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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第851話:画集の期待値

 心持ち首をかしげ気味の新聞記者ズ。


「はい。しかし画集については詳しい情報がなくてですね」

「べつに秘密にしてるわけじゃないから、聞きたいことがあったらどんどん聞いてよ」

「ユーラシアさんの企画なんですか?」

「アイデアはあたしだな」

「そもそもどこから美人絵画集なんて話が出たんです?」


 うん、それは疑問だろう。


「カラーズ緑の民は結構質のいい紙を作れるんだ。本が売れる世の中になったら、紙は売れるに決まってるじゃん?」

「はい、わかります」

「去年の暮れに、どうやったら売れる本ができるかっていう話し合いがあってさ。で、イシュトバーンさんに美人絵描いてもらって画集にしたらメチャクチャ売れちゃう、って意見を出したの。それが最初だな」

「ああ、服屋オープン翌日の新聞はすごく売れました!」

「でしょ? 最初は冗談のつもりだったのに、皆がやろうって言うしモデルも集まるしイシュトバーンさんも乗り気だから、やってしまえってことになった」


 これも不思議なもんだ。


「内容は詳しく言うと?」

「モデル二〇名の美女美少女画集だよ。もうほぼ描き終えてて、今日のあたしが最後なの」

「えっ? 最終段階じゃないですか!」

「本扱う商人のヘリオスさん知ってるでしょ? 初版二〇〇〇部の注文もらってるんだ」

「「二〇〇〇部も!」」

「売値は六〇ゴールド」

「「安っ!」」


 ハッハッハッ。

 新聞記者ズの反応は率直だなあ。


「大量の部数なら本は安くできるかっていう実験を兼ねてるんだよ。画集なら字を読める読めないは関係ないからね」

「な、なるほど」

「本当は識字率を上げて、安い本の潮流を作りたいんだ。札取りゲームで字を読めるようになった人が次に何読むか、ってのは狙いどころだよ? 新聞社も新聞だけ売ってたら経営カツカツでしょ? 積極的に仕掛けていこうよ」


 印刷機持ってるのは強いよな。

 自前で宣伝できるんだから、よっぽど需要外してなきゃ当たるぞ?


「ちなみにどんなものがいいでしょう?」

「丸投げで聞いちゃうのかよ。記者さん達は取材力があるんだから、札取りゲーム買った人これから買おうとしてる人にアンケート取って、何が読みたいか聞けばいいじゃん」

「そうですね!」

「アンケートも記事にすれば一石二鳥だぞ?」


 でも実際には需要って作るものだけどな。

 欲しがるものだけ出してても、大当たりはしない気がする。


「ところで何でイシュトバーンさん黙ってるのよ?」

「どうしたらあんたを魅力的に描けるか、思案中なんだぜ」

「何だそーか」


 ならば仕方ない。

 言い訳みたいな気もするが。

 さて海だ。


「ポーズ取ってくれ」

「どんなの?」


 エルマの時と似たポーズって言ってたな。

 右手を伸ばして海を指し、左手を腰に当てた立ち姿か。

 少女よ大志を抱け、って感じ。

 あ、描き始めたな。

 新聞記者ズも覗き込んでいる。


「こら、こっち向くんじゃねえよ。海見てろ」

「おーけー」


 気になるなあ。

 結構人集まって来てたし。

 新聞記者ズとイシュトバーンさんの話し声が聞こえる。


「初版二〇〇〇部は多いと思うのですが」

「まあドーラの人口や、新聞の発行部数から考えりゃな。でも初版部数決めたのはヘリオスだ」

「ヘリオスさんが……では十分勝算があると見ているんでしょうね」

「精霊使いは最低一〇万部くらい売るつもりらしいぜ」

「「一〇万部?」」


 最低じゃねーよ。

 目標だよ。


「輸出分を含めてな」

「輸出? 帝国へですか?」

「もちろんだ。ドーラから輸出するものが少ないと困るって話は、この前したろう?」


 これはマジで困るんだってばよ。


「しかし、画伯の画集を六〇ゴールドで買えるなら売れますね!」

「だろう? モデルには帝国の皇女や海の王国の女王、エルフの族長も含まれてるんだ。今後二度と見られないような、伝説的な画集になるんだぜ」


 イシュトバーンさんも煽るなあ。

 しかもまたいつの間にか画伯呼ばれてるし。


「この絵も……素晴らしいですね!」

「おう、精霊使いの絵は画集の表紙になるんだ」

「なるほど、納得です!」


 とゆー感想が出るってことは、終わりが近いのかな?


「あいつは新聞のこともちゃんと考えてるからな。協力してやればいい目が見られるぜ」

「はい、そうですね。あの、イシュトバーンさんは?」

「ハハッ、老人に期待するんじゃねえよ」


 すげえ暇してるから、頼めばいろいろやってくれると思うよ?


「よし、終了だ!」

「やたっ!」


 群がる人々も一様に頷いている。

 ……いつもと様子が違うな?

 港だから人少ないってこともあるが。


「会心の出来だぜ」

「ありがとう、御苦労様。あたしにも見せてよ」


 イシュトバーンさんが得意げに見せてくる。

 どらどら。


「どう思った?」

「モデルは退屈とゆーか窮屈とゆーか。動いちゃいけないってのが、どーもあたし向きじゃない気がする」

「じゃなくてよ。絵についての感想な?」

「メチャメチャ格好いいねえ」


 我が野望はこの先にあり! ってイメージ。

 これはぜひ飾っときたいわ。

 でも……。


「イシュトバーンさんの絵にしては、えっち成分が足りなくない?」

「表紙が助平じゃ買いづらいだろうが」

「そーゆーもんなの?」


 謎の配慮だ。

 ポスターはえっちでも普通に売れてるがな?

 ギャラリーから声がかかる。


「他の絵はもっと色っぽいのかい?」


 あ、しまった。

 着替えたから絵持ってきてないな。

 セレシアさんの店に置いてきちゃった。


「すげーえっちだよ。二ヶ月半くらい前にイシュトバーンさんの絵が新聞の一面飾ったことあったんだけど、あんな絵がズラッと並ぶと思って」

「あっ、覚えてる覚えてる! 売り切れたやつな」

「俺、この前階段下の服屋の店長描いてたやつ見てたんだ。色気むんむんだったよ」

「おほー楽しみだな! 六〇ゴールドって本当なのかい? 安過ぎないか?」

「本当だよ。でも西域まで輸送すると、もう少し高くなりそう。皆さんはレイノス人でよかったねえ」


 うんうん、雰囲気温まってきたね。


「初版の二〇〇〇部はすぐ売り切れちゃうけど、どんどん刷るからね」

「二〇〇〇部がすぐ売り切れるって……」


 新聞記者ズが半信半疑だけど、間違いないぞ?

 もう口コミでかなり広まってるんだから。


「じゃ、皆今日はありがとう。画集は期待しててね。期待値を下回ることは絶対にないから」


 目一杯煽って解散。

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