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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第858話:赤眼族と碧長石

 ――――――――――一六一日目。


「こんにちはー」

「おお、精霊使いの人じゃねえか」


 コブタ狩りをしてから、赤眼族の村にやって来た。

 今日はさして用事のない日だ。

 経験上、こういう日にはトラブルが舞い込んでくると知っている。

 嫌だなあ(ワクワク)。


「少しだけどお土産。お肉だよ」

「おお、すまねえな」


 あ、村長とミサイルが来た。


「おはよう!」

「よくぞいらした」


 うんうん、いい声だね。


「様子見に来たんだよ。こっちその後どうかな」

「クレソンはまだわからんが、ダイコンは芽が出たよ」

「芽が出たところから成長早いんだ。ぐわっと葉っぱが大きく広がってデカくなるんで、間引きのタイミングには注意してね」

「わかった」


 最初来た時の絶望したような表情からは一変している。

 食料さえどうにかなれば、当面の問題はなさそう。

 イコールお肉のストックは希望の光。


「ところでこーゆーものを手に入れたんだ」


 マウ爺にもらった碑文の写しを見せる。


「赤眼族の文字じゃないかっていう説があるんだけど、どーかな?」


 代わる代わる真剣に見ていたミサイルと村長が言う。


「読めない」

「読めないな」

「違ったかー」


 見込みが外れたな。

 赤眼族の文字ではなかったか。

 しかし村長が言う。


「我々の古い装飾文字であることは間違いない」

「そーなんだ?」

「ああ。見たことがあるし、ここに記されているマークは危険を意味するのだ。現在の我々も使用している」

「あっ! これ崖崩れの現場にあった碑文の写しなんだ」


 してみると、他の二ヶ所も危険を示す注意書きだったのか。

 そして古い時代の文字は現在の赤眼族には伝わっていないと。

 ん? 待てよ?

 古い時代の赤眼族の文字?


「何十年か前に移住先を探してた人達が生き埋めになっちゃったところでさ。危ないなあ。このマーク見つけたら、あたし達も注意することにするよ」


 考えを整理するまで一旦誤魔化しておくべえ。

 村長が何かを考えながら聞いてくる。


「これを見つけた現場は、地理的にはどの辺に当たるんだ?」

「魔境世界樹エリアの東のとこ。ここからだと強歩一〇日くらいになるかな。かなり魔物の強い場所だよ」

「ロクに魔物と戦う術を持っていたと思えない先祖達が、強い魔物のいる遠くにまで足を延ばしていたとは知らなかったが」

「この集落の周りってって魔物いないね。何で?」


 ミサイルが元気よく言う。


「魔物が嫌う石があるんだ!」

「へー、大したもんだね」

「というか、その石に魔除けの魔道術式を彫りつけると効果が高いとされているんだ。寄ってくる魔物などいない。これだ」


 村の正門に取りつけてある石板だ。

 術式が彫ってある部分が内側で見えなかったから、ただの飾りだと思ってたわ。

 魔物避けだったのか。


「これって確か碧長石?」


 赤眼族が好んで使う石と、バアルが言っていたものだ。


「知っていたか」

「さっきの碑文が彫られていたのも大きな碧長石だったんだ。碧長石は赤眼族がよく使う石だって言われてたから、じゃああの碑文を書いたのも赤眼族だったんじゃねっていう連想だったの」

「我々がよく使う石、というわけでもないんだがな。正門に大きな魔除け石があるから、他部族から見るとそういう印象になるのかも知れない」


 ふーむ、なるほどではある。

 しかし碑文と赤眼族を碧長石で結びつけたバアルは偉い。

 お手柄だ。


「碧長石で魔物除けの効果が高くなるなんて知らなかったよ。ためになるなあ。教えてくれてありがとう」

「いやいや、こちらこそ大して力になれなくてすまんな」

「今日は帰るね。また様子見に来るよ」

「ああ」

「さよなら!」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


「赤眼族の村でわかったことを発表しまーす」


 帰宅後にうちの子達と緊急会議を行う。


「大きく分けて二つ。一つ目は、この文字赤眼族の古い文字なんだけど読めないってこと。それからもうもう一つ、このマークは危険を意味するんだってよ」

「つまりあの碑の立ってた三ヶ所は危険地域だったってことか」

「極めて納得の崖崩れ現場だったねえ」

「ストレンジね。そんなアテンションするなら何かの調査だったはずね」

「ダンテの言う通りだ。あそこ水豊富だし、移住の調査だったんだろうけど……」


 他には何もなかったな?

 あんなデカい石碑設置する余裕があったんだから、魔物が強くて移住を諦めたということはなさそう。

 他所へ行ったのか?

 でも西以外に赤眼族住んでるなんて聞いたことないし。


「滅びたのかもしれやせんぜ」

「イシンバエワさんの世界の調査隊が残したものなのでは?」

「……あり得るね」


 赤眼族の古い装飾文字ならば、すなわち異世界の文字ではないのか? とはあたしも考えた。

 クララの説が本当なら、いよいよバエちゃんの世界の住人と赤眼族は同族ということになる。

 いや、もう異世界人と赤眼族が同族であることについては、実はさほど疑ってないのだけれども。


 もっとも以前考えていたように、赤眼族がバエちゃんとこの世界から追放された人々かどうかはまだわからない。

 単なる移住者かもしれないしな?

 『アトラスの冒険者』と赤眼族の関係についても、推論で成り立ってるところが多いからなあ。


「じゃあバエちゃんにこの碑文の写しを解読してもらおうか。読めたら赤眼族は向こうの世界の人で決定」

「ザッツ、ベリーデンジャーね」


 うむ、悪くするとバエちゃん並びに『アトラスの冒険者』運営本部を、警戒させてしまう危険はあるのだが。


「あたしんとこに赤眼族クエストを振ってくる方が悪い」

「ユー様の身勝手な言い分はわかりますが、碑文の方はあたし達のクエストと関係ないですよ?」

「よく気付いたね。クララは偉い! でも身勝手ゆーな」

「えへへー」

「おーいクララ、誤魔化されてんぞ」


 ダンテはやれやれふーな顔をしている。

 工夫は必要だけど……。


「まあ、バエちゃんにこれ読ませるところまではどうにでもなるから任せて」

「悪魔的説得術でやすね?」

「美少女精霊使い的説得術だねえ」


 アハハと皆で笑う。


「バエちゃんにこれ読んでもらってヒントが増えると、ウツツのいる苔むした洞窟の奥の石に書いてあるやつ、あれも何書いてあるかわかるかもしれないね」


 うちの子達が頷く。

 楽しみが増えるぜ。


「じゃ、報告はここまで。魔境行くぞー」

「「「了解!」」」

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