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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第866話:破魔の銅鑼

 フイィィーンシュパパパッ。

 コブタ狩りをしてから海の王国にやってきた。

 もう家の方は土砂降りだったよ。

 雨が降ってもやること行くところがあるって素晴らしいな。

 『アトラスの冒険者』になってよかったことの一つだ。


「銅鑼かー」


 あたしは赤眼族の集落へ行くたび小屋でガンガンしてるが、うちの子達はマジで鳴らしてないから、久しぶりだな。

 今日は譲ろう。


「ガンガンしたい人!」

「「「はい!」」」

「ジャンケンで決めなさい」


 今日はダンテの勝ちか。


「よーし、いっちゃってちょうだい!」

「オーケー、ボス!」

「グオングオングオングオングオングオーン!」


 いい音だなあ。

 心が洗われるようだよ。

 あたしの心は洗わなくても汚れ一つないけれども。

 いつものように女王が転げ出てくる。


「さては肉だなっ!」

「さては肉だぞ! 一緒に食べよう!」

「やったわいな!」


 いつものように小躍りする女王。

 いつものようにあとから衛兵が出てくるのは、いつもおかしいと思うわけだが。


「いつもの美味い肉じゃの。調理場へ運んでたもれ」

「「「はっ!」」」


 衛兵達が台車でコブタマンを運んでいく。


「地上は雨のようじゃの」

「結構ひどい雨になってさ」

「うむうむ、時々海底にも遊びに来てくれると嬉しいぞよ」


 もちろん来るよ。

 あたしは海の王国ともいい付き合いをしたいと思っているからね。


「この前はモデルありがとうね。いよいよ画集も刷り始めたんだ。でき上がったら持ってくるよ」

「おお、楽しみじゃのう! 絵師殿にもよろしゅう言っておいてたもれ」

「うん、喜ぶと思う」


 イシュトバーンさんもまた海底に来たがるかも。

 もし今度来たら、商店街の方を案内してやってもいいな。

 商人の視点からいいアイデアをくれそう。


「ヴィル呼んでいいかな? あの子は皆がおいしく御飯食べてるところにいるのが好きだから」

「おお、あのめんこい悪魔じゃな? ぜひ呼んでたもれ」

「ヴィルカモン!」


 赤プレートに呼びかけ、しばらくすると現われる幼女悪魔。


「御主人の召喚に応じヴィル参上ぬ!」

「おう、よう来たよう来た!」

「ふおおおおおおおおお?」


 女王にぎゅーされるヴィル。

 女王全然悪魔に抵抗ないんじゃん。

 もっと早く連れてくればよかったよ。


「き、気持ち良かったぬ」

「よしよし、いい子だね。ところでガンガンする銅鑼さ、あの音あたし達は好きなんだけど、悪魔は嫌うみたいなんだよね」


 バアルすんげえ嫌がるもんな。


「ああ、『破魔の銅鑼』か」

「そんな対悪魔ダイレクトアタックな名前だったとは知らなかったよ」

「対バアル戦の反省から、魔族に対抗する手段の研究が開始されたのじゃ。あの銅鑼は大きな成果の一つじゃな」


 うむ、当然仇敵バアルを相手にする時用のカウンターを生み出そうとするだろう。

 もっともバアルは、戦争が起きて悪感情をまとめて摂取できる状況を欲しただけなんじゃないかな。

 ほぼ勝負がついて小競り合いしかないだろう海底に、もう興味はなかったろうけど。


「偶然だったのじゃが、魔族の嫌う音が発見されてな。それから警報として用いられるようになった。今では量産されて、各家庭の入り口に吊るされておる」

「量産品だったんだ? じゃ、商店街で買えるのかな?」

「鋳物屋で販売しているはずじゃぞ」

「そーだったかー」


 鋳物屋は覗いたことなかったな。

 実際にガンガンすることはないにしても、悪魔除けに確実に効果のあるものなら売れるかも。


「お、ようやく肉が来たか」

「いっただきまーす!」


          ◇


「ごちそーさま! お腹一杯だー!」


 おいしさのあまりにのたうち回る女王の周りを、ヴィルが喜んでふよふよ飛んでいる。

 シュールだなあ。

 床をテカテカにしながら女王が言う。


「はあはあ、肉は最高じゃの!」

「ちなみにいつもはどんなもの食べてるの?」

「魚介類と海藻じゃの」

「当たり前だな。愚問だった」

「今は時々地上からコウモリ肉が入荷するがの」


 ……割と変化の少ない食事だな。


「地上の食事はどうなのじゃ? 肉以外では」

「海に比べて季節の変化が大きい、とゆーのは地上の特徴じゃないかな。その時々で取れる農産物が全然違うんだよね。もちろん贅沢な食事ばっかりできるわけじゃないけど、おいしいものはおいしい」

「うむ、食してみたいの」

「今は冬で作物少ないな……でもダイコンやハクサイはおいしいか。一度地上で御馳走しようか?」


 女王が興味深げな眼で見てくる。


「よいのかの?」

「もちろん。この前の絵師イシュトバーンさんいるじゃん? あそこん家の料理人はとても腕がいいんだよね。一度女王には地上式の魚フライ食べてもらいたいと思ってたんだ」

「魚フライか」

「お肉も用意するってばよ」


 おまけにサプライズもね。


「地上に招待されるのはいつ以来であろう? 楽しみじゃな」

「じゃ、用意ができ次第、連絡しに来るからね」


 イシュトバーンさんの許可?

 いらないよそんなもん。

 呼べ呼べって飛びついてくるに決まってる。


「女王に頼みがあったんだった。塩を売ってくれないかな?」

「塩? 普通の塩か? タダみたいなものじゃ。いくらでも融通するぞ」

「ありがとう。地上は帝国からの移民で人口が急増するから、一時的に塩の価格上がっちゃいそうなんだよね。新しく塩を作ろうとしてるけど、間に合いそうにないから」

「では、安く売ればよいのだな?」

「いや、地上の価格に合わせた値段で売って欲しいんだ」


 女王の目が細くなる。


「……なるほど、おんしは賢いな。供給量の安定、価格の安定を優先するのじゃな?」

「将来の生産も考えると、安定が重要なんだよね。地上の値段で売れれば海の王国も儲かるでしょ?」

「それもそうじゃの!」


 ハハッ、女王が商売人の顔だ。

 従来の小規模生産と海の王国からの輸入ものがあれば、塩で物価上昇を引き起こすことはないだろう。

 カラーズの新規生産が始まったあとも、海の王国から定量は塩を買い続けててもいいかもしれない。

 数ヶ所から塩が入れば、余計な思惑の入り込む余地が少ないわ。


「頼むね。塩足んなくなったら海の王国から買えって、レイノスと塔の村には言っておくから」

「任せておくがよい!」


 これで塩は安心。


「じゃあね。また来るよ」

「また来るぬ!」

「おお、楽しみにしておるぞ」


 転移の玉を起動し帰宅する。

 ヴィルもまたホームへ。

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