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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第86話:背中がかゆくなるんだけど

 本日のボスを確認したあと、魔物を倒しながら平原を行く。


「考えてみりゃあたしが冒険者になりたかったのは、とりあえずレベル二桁欲しかったからなんだよ」

「ホワイ?」

「今日も何匹か倒してるけど、ネズミのでっかいやついるじゃん? あれが家に出たことがあってさ。やっぱドーラで好き勝手暮らすには、魔物倒せなきゃダメだなーと思ったんだ」

「目標達成でやすね」

「長年の苦労が実を結んだね」

「まだ一ヶ月も経ってないですけれども」


 アハハと笑い合う。

 あんなデカい人形系見ちゃうと、まだまだだなーと思うけど。

 ん? 黒のロングドレスを着た女性が魔物に襲われてる。

 年齢はあたしと同じくらいだろうか。

 場に似つかわしくない格好だが?


「助けよう」


 雑魚は往ね一閃。

 黒ドレスの女がすがりついてくる。


「あああありがとう! あなたはアターシの命の恩人だわっ!」

「落ち着こうか。まず深呼吸しなよ」


 ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。

 深呼吸ってこんなんだったかな?

 まーいいけれども。


「いや、あんたは何なの? 魔物と戦う格好じゃないじゃん」

「突然灰の民の村へ行けって言われただけだもの」


 あっ、全然事情を知らない人も混じってるのか。

 この魔物掃討計画ヤバ過ぎね?


「あんたは黒の民だよね? 得意技は何?」

「呪術です」

「呪術かー」


 呪術は儀式魔法の一種で、効果は大きいのだが準備と時間のかかる技だ。

 装備品として呪術で加工されたアクセサリーなどは、その特殊効果により珍重される。

 ただし呪術師自身は戦闘に全く向いてないと思う。


「一応、魔法防御アップの支援魔法は使えますけど」

「何だ、イケるイケる! ここからちょっと西へ行った山際に、大きい魔物を結界で封じてるところがあるから、行って待機しててよ。そのデカブツが今日のボスで、ザコを掃討したら皆で倒そうってことになってるの。あんたの魔法はザコ向きじゃないけど、ボス戦では頼りになるから」

「わ、わかったわ」


 黒ドレス女は転げるように走っていく。

 いきなりの作戦だといろんな人がいるなあ。

 何も知らされないのは、却って危ないんじゃないかって気もする。

 かといって大悪魔なんかに計画を知られて出しゃばられた日にゃ何もできないが。


          ◇


 『雑魚は往ね』で無双しつつ進む。

 大分魔物も減ってきたか? 

 あ、ピンクマンがいる。

 遠くからでも目立つなー。

 もう一人いるな……ダンのようだ。


「美少女精霊使いと愉快な仲間達参上!」

「ユーラシア来てたのか。朝見なかったから休みかと思ったぜ」

「こんな面白そうなこと欠席するわけないでしょ。主役はあとから登場するもんなの」

「しょってやがるぜ。遅刻しただけのクセに」


 御名答、でもわざわざゆーな。

 ちゃんと働いとるわ。

 えーと、ペペさん崇拝者ピンクマンの本名何だったかな?

 出てきそうで出てこない。


「ペペさんが西の方にいたから助けてやってよ」


 『ペペさん』でビクっとするピンクマン。


「バカ言え、ペペさんに助けなんかいるはずがねえ。この辺のザコ魔物なんざ、魔法でイチコロだわ」

「だからだよ!」


 不可解な顔をするダン。


「どういうことだよ?」

「ペペ様は至高の魔法しかお使いにならないから、ということか?」

「そうそう、ペペさんに魔法使わせたらこの辺一帯荒野になっちゃう」


 さすがピンクマンはペペさんのことをよく知ってる。

 ダンもようやく状況を理解したらしい。


「え? じゃあペペさん魔法使ってないのか? どうやって魔物倒してるんだ?」

「おっきな杖持ってるでしょ? あれでペチペチ潰してる」


 ダンとピンクマンが顔を見合わせる。


「いや、ペペさん自体に危険はないんだよ。メチャメチャレベル高いから、ダメージすら負わないし。でもあの人案外抜けてるとこあるからさあ。間違って混乱食らって極大魔法使われたりしたら周りの危険が危ない」

「「……」」


 ようやくヤバさに気付いたらしい。


「混乱攻撃持ってる魔物はいないと思うけどさ。植物系の魔物は突然変異しやすいらしいじゃん?」

「い、急ごう」

「どうしてあんた、ペペさん放ってきたんだよ!」

「ヤバさがわかるから離れてるんじゃないか」

「こいつもヤベえ!」


 効率を考えれば、『雑魚は往ね』持ってるあたしが積極的に魔物退治しなきゃダメなんだって。

 ダンとピンクマンが慌てて駆け出していく。

 ピンクマンがペペさんにいいとこ見せられるといいな。


          ◇


 さらに行くと、燃えるような赤毛を三つ編みにした女の子に出会う。

 典型的な赤の民の火魔法使いだな。

 この子もさっきの黒ドレス同様、あたしと同じくらいの年齢だと思う。

 でもムチムチばいんばいんだ。

 羨ましい。


「そこの精霊使いさん、マジックポイント回復アイテム持ってないか?」


 ただ言ってみただけ、といった口調だ。

 ソロで魔法一本だと相当消費も激しかろう。

 丸っきり期待もしていなかったんだろうが、マジックウォーターとポーションを一つずつ渡してやる。

 ムチムチ火魔法使いは信じられないようなものを見る目で見つめてくる。


「……あなた、灰の民だろう? 私が赤の民であることはわかると思うけど、どうして施しを?」

「そーゆーみみっちい話じゃないんだよ」


 わからない、といった顔だ。


「今日の作戦行動について、何か聞いてる?」

「何も。とにかく魔物の掃討を行うから、赤の民からも参加者を出せって」

「人の可住域をクー川まで広げるんだよ。ドーラ全体の発展に繋がることなんだ」


 火魔法使いは目を見開く。


「あたし達はこの作戦において同一の目的を目指す仲間なわけ。カラーズ部族間の諍いを持ち込んでいい場じゃないと思わない?」


 ふーっとため息をつく火魔法使い。

 笑みを浮かべて言う。


「借りができちゃったな」

「借りだと思うなら手を貸しておくれよ。まだ大物が残ってる」

「大物?」


 ムチムチ火魔法使いは知らなかったか。

 ボスクラスの人形魔物デカダンスがいる山際を指差す。


「この辺の魔物はあらかたやっつけちゃったじゃん? あそこで待機しててよ。あのデカブツを倒さないと作戦成功とは言えない。皆の力を合わせて勝つんだ」

「ああ、わかった」


 火魔法使いがこちらに手を振ってから駆けてゆく。

 アトムが賞賛する。


「姐御、格好よかったですぜ」

「あたしはいつもカッコいいだろ。でもシリアスは背中がかゆくなるんだけど」

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