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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第847話:危険な固有能力

 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「いらっしゃいませ。ユーラシアさん」


 チュートリアルルームから帰宅後、葉入り紙とそれを納める箱の注文、『光る石』スタンドの試作品受け取りなど、細々とした用事を終えてから魔境にやって来た。

 美少女精霊使いはとっても働き者だから。

 とゆーより時間のある時に稼いでおかないと、何故かおゼゼに不自由しちゃうんだよな?


「オニオンさんに紹介しまーす! じゃーん! 大悪魔バアルだよ!」

「お初にお目にかかるである!」


 バアルも基本的にノリがいい子だなあ。


「こんにちは。魔境ガイドのペコロスと申します」

「ん? 貴殿の名はオニオンではないのか?」

「あたしが勝手にオニオンさんと呼んでるだけなんだ」

「吾が主は時々失礼である」


 アハハと笑い合う。


「ところでオニオンさん。こういうものに興味ある?」


 『光る石』スタンドを取り出す。


「これは何ですか?」

「『光る石』を置くでしょ?」

「あっ、光る?」

「『光る石』って手に持ってなきゃいけないのが面倒じゃん? これは台自体が魔力を蓄えられる材料でできてるから、ちょっと手から魔力を注ぎ込んでやれば……」

「ははあ、『光る石』を置くだけで光る、と」


 興味ありありですね。

 オニオンさんも読書家だから。

 読書家は夜に本を読まなきゃいけないとかゆールールでもあるのだろうか?


「これはある程度レベルがないと使えないとかいう代物ではないのですか?」

「詳しいことがまだわかんないんだ。『光る石』に必要な魔力量ってかなり少なめみたいだから大丈夫だとは思う。これまだ試作品なの。使ってみてよければいくつか作ってみようと思ってるんだ。オニオンさんにもあげるね」

「ありがとうございます。これも輸出品にしようと考えているんですか?」

「いや、これあんまり量産はできないな」

「ああ、材料が手に入りづらいんですね?」

「それもあるけど……帝国には安価で魔力を溜めておく技術がないみたいなんだ。ドーラだけで使うつもり」


 オニオンさんが一瞬驚いたような表情を見せる。

 軍事に転用されかねないことを了解したようだ。

 しかしすぐに平静に戻る。


「なるほど。危険たり得るものですか」

「可能性の問題だけどね。まーべつに全ての技術をおゼゼに変えなきゃいけないってもんでもないから」

「少々争いになった方が、技術が進むという事実はあるのであるぞ? 敵に負けたくはないであるから必死になるである」

「悪魔の考え方だなー」


 バアルの言うような側面を否定しはしない。

 でも元々生み出し得る技術を先取りしているだけなんじゃないかな。

 争いになって人の命や富を犠牲にしてまで得なくてもいい。

 あたしが目指すのは、豊かで様々なものを手に入れやすい世界だから。


「平和利用もできるんだよ。塩を作るんだ」

「塩?」


 首をかしげるオニオンさん。


「海の水を塩を作る機構まで転移で運ぶでしょ。そーすると、一番労働力の必要なところで楽できるじゃん?」

「なるほど、潮汐にも人力にも頼らず海水から塩を作るという発想ですか。ということはデスさんの御協力は取りつけ済みで?」

「もうデス爺設計の海水の転移吸入口は完成してるの。でも移民の方で手一杯だから、今はこれ以上動けなさそうなんだよね」

「人口急増が決定している今、必需品である塩は非常に重要ですね」

「ドーラでまとまった規模で塩作ってるとこないみたいなんだよ」

「これまで必要以上の塩を作ろうという発想はなかったでしょうから。商人に買い占められたら困りますねえ」

「いや、困りはしないんだ」

「ほう?」


 面白そうな目ですね?


「もし買い占めしやがったら、海の王国で大量に塩買いつけてきてバラ撒く。不埒なやつには破産してもらう」

「ハハハ、新聞使ってそう告知しておけば、悪徳商人も出ませんよ」

「あっ、オニオンさんは賢いなー。でも悪いやつを叩き潰すのも面白そうなんだよなー」

「最も不埒なのは吾が主なのである」


 大笑い。

 バアルもなかなか面白いやつなのである。


「……危険な固有能力に関してなのですが」

「うん、どんなのがあるかな?」


 オニオンさんには、プリンス暗殺計画が発動された際にヤバそーな固有能力について、ピンクマンと調べてもらっていたのだ。


「『ストーカー』が最も危険だろうと思われます」

「どんなやつ?」


 ロックした標的一人の現在地がわかってしまうんだそうな。

 何それヤバ過ぎる。


「皇子殿下は有名人ですから、既に帝国本土でロックされている可能性もあります」

「隠れることもできないのか。ひどい能力があるなあ」

「『ストーカー』はかなりレアな能力であるぞ。吾は見たことがないである」


 バアルが見たことないのであれば、少なくとも第二皇子の手駒に『ストーカー』の能力持ちはいない?


「他にはどんなのがあるかな?」

「接近手段としては『隠密』とその類似の能力ですか」

「気配を消したり、自分の存在感を薄くしたりするやつだね」

「はい」


 ダンテの持つ『陽炎』なんかも似ているが、『隠密』ほど危険ではない。


「接近に関して危険なやつはわかった。実際に仕掛けてこられると危険なのは?」

「『アサシン』、『パラライズハンド』などの、即死や状態異常付与系のものですかね」


 『アサシン』は相手にダメージを与えることによって確率で即死を、『パラライズハンド』は触ることで麻痺を与えるんだそうな。


「ただしこれらの能力の効果は、ある程度以上のレベルを持たないのであれば無視できます」

「となると?」

「『ララバイ』、『アイドル』には注意が必要です」


 『ララバイ』は緑の民フリッツの持つ固有能力だ。

 あれ抵抗持ちじゃないとレベル差を覆してほぼ効くみたいだし、離れてるところからでも有効だからな。

 『アイドル』は無差別に相手を魅了する能力らしい。


「ありがとうオニオンさん。すごく参考になった。ピンクマンにもお礼言っといてよ」

「はい。逃げられない、避けられない状況に誘導されることがありましたら臭いです。御注意を」


 わかる。

 仕掛けてくるとすると、逃げられない状況での可能性が高い。

 『ストーカー』の能力持ちもいらず、人海戦術でやられそう。


「うん、行ってくる!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊出撃。

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