第869話:冒険者バカ
「しかし、パワーカードについてはどうせ嬢が煽ったのじゃろ?」
「軽いからアイテムをたくさん拾ってこられるよ、竜特攻付きのカードも普通に手に入るよとは言ったけど」
「竜特攻? ほう、パワーカード悪くないな」
あれ、デミアンは変なとこに食いつくじゃないか。
ドラゴンを倒したいレノアならわかるけど。
「武器・防具屋さんで取り寄せてもらえる『ドラゴンキラー』ってカードがあるんだ。これが【対竜】、攻撃が遠隔化、攻撃力+一五%なの。価格は一五〇〇ゴールド」
「攻撃力補正は小さいが悪くない。他のカードを装備することによって、攻撃力を上げることは可能なのだろう?」
「うん、もちろん可能だよ。とゆーか装備可能な七枚枠を目一杯使ってどう工夫しよう、ってのがパワーカードのいいところ」
「他にはどんな種類のカードがあるんだ?」
「ワシも興味があるな。嬢よ、教えてくれんか」
熱心だなあ。
あたしは他人の武器がどうかなんて、ほとんど興味ないのに。
マウ爺やデミアンだって、まさか今からパワーカードに乗り換えるってことないんでしょ?
やっぱマウ爺の年齢になるまで冒険者してたりとか、若くして天才って呼ばれるよーなデミアンは冒険者バカなのかなあ?
『ナックル』のパワーカードを取り出して説明する。
「これはごく普通の【殴打】で攻撃力+二〇%ってパワーカードね。攻撃用のカードは、何らかの攻撃属性と攻撃力+二〇%ってのが基本みたい」
「普通だな、悪くない」
「通常の武器ならば、初級者~中級者向けといったところじゃな」
うん、ごくベーシック。
単品じゃちょっといい武器に敵わない。
自動修復とはまた違う理屈で壊れないのはいいところだけれども。
次に『アンリミテッド』を見せる。
「で、こっちは特注品。【衝波】で攻撃力+二〇%」
「「衝波?」」
驚く二人。
衝波属性、つまり防御力無視攻撃のできる武器はかなり貴重らしいから。
「嬢が人形系レアをホイホイ狩ることのできる理由がこれか」
「特注とはいえ、衝波属性の武器を作れるとは。エクセレントだ。悪くない」
エクセレントなのか悪くないのかどっちだよ。
「まーでも『逆鱗』とか『ベヘモス香』とかのレア素材が必要だから、特注も楽じゃないけど」
「ハハッ、苦労するのも悪くない」
「スキルが実装されてるカードもいくつかあるんだ。『風月』は『颶風斬』と『疾風突』が使えるの」
「ふむ、汎用でない強力なスキルを使えるのは魅力じゃな」
「うちのパーティーは使ってないけど、『ホワイトベーシック』ってカードは『ヒール』と『キュア』が実装されてるよ。これは一五〇〇ゴールドで普通に売ってるから初心者向け」
「回復魔法と治癒魔法は悪くない」
「変わってるのは『刷り込みの白』。『コピー』っていう直前の味方の行動を繰り返すっていうバトルスキルがついてるんだ。これと行動回数の増える『あやかし鏡』、防御力と魔法力を下げる代わりに会心率を八五%に引き上げる『前向きギャンブラー』を組み合わせて、ようやくウィッカーマンを倒せるようになったんだよ」
「ふーむ」
マウ爺が感心したようなため息を吐く。
「嬢が力技だけで物事を片付けているのではない、というのがよくわかるの」
「テクニカルな装備品だ。悪くない」
「デミアンよ、知っていたか? 最近は飛ぶパワーカードもあるんじゃ」
「飛ぶパワーカード?」
「こーゆーの」
『遊歩』を起動し浮き上がる。
あ、ヴィルもふよふよ浮いてきた。
可愛いやつめ。
「飛行魔法か。悪くないだろう」
「ペペさん開発の一人用飛行魔法『ソロフライ』を組み込んであるんだ。マジックポイント自動回復付きだから、実質ノーコストで飛べるんだよ」
「エクセレントじゃないか。いや、飛行魔法だからレベル依存なのか。誰でも使えるわけではない?」
「うん。レベル二〇はないと使えない。でもデミアンならすげえスピードで飛べるから、移動に便利だよ。武器・防具屋さんで取り寄せてもらえる。二〇〇〇ゴールドポッキリだよいらっしゃいいらっしゃい」
「セールストーク、悪くない」
アハハと笑い合う。
「パワーカードは、魔法の装備とかマジックアイテムとは干渉することがあるみたいなんだ。もし買うつもりなら注意してね」
「おう、マジックアイテムとの干渉のことについて知りたい。レノアがパワーカードに移行したいならば、いっぺんに装備を変えねばダメか?」
ああ、なるほど。
マウ爺はレノアをパワーカードに移行させることを考えてくれているようだ。
今日聞いたばかりのコルム兄の説明を繰り返す。
「パワーカードのパラメーター増強効果って、素の状態に対して何%ってことらしいの。だから普通の剣を装備して二〇%増強されてたら、さっきの『ナックル』を装備しても+二〇%は無視されちゃうんだ」
「では武器をパワーカードで、防具を通常装備でというのは構わないわけじゃな?」
「構わないよ。通常装備の方に魔法効果がない場合には、だけれども」
頷くマウ爺。
これならうまいことレノアの独走を防いでくれそう。
あ、ヴィルが来た。
よしよし、いい子だね。
「クエストで結構いろんな魔法の装備品手に入れたんだ。マウさんデミアンいらない?」
「ハハッ、老骨には必要ないものじゃ。若いやつに譲ってやってくれい」
「吾輩は興味ある。悪くない」
こんなんありますけど。
ナップザックから取り出して説明する。
「ティアラを譲ってくれ。いくらかな?」
「えっ? ちょっと待って、ティアラ?」
女の子用でしかも後衛向けだぞ?
小さいやつで目立ちはしないけど。
「吾輩には妹がいるのだ。おそらく冒険者になる。プレゼントしたい。悪くない」
「おおう。優秀な冒険者にあげようってコンセプトだったけど、デミアンの意外な一面が見られたからいいや。タダでいいからもらって」
「悪くないのか?」
「悪くないぬよ?」
何か面白い。
デミアンも喜んでるし。
デミアンが普通に冒険者になることを認めてるくらいなら、才能のある子なんだろう。
「もうすぐ妹も成人なのだ。素晴らしいものを贈ることができる。悪くない。感謝する」
「いいっていいって。ごちそーさま。あたし達は帰るね」
「おお、またな」
「悪くない」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動し帰宅する。




