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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第853話:冒険者として油断し過ぎ

 フイィィーンシュパパパッ。


「アルアさーん、こんにちはー!」

「はいよ、アンタはいつも元気だね」

「師匠!」


 魔境から帰ってきてパワーカード工房に来たら、ラルフ君パーティーがいた。

 あたしも聞きたいことがあったからちょうどいい。


「ラルフ君が姫を抱っこして魔境を闊歩したのは、ギルドの伝説になってる?」

「なってません」

「ダンは何をやってるんだ、まったく。キリキリ働け」

「そんなことよりもですね……」

「若の伝説よりも大事なことか。心して聞くよ」


 札取りゲーム完売の話だった。

 うんうん。


「新聞記者ズに聞いたよ。やったねえ」

「父が追加分の注文を出したいとのことでしたが」

「もう一〇〇〇セット作ってるんだ。内二〇〇はカラーズ分だけど、八〇〇は一週間後の輸送隊で出荷できるよ。どう?」

「さすがは師匠。しかし行政府から輸出分の注文が入りまして」

「え?」


 随分と行政府の動きが早いじゃないか。

 本気で儲ける気になったか、それとも帝国の商人さんの評判が良かったのかな?

 帝国の商人さんの目に留まったなら類似品を作られちゃうかもしれない。

 まあいい、どの道いつまでも儲けられる品などないのだ。

 儲けられる内に売り込めばいい。


「作ったら作った分だけ売るから、どんどん持ってこいと」

「あれ、なかなか太っ腹だね」

「これは緑の民オイゲン族長から連絡は行くかと思いますが」

「一応あたしにもってことだね。了解。景気のいい話になってきたねえ」


 帝国内で作るより安くて質がいいのかしらん?

 札取りゲームよくできてるからな。

 ドーラの発展に寄与できてるかと思うと気分がいいなあ。


「ところでアンタ、『ウォームプレート』のパワーカード一〇〇枚完成してるよ」

「もらっていきまーす!」


 手付金を除いた一二万ゴールドを支払い、カードを受け取る。


「来月一〇日までに、一五〇枚を上限に『ウォームプレート』製作依頼していいかな?」

「一五〇枚かい? じゃんじゃん素材を持ってきておくれよ」

「はーい。早速換金お願いしまーす」


 交換ポイントは二〇三三となる。


「しかし、『逆鱗』や『巨人樫の幹』がこんなに出てくるのはすごいもんだねえ」

「レベルが上がって、イビルドラゴンやダイダラボッチを簡単に倒せるようになったんだ。やつらはレア素材を複数落としていくことがあるの」

「イビルドラゴンやダイダラボッチを簡単にって……」

「具体的には『雑魚は往ね』が効くようになった」

「別に驚かないですけれども」

「ラルフ君も反応薄いなー」


 どーも最近、あたしをよく知ってる人には、驚いてもらえることが少ない気がする。


「エンターテインメントに関する感性が鈍ってきてない?」

「師匠の芸を見てたら目が肥えてきたんですよ」

「おおう、ラルフ君やるね」


 アハハと笑い合う。

 芸だったかー。


「何か交換していくかい?」

「今日はいらないでーす。『ウォームプレート』注文分の手付金五万ゴールド置いていくね」

「そうかい?」


 一五〇枚完全納品は厳しいかもしれないが、まあできるだけ輸出できればオーケーだ。

 行政府も帝国の商人さんも喜ぶだろう。


「ところでラルフ君は、何のカードを交換しに来たの?」

「いえ、注文なんですよ」

「注文か。どんなやつ?」


 ラルフ君のカード編成って、今どんな感じなんだろ?


「今の自分のパワーカード編成が、『マジシャンシール』『癒し穂』『ハードボード』『光の幕』『火の杖』『ホワイトベーシック』『ボトムアッパー』なんですよ」

「ははあ、後衛らしくなってきたね」


 ラルフ君のパーティーは盾役ゴール君、魔法剣士のムオリス君、アーチャーのウスマン君と物理アタッカーは揃っている。

 パーティー全体のレベルが上がりさえすれば、ラルフ君に求められるのは魔法攻撃と回復、それから支援だろう。

 レア素材によって手に入るカード『癒し穂』を装備しているのはいいね。

 他には魔法使い御用達の『スペルサポーター』や行動回数の増える『あやかし鏡』が欲しいところだが。


「支援スキルを実装した、魔法力の上がるカードですね」

「いいね。どんな支援スキル?」

「物理アタッカーが三人いるので『勇者の旋律』を」


 『勇者の旋律』なんてレアなスキルらしいのに、よく調べてるな。

 味方全員の攻撃によるダメージを上げるバトルスキルだ。

 消費マジックポイントが小さく、しかも正の速度補正付き。


「いいじゃんいいじゃん。『勇者の旋律』は人形系レアを倒しやすくなるんだよ。知ってた?」

「「「「えっ?」」」」


 これはさすがに知らなかったか。


「単に攻撃力を上げるスキルじゃないんだ。物理ダメージを増やすの。あれかけてると『経穴砕き』で三以上のヒットポイントを削れるよ。比較的楽にデカダンス倒せると思う」

「そうだったんですか!」


 喜ぶラルフ君パーティー。

 しかし……。


「んーでも『勇者の旋律』って誰でも覚えられるスキルだったぞ? チュートリアルルームでスキルスクロール作ってもらえるかもしれないから、先に確認した方がいい。もしスキルを買えるなら、カードは違うの考えた方が気が利いてない?」

「なるほど! チュートリアルルーム行ってみます」


 納得していただけたようだ。


「では師匠が考えるに、自分に必要なパワーカードはどういうものでしょう」

「最近ラルフ君、ヒルデちゃんを構ってるから単独行動が多いでしょ? なのに攻撃属性付きのカードを一枚も常備してないのは、冒険者として油断し過ぎだなー」

「「「「あっ!」」」」


 世界一の魔道士ペペさんが物理攻撃用のデカい杖を持ち歩いてるくらいだ。

 魔物に物理的に対処する術はいつでもあったほうがいいし、特にカップルは変なやつに絡まれやすいんだぞ?

 ラルフ君一人ならともかく、ヒルデちゃん連れならいかに固有能力『威厳』があったとしても、抑止力の意味で武器を常備してた方がいい。


「で、では『ライトスタッフ』か……」

「『ライトスタッフ』は有力な選択肢だね。せっかく注文する気になってたなら、もう一工夫加えたパワーカードでもいい」


 よーくお考え下さい。


「じゃねー」

「ありがとうございました。師匠はギルドですか?」

「うん。売るもの売ってこないと。アルアさんさよならー」

「あいよ。またおいでよ」


 アルアさん家の外、転移石碑へ。

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