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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第880話:バエちゃんとこの世界の文字

 フイィィーンシュパパパッ。


「ユーちゃん、いらっしゃーい」

「こんにちはー。これお土産だよ」

「いやーん、ありがとう!」


 お肉を渡すとクネクネする不思議なカラクリのいる、チュートリアルルームにやって来た。

 バエちゃんが聞いてくる。


「新しく入った子達は大丈夫なの?」

「最近のバエちゃんは新人冒険者のことをよく気にしてるねえ。感心感心」

「そ、そお? お仕事だから当たり前なのだけれど」

「言われてみればバエちゃんの仕事だったわ。あたしが気にしてる方がどっちかとゆーとおかしいな?」


 可愛い後輩のことであるし、新人冒険者が一生懸命働いてくれるのはドーラのため、ひいてはあたしのためだ。

 ちっともおかしいことではないか。

 

「ツインズ、ノブ君、ボニーの四人がパーティーで行動してるんだ。今は利害も共通するし、仲良くやってるよ」


 今は各自の石板クエストを持ち回りで消化してるみたいだから、レベルアップも早いだろ。

 レベル二〇になるくらいまではこのままでいいんじゃないかな?

 お兄さんズのようにいつまでもともにやっていくというわけにはいかないだろうけど、経験を積めて装備を充実させられればいいのだ。


「ジークハルトさんはどうかしら? 二つ目のクエスト、苦戦してないかしら?」

「チュートリアルルームには来てないんだ?」

「来ないのよ。ユーちゃんがヤバいって言ってた子だから心配で」

「心配なのはボーナスだよね?」

「そお!」


 アハハと笑い合う。

 むしろスキルを欲しがってチュートリアルルームに来ることの方が心配なくらいだ。

 問題あるまい。


「いや、多分大丈夫だよ。昨日ジーク君とレノアの父ちゃん達に会ったんだ。二つ目のクエストにもかなりの手ごたえを感じているようだって言ってたから」

「そうなの? よかった」

「三つ目は毛色の変わったクエストになるんだよね?」

「よほど戦闘に向いている子ならば、効率を優先してバトルばかり回されるということもあるかもしれないわ。でも最初は装備も揃ってないし、いろんな経験をさせたいという意図もあるから」


 うむ、納得の理由だ。

 しかしだったら採取のクエストを最初に回して、完了の経験値でレベルが上がれば少し楽になるのにな。

 いや、採取のエリアにだって魔物はいるから、そーうまくはいかないか。


「石板クエストの選定に私は関わってないから、詳しいことはわからないけど」

「最近三つ目にパワーカードの工房が出るケースが多くなってるんだよ。ノブ君やボニーもそうだったみたい」

「ユーちゃんが盛んに勧めてるものねえ」

「使い手が多くなると嬉しいからね。最近では武器防具じゃないパワーカード作って、外国に輸出しようとしてるの」

「輸出? すごいのねえ。ちょっと前まではかなり珍しいものだったはずなのに」


 素直に感心するバエちゃん。


「まージーク君とレノアは問題なくギルドには来るだろ」


 あとはマウ爺に丸投げだ。


「ところで今日はユーちゃん、何か用があったのかしら?」

「バエちゃんの顔を見に来たんだよ」

「やあん、ユーちゃん女殺し!」


 高速クネクネはすごいなー。

 ……これ見物料取れないかな。


「ってのはひとまず置いといて、これの読み方が知りたいんだよ。バエちゃんとこの世界の文字でしょ?」


 マウ爺からもらった碑文の写しを取り出す。


「……古い時代のデコレーション文字ね。ユーちゃん、どうしてこれがこっちの世界の文字だとわかったの?」

「魔道コンロにもついてるこのマーク、危険を意味するんでしょ?」

「あっ、そうそう!」


 腑に落ちたような顔になるバエちゃん。

 魔道コンロに同じマークがついてることを思い出したのはあとからだけどな。


「崖崩れの現場にこれの書かれた石碑があったんだよ。バエちゃんとこの世界の調査隊かなんかが残したものと思うんだ」

「言われてみれば過去に探検隊が入ったことがあったはず……」

「こっちではその崖崩れに巻き込まれて大勢死人が出ちゃってるの。石碑は三ヶ所にあってさ。他の二ヶ所も何がどう危険なのか理解できないと、犠牲者が増えちゃうかもしれないんだ」

「わ、わかったわ。私じゃ読めないから、解読してもらっとくね」

「早めによろしく」


 バエちゃんとこの世界の人と赤眼族が、同族か非常に近い関係にあることの物証が増えた。


「これはユーちゃんが請けてるクエストなの?」

「いや、違くて。現役最年長の『アトラスの冒険者』が、二〇年間以上クリアできなかったクエストってのがあって……」


 マウ爺の『奇妙なクエスト』についてかくかくしかじか。


「崖崩れに……」

「哀れなことなんだけどさ。でも彼らの残留思念が、それ以上崩れてくるのを防いでたみたいなんだ」

「思う一念は強いのねえ」

「まったくだよ。残された者は無念の思いをムダにしてはいけないからね」


 だから解読の方よろしくってことだぞ?


「あたしが今請けてる石板クエストも、クリア条件がイマイチわかんないやつなんだよねえ。ただ一〇年くらい前にゲレゲレさんが請けてたのと同じみたいでさ」

「ふうん。どんなの?」

「赤眼族っていう亜人関係のやつ」


 燃料を投下したったがどうだ?

 ふむ、特に変化はない。

 この反応は素だな。

 赤眼族はこっちの世界の名称だろうからピンと来ないのかも。


「当時ゲレゲレさんはクリアしたんでしょ?」

「うん。何回か通ったら自然とクリア扱いになったみたいなこと言ってたから、あたしの場合もそうなのかも。でもあとでレポート書かされたんだって」


 バエちゃんの目が泳いでる。

 レポートで何かに気付いたな?

 まあいい、今日はこれで十分な収穫だ。

 あとはしらばっくれたろ。


「書くの苦手なんだよなー。どーしてもエンターテインメントを入れなければってゆー強迫観念に駆られてしまう。バエちゃんは勤め人だから報告書とか得意でしょ? もし書くことになったら手伝ってよ」

「え? ええ、いいわよ」


 誤魔化すのが下手だなー。

 まあそこがバエちゃんのいいところだ。

 何も言ってこないところ見ると、内緒にしとかなきゃいけないやつなんだろう。


「帰ろうかな。さっきの危険地域の石碑の写しの解読はどれくらいでできそう?」

「三日あれば大丈夫だと思う」

「ありがとう。じゃあね」

「うん、またね」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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