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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第865話:パワーカードの講義

「ただいまー」

「ありがとう、助かる!」


 塔の村に帰ってきたぞ。

 『スカロップ』をコルム兄に渡し、代金一五〇〇ゴールドを受け取る。


「当面はいいとして、『鎧貝』の調達についてはどうなったかな?」

「請けた! 一〇個届ける!」

「おお、わかりやすいね。じゃあもうしみったれた店には用がないんじゃないの?」

「しみったれてて悪かったね」


 悪くはない。 

 ボニーが言う。


「報酬をどうしようかって話になってるんだ」

「パワーカード一枚ずつもらえばいいじゃん」


 慌てるコルム兄。

 小物だなー。


「こら、ユーラシア! さすがに支出が多くなり過ぎる!」

「コルム兄の懐事情は斟酌しなくてもいいけど、カード屋が潰れると困るしな。あっ、あれがいい! 『ポンコツトーイ』!」

「「「「『ポンコツトーイ』?」」」」


 首をかしげる後輩ズと斟酌しろよという顔のコルム兄。

 ツインズ妹が聞いてくる。


「パワーカードの種類ですよね? どのような効果ですか?」

「戦闘時の獲得経験値が五割増しになるってやつだよ。つまりレベルアップが早くなる。アルアさんの工房で手に入らないカードだから欲しいでしょ?」

「「「「欲しい!」」」」


 ツインズ兄が冷静に言う。


「貴重なパワーカードなのでは?」

「この塔はパワーカードの始祖のドワーフと関係してるらしくてさ。たまにパワーカードも手に入れられるんだよ。『ポンコツトーイ』もその内の一つで、前にコルム兄は買ってくれという引き合いが多いって言ってたから、デッドストックを抱えてるはず」


 コルム兄が苦笑する。

 売れ残り品が報酬になるなら、さほど損でもないんじゃないの?

 後輩ズも絶対欲しいカードだろうし。


「どうして君は余計なことばかり覚えてるんだ。仕方ない。『ポンコツトーイ』を一枚ずつ、報酬として進呈しよう」


 後輩ズよ。

 喜ぶのはまだ早いぞ。

 ここから交渉のしどころだ。


「ねえコルム兄。『ポンコツトーイ』の先渡しはできないかな? あたしが保証人になるからさ」

「保証人? まあ構わんよ」


 うむ、ちょっとでも早くレベル上げしたいだろうからな。


「ユーラシアさん、すみません」

「いいんだよ。あんた達は期待に応えるのが仕事だぞ?」

「期待に応える!」


 ハハッ、すげえやる気出たっぽい。

 ボニーよ、ノブ君のストレートな返しに感心してるのはあんただけだぞ?

 笑える場面じゃないからな?


「一つ質問よろしいでしょうか?」


 ツインズ兄だ。

 何だろ?


「通常の装備品とパワーカードは、効果が干渉してしまうと聞いたのですが、僕が『ポンコツトーイ』を装備しても大丈夫でしょうか?」


 後輩ズの中でツインズ兄だけはパワーカードを使用していないのだ。

 『ポンコツトーイ』の効果と干渉してしまうことはあり得るかもな。

 もっともあたしはパワーカードしか使ったことないから、効果の干渉についてはほとんど何も知らない。


「あたしも詳しいことはわかんないな。コルム先生の出番だよ」

「ちょっと細かい話になるんだ。最初からいくんで、我慢して聞いておくれ」

「「我慢する!」」


 ノブ君とハモった。


「パワーカード装備の性能は、身体の素の状態に対して何%の増強効果があるかで表されるんだ。例えば『スラッシュ』だったら二〇%攻撃力が増える。ここまでは問題ないと思う」


 カードに書いてあることだし、特別難しいことはないな。


「じゃあ次に、普通の剣と『スラッシュ』を同時に装備した場合な。普通の剣が攻撃力一〇%増強だとする。なら『スラッシュ』は素の状態に対して二〇%増強だから……」

「合わせて三〇%の増強になる?」

「実は二〇%にしかならない」

「え? じゃあ普通の剣いらないじゃん」


 混乱するんだけど。


「通常装備と効果は重複しないんだ。防具の方がわかりやすいかな。『シンプルガード』は防御力を二五%まで増強するね。これプラス防御力二五%増の鎧を着ていたとしたら……」

「『シンプルガード』の増強効果は無視されて、やっぱり防御力は二五%しか増えない? 『シンプルガード』は持たなくても一緒、逆に言えば重い鎧を着るだけ損?」

「正解」


 ふーん、ちょっとわかった気がする。


「待ってください。となると『ポンコツトーイ』の効果は、ステータス値の上昇には関わらないから?」

「問題なく併用できるはずだよ」

「じゃあ飛行カードの『遊歩』も、普通の武器・防具なら装備してても平気なのかな」

「もちろんだ。ただし……」


 コルム兄が先生っぽい顔になる。


「魔道効果の付与されている装備品は別だ。よくあるのが耐性とか自動修復機能とかだな。その手のマジックアイテムとは露骨に干渉するから、併用は厳禁。ひどい場合には不利な効果が発現する場合もある」

「何それ怖い」

「パワーカード使いはパワーカードだけ装備してろ、ってことだね」


 単純に併用しないと考えるのが間違いないわ。

 しかしツインズ兄の場合は?


「ねえ、コルム兄。普通の装備品でも経験値割増し効果のあるやつってあるのかな?」

「あるが、『ポンコツトーイ』ほど簡単に安価で手に入ることはないだろ」

「だろーなー。ゼファーは今後パワーカードに切り替えることを考えてもいいかもねえ」

「はい」


 まあよく考えて下さい。


「では諸君の健闘を祈る。さらばだ!」

「「「「さよなら!」」」」


 うむ、元気でいいねえ。

 後輩ズが転移の玉を起動し去っていく。


「ところであったかパワーカードってどうなってるかな? 納期一日前だから確認しに来たんだ」

「一〇〇枚完成してるよ」

「おお、優秀。さすがあたしのお従兄様。弟子のタッカー君が優秀なの?」

「弟子が優秀なのは師匠の手柄」


 アハハと笑い合う。


「持って帰るかい?」

「うん」


 残りの代金を支払う。

 『ウォームプレート』の数が揃ったから、行政府行って資金を回収してこないとな。


「また来月の一〇日期限で、一五〇枚を上限に注文していいかな?」

「また『ウォームプレート』だな? 願ったりかなったりだ。儲かって喜ぶのは主に村長で、オレじゃないが」


 アハハ。

 素材が安く手に入りさえするならパワーカードは儲かるみたいだからなあ。

 あたしは頑張って需要の方を作ってやんよ。


「手付けに五万ゴールド払っていくね。よろしく」

「今日はありがとうな」

「同じ髪色のよしみだよ。じゃねー」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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