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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第886話:いい女は策士

「精霊使い殿の固有能力は何なのだ?」

「あたしは『自然抵抗』『精霊使い』『発気術』『閃き』『ゴールデンラッキー』『限突一五〇』の六つだよ」

「六つ? 三つ以上なんてことがあるのか……」

「冒険者になった時は三つって言われてたんだけど、段々増えちゃった」


 近衛兵長さんがため息を吐く。


「羨ましいですな。小官は固有能力持ちではないから」

「え? 近衛兵長さんは固有能力持ちだよ? ねえ、おっちゃん」

「ハハハ。私は『鑑定』持ちではありませんので、その人の固有能力はわかりませんぞ」

「あれえ?」


 とゆーことは、リモネスのおっちゃんはあたしの考えてることを読み取って、固有能力を言い当てたってことか。

 まったく『サトリ』はえっちな能力だな。


「ともかく近衛兵長さんは固有能力持ちだよ。あたしは『閃き』持ちでカンがいいからだと思うけど、固有能力持ちかどうかまではわかるんだ。でも『鑑定』持ちではないんで、何の能力かまではわかんない」

「小官が固有能力持ち……間違いないのだな?」

「ないよ。帝国ではあんまり固有能力を調べないんだ?」


 近衛兵長やってるくらい偉い人なのにな?


「ふむ、カル帝国では軍人以外、レベルを上げる機会すらありませんのでな。固有能力は重視されないのです」

「へー」


 確かに低レベルの内から役に立ち、自分が能力持ちだって気付くケースは少ない。

 見抜く系の能力か、魔法系が強く発現してる時くらいだ。

 レベル上がんないと役に立たないなら、持ってないのと変わらない。

 だから調べるということがあまりないんだろう。


「宮廷魔道士を目指しているとか、あるいは縁談の釣り書きの賑やかしにしたいという者はおりますな」

「鑑定士もいい加減な者が多いです。信頼性のある鑑定士もいますが、一部の貴族子弟くらいしか使いませんので、鑑定料が法外ですぞ」

「ふーん」


 ドーラでも事情は似てる。

 あたしも『アトラスの冒険者』じゃなかったら、自分の固有能力なんて気にしてなかったろうしな。

 ただ固有能力の種類によっては、伸ばして特定の職業に役立つってことはあるのだ。

 軍人以外にレベルを上げる機会のない帝国はともかく、魔物と戦う機会の多いドーラ人は、自分の固有能力を把握しておくべきだと思う。


「今度来る時、『鑑定』能力持ちの子連れてこようか?」

「何? それはありがたい!」


 喜ぶ近衛兵長さん。


「近衛兵長さんの部下で、皇宮で働いてる人は何人いるのかな?」

「二五人だ」

「二五人なら全員調べるよ。軍人さんは自分の能力を知ってた方がいいと思うよ?」

「大変結構な申し出だが、何をもって礼としたらいいだろうか?」

「あたしはいらない。連れてくる『鑑定』能力持ちは、あたしよりちょっと年上の女の子だから、考慮してくれると嬉しいな」

「ふむ、わかった」


 今日のお仕事はこんなとこかなー。

 しょっちゅう皇宮へ来られる足場ができればよかったので、上々の塩梅だ。


「他何かあたしに聞きたいことあるかな?」

「どうして精霊使い殿はあけすけに話してくれるのだ? 特に隠し事もないようだが」

「リモネスのおっちゃんのいるところで隠し事なんてムダじゃん。それにあたしは品行方正かつ公明正大かつ容姿端麗な冒険者だから、やましいことなんかないぞ?」


 ムダなことは好きじゃないんだなー。


「何故こうまで親切にしてくれる?」

「『アトラスの冒険者』ってのはね……」


 クエストを完了すると新しい転送先が増えるからうんぬんかんぬん。


「しからば、成績のいい冒険者ほど行ける場所が多くなるという仕組みか」

「そうそう。例えばここって帝国の首都なんでしょ? 買い物もマーケティングもできるし、いい転送先だなーって思ってる」


 あたしはとにかくドーラの最大のお得意さんになる帝国のことをよく知りたいのだ。

 『鑑定』持ちのビルカを連れてくる時に、ショッピングでもしていこうかな。


「でもおっちゃんがいて助かったよ。この『カル帝国皇宮』っていうのは、冒険者ギルドに二つあった超高難易度クエストの一つなんだ。信用されるまでが難しいなーと思ってたから」

「ほう、もう一つは何でしょうかな?」

「『魔王』ってやつ」

「「『魔王』?」」


 リモネスさんと近衛兵長さんの声が揃う。


「魔王を倒せという?」

「いや、何も情報がないからどうだか。魔王が困ってるのかもしれないし」

「『アトラスの冒険者』とは実に興味深いですな」

「あたしも魔王に会いたいの。『魔王』のクエスト請けてる子に仲良くなったら紹介してって言ってあるんだ」


 近衛兵長さんが呟く。


「魔王に、会いたい?」

「うん。うちにもいるんだけど、高位魔族ってすっごい面白いんだよ。あ、そーだ。おっちゃん、バアル捕まえた」

「!」


 ハッハッハッ、初めてリモネスさん驚かしたった。

 急に思考が切り替わるとリモネスさんの『サトリ』も追いつけないみたいだな。

 近衛兵長さんが聞いてくる。


「バアル、とは?」

「これちょっと重要なことなんだ。次あたしが来る時までに、おっちゃんと意思疎通しといてくれない? おっちゃんがオーケー出すなら話すよ」


 こうなると話さないわけにはいくまい。

 リモネスさんが苦笑する。

 第二皇子と悪魔の癒着についての事情を知っている者とプリンスルキウスのシンパを増やしたいという、あたしの思惑に気付いたんだろう。

 これは聖火教徒リモネスさんの理想とする状況とバッティングしない。

 ウィンウィンだ。

 近衛兵長さんも巻き込んどいてください。


「ハハハ、一杯食わされましたぞ。ユーラシア殿は策士ですな」

「いい女は一クセも二クセもあるもんなんだよ」

「まさに」


 アハハと笑い合う。

 要領を得ない近衛兵長さんが戸惑っているが。


「楽しかった。ありがとう! 今日はもう帰るね」

「精霊使い殿、申し訳ないが一つ、聞き入れてもらいたいことが」

「何だろ?」


 マジで予想がつかないぞ?


「帝国本土では一般人の武器所持が禁止されておりましてな……」

「あっ、そーだった! 異国人の無作法だと思って見逃してよ。今後人前でパワーカードは出さないようにするから」


 微妙な顔をする近衛兵長さん。


「じゃねー」


 転移の玉を起動し帰宅する。


『クエストを完了しました。ボーナス経験値が付与されます』


 やったぜ!

 久しぶりにボーナスの嬉しい瞬間だ。

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