第852話:レベル上限突破と『雑魚は往ね』
「今日はこれからどうするんだ?」
セレシアさんの店で荷物を受け取った後、イシュトバーンさんと話しながら帰り道を行く。
「色々やんなきゃいけないことあるんだけど、おゼゼ作るのが最優先かな。魔境とギルドとアルアさん家行くと思う」
「あんたがいつもおゼゼおゼゼ言ってるのは不思議だな。一番稼いでる冒険者だろうに」
「おゼゼが羽が生えたように飛んでくってのは本当だねえ」
「自分で追い立てて飛ばしてるんだぜ?」
「そーかも。お金はすぐ逃げちゃう」
アハハと笑い合う。
「あと絵を版画屋さんに届けるでしょ? 『光る石』スタンドだけど、昨日戻って来た試作品がいい感じなんだ。同じタイプでいくつか作ってみることにした」
「おお、『光る石』スタンドも楽しみだな」
「やー。楽しみは多い、やることも多い!」
「ハハッ、あんたはパワフルだな。疲れねえのか?」
「全然。逆にあたしは暇なことには耐えられないわ」
これは本心だ。
予定が詰まってると嬉しい。
イシュトバーンさん家に着いた。
「じゃねー」
「ちょっと待った。昨日の絵が完成してる」
リタとマーシャの絵を持ち、転移の玉を起動して帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
カラーズでの用をすませ、魔境にやって来た。
ちなみに『光る石』スタンドは、黒妖石の小石を渡して作れるだけ作って、と指定してある。
大体三〇個前後になるんじゃないかな。
手付金代わりに透輝珠を一個置いてきた。
「今日は随分とファッショナブルな装いですね?」
「あっ、さっき絵を描いてもらってたんだよ。レイノス港で」
「例の画集のものですか?」
「うん。この服はカラーズ発の服屋さんのやつでさ。今レイノスで人気なんだよ。帝国に売り込むぞーってことで作ってもらったの」
オニオンさんが合点のいったような顔になる。
「つまり画集を帝国に輸出する。同時にドーラのファッションを認知させる……」
「で、ファッションも帝国に輸出するんだ。可能ならね」
「ははあ、ムダがないですね」
「でしょ? ガンガン売りたいな。画集が売れるとことまでは想像できるけど、ファッションはどーだろ?」
こーゆーのは都会の帝国人女性の意見を聞きたいけど、あたしが知ってる帝国人女性ってリリーとレノアだけだわ。
あの二人ファッションに興味ありそうじゃないし、全然参考にならない。
ニコニコするオニオンさん。
「で、本日は?」
「いつもの通り、おゼゼを稼ぎに」
「ユーラシアさんがおゼゼおゼゼと言っているのは、本当にミステリーですね? ダントツで稼いでいらっしゃるでしょうに」
「同じくらいの勢いで出てっちゃうんだよね。イシュトバーンさんは、自分でおゼゼを追い立てて飛ばしてるって言ってた」
「アハハハハ!」
「行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊出撃。
◇
「姐御、今日はどうしやす?」
「いつもと同じだよ。魔宝玉メインで稼ごう。夜はギルドで食べようか。となるとワイバーンの卵が欲しいな」
ギルドの食堂の大将が作るフワフワ卵焼きは絶品なのだ。
他の冒険者達にも喜んでもらえるしな。
都合よくワイバーンの卵が手に入るのかって?
当然のごとく手に入れようとしてるんだから、変なフラグ立てようとすんな。
「ボスは今、レベルいくつね?」
「えーと二回レベル上がってるから、多分一〇三のはず」
ウィッカーマン倒すといくつかレベル上がったりするから、わかんなくなるけどな。
いや、もうレベル一〇〇超えだし、ウィッカーマン倒してもポコポコレベル上がんないのかな?
ギルドカードでレベルを確認できないのは不便と言えば不便だが、もう気にしても仕方ないか。
「今のユー様ですと、人形系レア魔物やイビルドラゴンを『雑魚は往ね』で倒せるんでしょうか?」
「どうだろ? 確認は必要だね」
人形系レアや最強魔物群がレベル九九カンストということなら、今のあたしの『雑魚は往ね』は効くだろう。
しかしやつらのレベルが上限突破してることだってあり得るしな?
「……自分の魅力が気になっちゃう年頃だな」
「ミリョクじゃなくてボーリョクね」
「乙女の好奇心を満たしてやらないといけない。『雑魚は往ね』の効きを調べるの先にしよう」
「「「了解!」」」
ウィッカーマンや魔境中央部の最強魔物群に『雑魚は往ね』が効くなら、今後の戦略が違ってくる。
いや、最強魔物を倒さなきゃいけない機会はもうないかな?
もし効かないようなら、ボニーに魔物のレベルを見てもらってもいい。
「よし、行こうか!」
◇
「結論から言うと、あたしTUEEEE!」
「そうですねえ」
クララの声も呆れが入っている。
どうやら魔境の魔物は全て『雑魚は往ね』で倒せる。
赤の女王(仮称)だけはわからんけど。
調子に乗ってウィッカーマンを何体か倒してたら、自分のレベルがわかんなくなるという不慮の事故も起きた。
「これからウィッカーマン戦は、あっしが『キントーン』を装備すればいいでやすか?」
「うん、よろしく」
『キントーン』はウィッカーマンの魔法『メドローア』を無効化できるが、同時に敏捷性をかなり引き上げてしまうため攻撃順が変わり、今まで必須だった『コピー』による連続攻撃ができなくなってしまう欠点があった。
『雑魚は往ね』一発でウィッカーマンを倒せるなら、根本的にやり方が変わる。
とゆーか消費マジックポイントがメッチャ減ってお得だな。
「ただいまー」
「お帰りなさいませ」
「魔境で普通に出る魔物は、『雑魚は往ね』で全部倒せることがわかった」
「ハハハ、おめでとうございます」
オニオンさんはこれくらいじゃ驚いてくれないな。
「レベルが一〇〇超えてる魔物ってどんなのがいるかな?」
「ブラックデモンズドラゴンやカオナシは、レベル一二〇でカンストしていると言われています。ドーラでの生息は確認されていませんが」
「結構強かったもんな」
「えっ?」
バアルの宝箱クエストで戦ったことあるんだってばよ。
ブラックデモンズドラゴンはまた遭う気がするから、あたしのレベルは一二〇以上あった方がいいな。
「まだまだ修行が足りないわ。オニオンさんさよなら」
「またいらしてくださいね。修行は結構ですけれども!」
転移の玉を起動し帰宅する。




