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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第881話:明日は皇宮

「サイナスさん、こんばんはー」


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは』

「勤労少年達は?」

『夕方に帰ってきたよ。『光る石』スタンドはアレク、ケス、ハヤテに渡しておいた』

「喜んだ?」

『ああ、ユーラシアの方に足を向けては寝ないはずだよ。今日は』


 アハハと笑い合う。

 まあ喜んでくれればいいのだ。

 あの三人も頑張ってるから御褒美だね。


「問題なく使えそう? いや、使えることはわかってるけど、サイナスさんみたいな低次元の存在が使用してみてどうかってことね?」

『低次元って。特には』

「マジックポイント抜かれた時の倦怠感とか、どうだろ? あたしみたいな高次元の存在にはわかんなくて」

『高次元って。特には』

「感想がひっじょーに頼りないなー」


 最大マジックポイントの小さい人が、魔力を流し込んだ時どうかってことが知りたいのになー。

 もっともサイナスさんは知性派だから、レベルが低くても割と最大マジックポイントはありそうな気がする。

 まあサイナスさんくらいなら問題なく使える、ということがわかったからいいだろう。


『あれから聖火教の礼拝堂行ったんだろう?』

「夕方に行ってきた。大祭司ミスティさんと、もう一人あたしと絡みの多いハイプリーストがいるんだよ。その二人に『光る石』スタンドあげたんだ。すげえ喜ばれた」

『……聖火教は明かりに不自由しないだろうにな?』

「蝋燭の火は暗いし揺らめくから、本読んだり書きものしたりする時には向いてないんだって」

『道理だな。蝋燭は火事の危険もあるか』

「夜は寝ればよくない? って言ったったよ」

『贈った方が言うのはシュールだな』

「贈られた方が言ったら失礼だろうが」

『わかってるじゃないか。ユーラシアは賢いな』

「えへへー」


 思わずクララ笑いが出てしまった。

 『光る石』スタンドは大変喜ばれるので、仲良くしたいところには配っておこう。


『で、聖火教は移民の待遇について納得してくれたか?』

「うん。あっちも急に困窮した移民が来た事情には変わりないじゃん? こっちの開拓地以上に資金には難儀してたみたいでさ。いろんな金策考えてたよ。でも解決手段はほとんど信徒の人海戦術なの。笑えてしょうがない」

『ハハハ、想像できるな』

「だから一も二もなく、第二回以降の移民から土地代を徴収するって案に乗ってきたよ。どこも同じルールだと、不平等がなくていいねえ」


 人口の少ないドーラでは、土地代って言う概念が馴染みにくいからな。

 レイノスやカトマスではあるのかもしれんけど。

 しかし土地代徴収の制度が軌道に乗れば、ドーラの経済的負担を小さくして開発を進めることができる。

 ある程度の生活のノウハウと引き換えになるわけだから、移民にも優しい方策だろ。


「今日朝、開拓地に行く前に、アリスの話聞きに行ったんだよ」

『例の『全てを知る者』だな? 画集のモデルになってるのは驚きだが』

「画集のモデルのラインナップはすごいわ。今後二度と見られないような面々だからね」

『何より表紙が一番すごいというオチ?』

「サイナスさんはよくわかってるなあ」


 アハハ。

 表紙のあたしの魅力に狙い撃ちされて、画集の売り上げが伸びますように。


「画集の話は置いといて、今帝国本土でプリンスルキウスの評判がどうなのかって、アリスに聞いたんだ」

『ふむ、興味あるな』


 あたしも明日帝国の皇宮へ行くつもりだから、その辺の予備知識が欲しかったってのはある。


「大使としてドーラに来た時は、ほとんど注目されていなかったって」

『ドーラの存在感の耐えられない軽さよ』

「それなー」


 まあドーラの人口なんて帝国の一〇〇分の一以下らしいからな。

 やっぱ人口が多くないと始まんないわ。

 どんどん移民を受け入れて、いやその前に土地を整備しないとか。

 やること多いな。


「でも今はプリンスの政治的センスが議員達に、輸出品を発掘する眼力が貿易商達の間で評価されつつあるんだって」

『ほう? 政治的センスが評価されるということは……』


 この手の話題にサイナスさんは敏感だ。


『パラキアス氏が何かやってるんだな?』

「サイナスさんは鋭いなー。帝国がドーラを捨てたのだということを周知させれば植民地の離反は防げるのではないか、という内容の上申書をプリンスから提出してもらってさ。さらにドーラ政府から移民への待遇不備に関する抗議を出してるの」

『……ドーラからの抗議は真っ当と言える。しかし、ルキウス皇子に対する当たりは強くなるんじゃないか?』


 サイナスさんの言う通りだね。


「パラキアスさんには、プリンスの実像を大きく見せてやった方が、反主流派の支持を得やすい、主流派からも寝返らせやすいっていう考えがあるみたいだよ」

『なるほど、だから政治的センスが評価される……』

「しかも多分、パラキアスさんが帝国の首都で煽ってるんだよ。移民への措置がひどいぞ、政府何やってるーって」

『ははあ、それも皇子の実力が再評価される原因か』

「え?」


 何故に?


『だって皇子が大使として放り出された途端に問題が噴出しているから』

「相対的にプリンスが政権を支えてた有能に見えちゃうってことか」


 主席執政官からメキスさんとバアルの情報源両翼がもがれているなんて、普通は知らないもんな。

 しかもプリンスは大使として着々と実績を残している……。


「面白くなっちゃったってことだね?」

『うむ。パラキアス氏が大胆に工作できるのも、皇子の現在のレベルなら大概のことは跳ね返すと見ているからだろう』

「美しく可愛らしいあたしのレベリングのおかげだったかー」

『レベリングの方に修飾語つけるんじゃないんだ?』

「たまには変化球で」


 アハハと笑い合う。


『明日は帝国へ行くんだな?』

「楽しんでくるね」

『オレも夜の通信が楽しみだよ』

「期待してて」

『クララ達も連れていくのかい?』

「ちょっと迷ったけど連れていく」


 行き先がカル帝国皇宮だ。

 戦闘にはならないと思うけど、あたしが精霊使いだってことを一目でわからせるのにうちの子達は必要だから。

 あたしが何者かを不審がらせる前に、特殊な冒険者と納得させれば勝ちと見た。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日は皇宮。

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