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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第873話:水魔法の注文

 行政府にとうちゃーく!

 オルムスさんは少し時間がかかるらしいので、大使室に通されることになった。

 何故かプリンスルキウスが受付にいたので、一緒に行く。


「いや、精霊使い君が来るんじゃないかってパラキアス氏が言うものだから」

「カンがいいな。今日プリンスには用なかったんだけど」

「ハハッ、まあいいじゃないか。ゆっくりしていってくれ」


 あれ? プリンスも暇なのかな?

 トラブルが起きてなくて大変結構と思うべきか、もっと移民関係貿易関係で忙しくなって欲しいと思うべきか。

 小国ドーラの切なさを感じるなあ。


「新人冒険者達はどうなってるんだ?」


 クリークさんマックスさんの子達か。


「直近の状況はわかんない。あたしも四日前に会ったのが最後なんだ。プリンス聞いてない?」

「さ、どうだろう? 仕事中に自分から私事を話す者達ではないから」


 公私の区別ってやつか。

 でも気になっちゃうなあ。


「軍人達の表情で当てようぜ」

「面白いね」


 大使室まで来た。

 コンコン。


「こんにちはー」

「やあいらっしゃい。殿下も御一緒でしたか」

「「つまらん」」

「な、何が?」


 面食らうプリンス。


「いや、プリンスじゃなくて。クリークさんマックスさんがニコニコしてるから」

「どういうことだ?」

「ジーク君とレノアのクエストが順調なんでしょ?」

「おかげさまで一つ目のクエストを完了し、二つ目にもかなりの手ごたえを感じているようだが」

「「実につまらん」」

「「どうしてっ!」」


 クリークさんマックスさんの声が揃う。

 ちょっと面白い。


「てこずっているところに美少女精霊使い参上っていうの、やりたいじゃん」

「少々苦労した方が話としては面白いんだぜ」


 まあ順調なら順調でいいんだけど。

 マックスさんが聞いてくる。


「ギルドというものがあると聞いたが」

「うん、正確にはドリフターズギルドね。大体三つかな、石板クエストをクリアすると、冒険者が集まるギルド行きの転送魔法陣が出るの」

「ギルドまで辿り着くと一人前扱いだぜ」

「ふむ、あと二つか……」


 クリークさんが呟く。

 やっぱ息子さんのことだけに心配なのかな。

 対照的にマックスさんがフラットな顔してるのが笑える。

 どっちかとゆーとレノアの方が問題児ですよ?


「一つ目二つ目がバトルのクエストだと、三つ目は違う系統のクエストになるっぽいよ。採取みたいな。脱落しちゃうのって、戦闘素人で魔物を倒せないケースがほとんどなんだよね。だから二つ目のクエストを終えると、時間はかかるかもしれないけど、大体ギルドまでは来られるの」

「そうか」


 クリークさんマックスさんが頷く。

 三つ目のクエストはアルアさんの工房になる可能性が高いかな。

 ジーク君がパワーカード使いだから。

 アルアさん家の外の魔物は比較的強いけど、あの二人ならレベル五もあれば単体の魔物だったら十分勝てるだろ。

 広いから避けてりゃ戦闘にならないし、回復魔法陣もあるしな。


「息子さん達の話はそこまでにして、精霊使い君に相談があるんだ」

「何だろ?」


 プリンスから直々に相談?

 心当たりないな。


「以前話していた、お茶を淹れるのに必要な水魔法というのがあったろう?」

「うん。もう完成してるよ。ギルドでは販売してるんだ」


 ペペさんの開発した水魔法『アクアクリエイト』について皆に説明する。

 術者の魔法力に関係なくコップ四、五杯分の水を生み出すという魔法で、使用コストはマジックポイントほんの少し。

 ドーラでの価格は一〇〇〇ゴールド。

 さすがはペペさんだけあって、優れものの魔法だと思う。


「上等だ。件の水魔法のスキルスクロールを万単位で欲しい。輸出できないか?」

「数はわかんないけど、輸出はできると思うよ。でも何で?」


 元々超すごいお茶『リリーのお気に入り』を淹れるために開発してもらった魔法だから、当然輸出するつもりでいる。

 新茶の出荷に合わせて出そうとしてたのが早まっただけだ。

 しかし万単位ってのは結構な数だぞ?

 ぼろ儲けの予感がする。


「辺境開拓や軍務、航海に必須、旱魃にも有効だろうと、ちょっと口に出したら、詳しく聞かせろって話が引きも切らないんだ」

「ふーん、プリンスは商売上手だなあ。ドーラ人にならない?」


 アハハと笑い合ってるところにオルムスさんとパラキアスさんが登場する。

 いらっしゃーい。


「失礼します。遅くなってすまなかったね」

「オルムスさん、プリンスが水魔法『アクアクリエイト』のスキルスクロールを輸出用に欲しいんだって。行政府からギルドに注文出してよ」

「了解だ。では大使、後ほど話を伺って、注文を出しときましょう」


 うん、任しときゃいいだろ。

 ギルドはレイノスから近いしな。

 あたしばっかり取り引きに関わってるのはめんどくさ……よろしくない気がするからね。


「輸出用のあったかパワーカード『ウォームプレート』二〇〇枚持ってきたから、納品しまーす」

「ああ、三〇万ゴールドだね。用意してあるよ」


 おお、すぐ出てくるのか。

 ちょっとビックリだぞ?

 ドーラってあたしが考えてるよりお金持ち?

 そんなわきゃねーか。


「ん? ユーラシア君どうしたんだい?」

「いや、三〇万ゴールドって結構な大金じゃん? すぐに出てくると思わなかったから」

「あんたの機嫌を損ねるとドーラが回んなくなるからだぜ」

「美少女だからじゃなかったかー」


 笑ってるところにパラキアスさんから声がかかる。


「美少女精霊使いにプレゼントだよ」

「ありがとう! もらう!」

「内容は確認しなくていいのかい?」

「もらってから考える!」

「実にユーラシアらしい」


 ハハッ、パラキアスさん褒めても何にも出ないぞー。

 ところで何だこれ?

 えらくデカいものだな?

 ナップザックの口より大きいから入らないんだけど。


「地引網用の魚網だ」

「あっ、ありがとう! 嬉しい!」


 これがあると開拓地の浜から漁ができる。

 移民の食料の大きな助けになるなー。

 移民達もたまには魚を食べたいだろうし。


「今日の午後に移民のところ置いてくるね」

「よろしく頼むよ」


 オルムスさんが言う。


「さあ、食事の時間だ。イシュトバーンさんもユーラシア君も食べていくんだろう?」

「もちろん!」

「おい、あんたこれ狙って昼時に来たんだろう?」

「働いた分は回収していかないといけないからね」


 笑うんじゃねー。

 正当な報酬だよ。

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