で心の清らかな美少女だから、特には」
本心だぞ?
笑うところじゃないんだが。
「いや、律儀な人だから問題ないの。こっちがサービスすると、同じだけ返してくれる感じ。で、今日の感触からすると、プリンスルキウスを持ち上げる計画では共闘できるな」
「本当ですか!」
おそらく聖火教徒のリモネスさんは、悪魔と近いドミティウス皇子を快く思っていない。
悪魔と親しいのはあたしも同様だが、あたしの場合はオープンだから。
どうもリモネスさんは自分で何かしようというのではなくて、受身な感じがする。
あたしが『サトリ』の能力持ちだったら、力を使ってどんどん自分好みの世界にしたいと思うだろう。
けどリモネスさんにそーゆー考えはないみたいだ。
だからこそ陛下に信頼されて、相談役を務めてるのかもしれないけど。
「うん。クエスト自体は終わったけど、時々帝都へ遊びに行って、使える人やお偉い人と仲良くしてこようかなーと思ってる」
オニオンさんが頷く。
「有力者と知り合えると面白いことになるかもしれませんねえ」
「おっ? オニオンさんったら、ダイナミックにフラグを立てたね」
アハハと笑い合う。
何たって皇宮だもんな。
出入りしてる内に皇族の誰かとコンタクト取れるだろ。
まずはリリーと近い人が望ましいけど。
「愉快なことになってきたから楽しみなんだ」
「ユーラシアさんは楽しみを見つける天才ですねえ」
「天才だったかー」
アハハ、楽しいな。
「おっぱいさんにクエスト終了の報告はしとこうと思ってさ。でも何も売るものなしでギルド行くのも寂しいから、ちょっと稼ぎに来たの。行ってくる!」
「行ってくるぬ!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊及びいい子出撃。
◇
「姐御、今日はどうしやす?」
方針の確認は大体アトムの仕事だ。
「真っ直ぐ北へ行くよ。アイテムでは特に何が優先ってことない。売れるものなら何でもいいかな」
アルアさんに『ウォームプレート』一五〇枚の注文を出してる手前、素材も必要なのだ。
ギルドで売らないものではあるが採取したい。
「オーガ帯かワイバーン帯を辿る方がベターね?」
「アイテムだけ考えりゃそうかもだけど、グリフォンに遭いたいんだ。皇宮地下でガルーダに御馳走あげたじゃん? グリフォンにもエサをあげてバランス取っとかないと」
「何ですか? それ」
クララがクスクス笑う。
何って言われても困るが、野生の鳥が慣れてエサ食べるのは、見てて微笑ましいんだよな。
すげえ嬉しそうな顔するし。
ザコを狩りながら、北のドラゴン帯を目指す。
あ、デカダンスだ。
「よーし、黄金皇珠もドロップした!」
相場下がりそうだからあんまり売れないんだけどな。
まあいい、財産は財産だ。
帝国での需要いかんでは、どんどん売って構わないものなのかもしれないし。
「御主人、グリフォンが飛んでくるぬよ」
「もう来たんだ?」
目がいいのか鼻がいいのか、えらい遠くから来たな。
そして明らかに喜ばしげ。
「くおっ!」
「おお、いい挨拶だね。そーかそーか。デカダンスの亡骸が欲しかったか。食べていいぞ」
嬉しそうにデカダンスの亡骸を食べるグリフォン。
「よしよし、可愛いね」
「可愛いぬよ?」
「ヴィルも可愛いぞー」
ぎゅっとしてやる。
初めてグリフォンに遭ったのは、まだあたし達のレベルが三十代の時だった。
当時はえらい魔物がいるもんだなあと思ったけど、今は可愛い扱いだもんな。
これが強者の余裕というやつか。
「この前と同じ個体でやすかね?」
「慣れてるから同じ子なんじゃないの? 見分けはつかんけど」
二、三体のグリフォンが我勝ちにエサ食べてる様子も見てみたいな。
「新しい魔境の楽しみ方ができたなあ」
「ボスはプレジャーをファインドするジーニアスね」
「ジーニアスだったかー」
アハハと笑い合う。
「じゃあね、また会おう!」
くおっと挨拶を返してくれるグリフォン。
うむうむ、心の通じるやつは敵ではない。
「ユー様、このままグリフォンを慣らしていくと、羽毛をくれるようになるかもしれませんよ」
「あり得るな。よく気がついたね。クララ偉い!」
「えへへー」
フニャッとしたクララの笑顔もまた可愛いぞ。
我がパーティーの癒し。
「グリフォンが羽くれるようになったらさあ。輸出用もいいけど、うちの布団もふっかふかにしたいねえ。きっとよく寝られると思うよ。特に冬は」
「姉御が今以上によく寝たら、永眠しちまいやすぜ?」
「ゴートゥヘブンね」
「困るなー。永眠の手前くらいで起こして」
笑いながらさらに北へ歩を進める。
「ウィッカーマンも倒していこうか。ヴィルのレベルが上がんないのもつまらん」
「「「了解!」」」
あたしのレベルも一二〇以上は欲しいしな。
一二〇より高ければ、ブラックデモンズドラゴンに遭遇したとしても『雑魚は往ね』で屠れる計算だ。
適当に魔物を倒しつつ、いい時間になったところで、転移の玉を起動し帰宅する。




