第862話:あたしは頑張ってる子の味方
チトー君が満足そうだ。
「ごちそうさまでした。凄草は甘くてとてもおいしかったです」
「はーい、ライブでステータスアップ劇場でした! 根っこ渡しとくね。これは甘くないから、スープにでも混ぜるといいよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「チトー君の感想を聞こうじゃないか。どうだった?」
「貴重な経験でした。ありがとうございました!」
うんうん、新鮮な凄草を食べられる機会なんてそうそうないだろうからね。
うちみたいに栽培してるなんてことがなければ。
「チトー君は今後どういう冒険者になりたいの? 目指すところとか」
「まずレベルですね。『アトラスの冒険者』は、さほど収入には苦労しないと聞いています。どこか親切な方のパーティーに入れてもらえると嬉しいです」
「ところでチトー君は固有能力持ちだけど、自分で知ってるのかな?」
「えっ?」
心当たりがないようだ。
レイノスの人だと、初めから魔法使えるとかじゃないとわかんないだろうな。
成人時に固有能力を調べるカトマスのやり方は気が利いてる。
「オレが固有能力持ち? 本当ですか?」
「本当だよ。自分の能力把握しとくことは大事。総合受付にあるフルステータスパネルで何の能力か調べてもらおう。鑑定士と違ってタダだからね」
チトー君が感心してら。
タダで固有能力を調べてくれるってのも知らなかったろうし、画期的だからかな。
ゾロゾロと皆でポロックさんのところへ。
「ポロックさーん、この子フルステータスパネルで見てやってくれる? 何かの固有能力持ちなんだ」
「そうかい。よかったねえ」
「は、はい」
ポロックさんがフルステータスパネルを起動し、チトー君が手をかざす。
「ほう、『長者』の能力だね」
「あっ、当たりの能力出ました! 『長者』でーす!」
やじ馬冒険者の一人が聞く。
「ポロックさん、どんな固有能力なんだい?」
「魔物を倒した時のドロップ確率が上がるというものだよ」
「あたしの経験から言わせてもらうと、レアドロップ率も上がるよ。『長者』の能力持ちウスマン君について来てもらった時、魔宝玉ポロポロ落としてったなー。儲かる儲かる」
「お、おい、伝説のぼったくり冒険者が認める能力かよ?」
「伝説の山師が当たり扱いの固有能力か。チトー、お試しでクエスト行かないか?」
「伝説大安売りの上にぼったくりだの山師だの。あたしの大好きなワードじゃないか」
「大好きなワードだぬ!」
皆して大笑い。
「チトー君の洋々たる前途を祈念して拍手!」
「「「「パチパチパチパチ!」」」」
お開きとなる。
チトー君もギルド慣れしたろうし、いいだろ。
今後の活躍を期待しよう。
チトー君から得た強草をボニーに渡す。
「ボニー。はい、強草だぞ。早く依頼受付所に納めておいで」
「あ、ありがとう、先輩」
ポロックさんが言う。
「ああ、強草を納める依頼で、違う草と間違えたってことかい?」
「よくあることだね。しょうがないしょうがない」
アイテムの鑑別って地味に大事だ。
儲けにダイレクトに関わる部分だもんなあ。
特別詳しくなくてもベテランなら間違うことはないだろうけど、初心者はやりがちなミスだと思う。
ボニーもいい経験したと思って割り切ればいいよ。
「あたしおっぱいさんに頼まれてやる時以外、ほとんど依頼所クエスト請けたことないんだよね。初めてギルド来た時にお試しで請けたくらいで」
「おや、そうなのかい? 意外だね」
「だから依頼所クエストの注意事項って、よくわかんないな」
「依頼書は掲示板から剥がした段階で、請ける意思ありと見做されるんだ。依頼の取り合いを防ぐための厳正なルールだよ。確証が持てないアイテムの場合は、確認してからの方がいいね」
「はい。先輩は……」
ボニーがこっちを向く。
「何? まあまあのイベントだったでしょ? 割と盛り上がって面白くなったから、あたしも満足だなー」
「いや、そうでなくて」
何だったろ?
「どうして私を助けてくれたんだ?」
「あたしは頑張ってる子の味方だぞ。あっ、ねえポロックさん、今のセリフは相当格好良くなかった?」
「ユーラシアさんはいつも格好いいですよ」
「格好いいぬ!」
「おー、さすがあたし!」
アハハと笑い合う。
「で、でも凄草って高価なんだろう? 強草だって……」
「高価っちゃ高価だけど、ボニーとチトー君に感謝されるし、イベンターとしての評価も上がっちゃうわ。トータルでマイナスになってないから、別にいいとゆーのに」
「ボニーさん、ここは甘えておきなよ。ユーラシアさんは気前と女っぷりの良さには定評があるんだ」
「おっ、ポロックさんはさすがにわかってる!」
「わ、わかった。ありがとう」
「だからそこは『先輩愛してる』だろ」
「先輩愛してる!」
「『愛してる』ってのは万能だよ。何やらかしても大体オーケー」
「いや、どうかな……」
ポロックさん、わかってますって。
「ただし乱用は禁物。効果が薄くなるからね」
あれ、ポロックさん苦笑してますね?
「今日はツインズとノブ君とは一緒じゃないんだ? 休み?」
「ああ、誰かのクエストを終えたら一日休みということにしているんだ」
なるほど、各自の石板クエストを持ち回りか。
クエスト完了時の経験値が全員に入るし、一番いいだろうな。
「休憩も大事だよ。あたしが言うのも何だけど」
「しかしユーラシアさんは、いつも働いているという話じゃないかい?」
「働いているとゆーか。あたしは動いてないと退屈でしょうがないんだよねえ。アルアさんには、踊り続けないと死ぬ靴でも履いてるんじゃないかって言われた」
今日も特に予定はなかった日なんだけどな?
何故かギルドで騒動起きてたし。
まーでも何かが起きる予感はしてた。
「さーて、あたしは帰ろうかな」
「おっと、換金しに来たんじゃなかったのかい?」
「換金しに来たんだぬよ?」
「本来の目的を完全に忘れてたよ。ポロックさん、ヴィルありがとう」
「いやいや」
「いやいやだぬ!」
「ボニーも頑張れよ」
「……はい、先輩」
ちょっとボニーがデレたかな?
ボニーは芸人冒険者のクセに、微妙に他人と壁を作るとゆーか、警戒心の強いところがある。
これからはもっと余裕を持ってくれるといいなあ。
買い取り屋さんで不要なアイテムを処分、転移の玉を起動し帰宅する。




