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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第88話:前哨戦は終わった

「姐御。あんまり西へ行き過ぎると、ボスのデカダンスから遠ざかっちまいやすぜ」

「わかってるんだけどさ」


 魔物を一体でも残すのは、また増えちゃいそうで気持ちが悪いしな。

 かといってメインディッシュに背を向けて歩くという今の状況もまた、あたしの精神に若干の負担をかける。

 少々負担がかかったって平気だろうって?

 そんなことあるか。

 あたしの心は果物の実のように繊細だわ。

 そろそろカキの実のシーズンだな。

 熟したあまーいカキは大好き。

 実に楽しみだ。


「モンスターがフューね」

「だよね」


 随分退治されたっぽいな。

 ほとんど魔物に出会わなくなってきた。

 これ以上魔物がいないなら、ボチボチボスの元に向かいたい。

 西の状況がわかるといいんだけどな。

 向こうから台車を押しながら来る人がいる。


「やあ、チャーミングなユーラシアさん達」


 ポロックさんとギルド食堂の大将だ。


「こんにちはー。台車で運んでるのは?」

「今晩の宴会用の肉の一部さ」

「あっ、そのでっかいネズミみたいなの食べられるんだ? しまった、全部放ってきちゃったよ」

「ま、美味い肉じゃねえよ。でも今日は冒険者皆こっちへ出張って来てるし、肉も仕入れられねえ。とにかく量が必要だからしょうがないぜ。どうせ酒が入れば味なんかわからねえからな」


 ガハハと大将が豪快に笑う。

 お肉は冒険者が納めてたのか。

 多分クエスト依頼所からだろうな。

 食堂のメニューで、洞窟コウモリがニワトリの代わりになってる理由がようやく判明した。


「祝勝会は何時からかなあ?」


 祝勝会に遅刻したらえらいことだ。

 美少女精霊使いの名が廃る。

 時間はバッチリ把握しとかないと。


「五時からだ、が……」


 大将がポロックさんを見る。


「正直、祝勝会になるか残念会になるかわからない。後者の可能性の方が高いと見ているがね」


 正直者のポロックさんが正直に打ち明けてくれる。

 デス爺も弱い魔物を根絶やしにしてくれれば、大型は残しても仕方ないって言ってたな。

 一方でパラキアスさんはあたし達に期待してくれてたから、精一杯チャレンジしてみるつもりではいるけど。


「やっぱりあのデカブツかなり強いんだ?」

「やつの攻撃に耐えられるだけの体力とダメージを与えることのできるスキルを備えていれば、苦戦しないはずなんだ。ただ一部のハイクラス冒険者だけでね。そういう連中は今日来ていない」


 ポロックさんは首を竦める。


「何で今日は上級冒険者は参加してないのかな?」

「やつらでしかこなせないクエストを請けてるからだぜ。ただでさえ現役バリバリの上級は数が足りてねえ」

「ふーん、あたし頑張るよ。祝勝会の方が気分いいし」

「ムリはしないでおくれよ。今回の作戦行動指針では一応、あの大型魔物以外を全部掃討できれば御の字という見解なんだ。その場合、大型は上級冒険者に別途依頼が出されることになるだけだから」


 わかるけども、今張り切って仕事してるあたし達にとっては悔しい話だな。

 ポロックさんはあたし達を気遣って、ムリするなって言ってくれてるんだろうけど。

 実力が足んないってのは、制限が多くてつまらんもんだ。

 冒険者になった時はレベル二桁が目標だったけど、中級冒険者程度じゃ全然あたしの欲する自由な生活には足りないわ。


「ともかくここから西、カラーズの集落まではもう魔物はいねえ。東の方はどうだい?」

「東も海岸沿いはやっつけたよ。少し内に入ったところはわからないから、見てくるね」

「俺達は大型のところに行ってるよ」


 ポロックさん、大将と別れ、東北へ歩を進める。


          ◇


 雑魚は往ねっ!

 この辺りにはまだ少し魔物がいるか、それとも今のが最後かな?

 見覚えのある鎧姿の兵士達が見える。

 レイノスの警備兵だな。


「やあ、精霊使いさん。今の技、すごい威力だね」

「あっ、この前の!」


 副市長の許可証を持ってきてくれた、西門の若い警備兵さんでした。

 同僚にあたしのことを紹介してくれてる。


「六日前に精霊様騒動の事件あっただろ? あれの犯人」

「犯人ゆーな。人聞きの悪い」


 ひとしきりの笑いがあった後、警備兵さんが続ける。


「まだ話題になってるよ、あれは何だったんだってね。精霊の巫女の傍若無人な振る舞いで、身分制度に疑問を持つ人が増えてきてる」

「まずったかなあ? 精霊を差別して欲しくなかっただけなんだけど」


 実際にはそれだけの意図ではなかったが。

 ドーラに身分制度なんかいらんという思いがあって。

 上級市民をへこませてやれという思いもあって。

 あとエンターテインメントを欲する切なる欲求が少々。


「いや、身分制度っていうか、中町の住人が威張り散らしてるのが面白くないんだよな」

「ああ、精霊様の評判は総じて悪くないから心配しなくていいよ」


 同僚の兵士さんも口を挟む。

 まあ精霊様が悪く思われてるんじゃなくてよかった。

 しばらくレイノスに行く予定はないけれども。


「隊長さん、どーだった? 責任取らされたりしてないかな?」

「いや処分とかは特に……あ、でも副市長に呼び出されたな」

「うあーやっぱそうか! 三日前にパラキアスさんが、精霊使いに許可は出したけど精霊様にお墨付き与えた記憶はないって、オルムスが憮然としてた、と言ってたんだよ」


 兵士さん達が驚く。


「え? 君『黒き先導者』と知り合いなのか?」

「違う違う、たまたま会っただけ。多分今日の打ち合わせだと思うんだけど、あたしの故郷の灰の民の村にパラキアスさんが来てたの」

「ああ、なるほどな」


 危ない危ない、どーもあたしは口が軽い。

 サイナスさんの予想では、パラキアスさんとデス爺はドーラ独立に関わる、もっと大きなこと考えてるだろうってことだった。

 そんなことをここで感付かれるわけにはいかない。

 自重せねば。


「パラキアスさん、この掃討計画に噛んでたんだな」

「あの人はドーラのデカい話には必ず関係してるだろ」

「まあそうか」


 よしよし、勝手に納得してくれてるぞ。


「こっちにはもう、魔物はいないのかな?」

「君達が倒したやつが最後だよ」

「じゃあ、最後にあの大型魔物だねえ。皆の者、いざ行かん!」


 兵士さん達と連れ立って、もう既にかなりの人数が集まっている今日のメインイベント会場に臨む。

 倒せりゃおそらくレベルがいくつか上がる。

 あたしの望むところだが?

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