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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第874話:あたしはもっとお上品

「ごちそうさまっ! おいしかった!」


 行政府で取り寄せてくれたのは、ダヤン食堂式の骨入り魚フライだ。

 カリッとした食感に意外性と香ばしさがあり、実に美味い。

 イシュトバーンさんに言う。


「これ出してあげたいねえ」

「ああ、そうだな」

「ん? 何か計画があるのかい?」


 何気なくプリンスルキウスが聞いてくる。


「今度海の女王を招待して、地上のおいしいものを食べさせてあげようと思ってるんだ」

「地上のおいしいものというコンセプトで、魚フライはおかしくないか?」

「海の王国にも魚の揚げ物はあるんだけど、向こうには小麦粉も鶏卵も植物油もないから全然別物なんだよ。まよねえずで食べるレイノス式魚フライの美味さを教えてあげたいの」


 塔の村方式の柑橘果汁がけも捨てがたいけどな。

 まずはわかりやすいインパクトのある方を。


「予も海の女王に拝謁したいのだが」

「ぜひ来てよ。女王呼ぶ時連絡するね」

「いつ頃になるんだい?」

「えーと、決めてはいないけど、そんなに先にはならないよ。一〇日以内だと思う」

「精霊使いはせっかちだからな」


 アハハ。

 でもプリンスにはいずれ声をかけるつもりではあった。

 海底産のものも輸出したいしな。

 プリンスを海底へ連れて行く前に、女王と顔合わせしといてもいいだろう。


「そーだ、オルムスさんパラキアスさん。もう海の王国から塩を買えるよ。魚の取り引きと同じところで注文してもらえばいいから。これ新聞記者にも言ってあるんで、明日にも記事が出ると思う」

「助かる。物価が上がり気味なんだ」


 人口増えるとどうしてもなー。

 必需品の物価は上げないようにしないと、不満が行政府に向かってしまう。

 今の行政府に物価を調整する力なんかありゃしないんだが、大衆とゆーもんは不満をどこかにぶつけたいものだから。


 イシュトバーンさんが聞く。


「対帝国貿易はいつから正常化なんだ?」

「今月の一二日からですね。もうドーラからの船は出ています」


 明後日からか。

 帝国まで船で四、五日はかかるから、もう出発してるんだろうな。


「楽しみだねえ。どんどん輸出したいよ」

「ユーラシア、あの識字率上げるゲームの納品はいつになる?」

「あっ、わかんない。行政府から作れるだけ作って持ってこいって注文が入ったのは知ってるけど、生産にあたし直接関わってはいないんだよ。レイノスで売る追加分八〇〇セットが五日後に届くはず。でも輸出分までは手が回んないと思う」

「そうだったか」


 残念そうなパラキアスさんとオルムスさん。

 ごめんよ、来月からは少しずつ輸出分増やせると思うから。


「イシュトバーンさんの画集も、一〇日後くらいから発売になるよ。これも爆発的に売れちゃうから最初輸出に回せないけど、どんどん増刷するからね」

「ハハハ、爆発的に売れるって決まってるんだな?」


 笑うプリンス。


「売れちゃうなー。モデルが素晴らしいからなーあたし含めて」

「絵師の腕も褒めろよ」

「いらんこと言わなきゃ株が上がるのに」

「その言葉、そっくりそのまま刺さるだろ?」

「あたしの防御力鉄壁だからなー」


 アハハ。

 ……さて、雰囲気が柔らかくなったこの辺か?


「ところでアドルフどうしたの? いつも威張りくさってるのに、今日はまた随分と大人しいじゃない」

「いつも威張りくさってなどいない! しかし、俺の存在意義というか……。クリーク殿とマックス殿がいれば、俺など必要ないのではないかと……」

「オルムスさん、あんなこと言ってるよ? 甘やかし過ぎじゃないの?」

「ハハハ、すまなかったね。明日からは給料分働いてもらおう」

「給料分以上にこき使うといいよ」


 笑いながら、オルムスさんとパラキアスさんが目線で謝意を送ってくる。

 いいってことよ。

 アドルフはあたしの推薦だからね。


 今日アドルフの存在感がまるでなかったのに気付いていた。

 アドルフの本来の役割は行政府とプリンスの間を繋ぐ係だ。

 しかし急にアドルフをメッセンジャーとして使い始め、オルムスさんパラキアスさんがプリンスに会う頻度を減らすとどうなるか?

 ドーラ政府が現帝国政権寄りになったかと、プリンスに疑念を生じさせるだろう。

 プリンスに誤解されることは行政府の本意ではないし、貿易や外交にも悪影響が出かねない。


 だからオルムスさんパラキアスさんは、時間を割いてプリンスと接触を持つ。

 しかしそれではオルムスさんパラキアスさんの仕事は減らず、アドルフを雇った意味がないのだ。

 またアドルフ自身の成長も期待できない。

 冗談めかしてアドルフを使うことを宣言しておけば、積極的に働かせる意図だったかとプリンスも納得するだろう。


 ……どうでもいいけど、アドルフが名前について反論してこないな?

 マジで改名したんだろーか?


「ところで精霊使いの請けているクエストとは、どんなものなのだ?」


 クリークさんからだ。

 息子が冒険者になると、あたしのお仕事にも興味が出るのかな?


「今度『カル帝国皇宮』っていうクエストもらうことが決まったんだ。帝国の皇宮に転送で飛べるようになるんだけど、何か気をつけることあるかな?」

「「「「「「「ほう!」」」」」」」


 あれ、全員興味津々ですね?


「あんたの得意分野だろ?」

「皆が得意扱いするけど、ファーストコンタクトが難しいかなと感じてるんだ。重要な会議やってるところに放り込まれでもしたら、言い訳のしようがないじゃん」

「いや、皇宮は政治の場ではないから、いらぬ心配だと思うが」


 つまり皇族のプライベートなエリアってことか。

 んー? 警備がメッチャ厳重なんじゃないかな?


「皇宮の警備を統括する近衛兵長ヴォルフという男がいる。ヴォルフに宛てて一筆予がしたためよう。少し待っててくれ」

「あっ、プリンス頼りになる!」


 ちょっと仕事が楽になるなあ。

 パラキアスさんが言う。


「実にそそるクエストじゃないか」

「うーん、向こうに行けるようになるのは嬉しいけど、皇族の困りごとなんか想像できないな?」

「いつもの調子で暴れてくればいいんだぜ」

「国際問題になっちゃうだろうが」

「いつもの調子が計り知れるぜ」

「あっ、しまった! あたしはもっとお上品だった!」


 大笑い。

 プリンスが戻ってきて手紙をくれる。


「ありがとう! 今日は帰るね」

「また来てくれ」


 行政府を後にする。

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