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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第840話:初級冒険者講座

 フイィィーンシュパパパッ。

 チュートリアルルームにやって来た。


「ようこそ、ジークハルト・ミュラーさん。あなたの……」

「バエちゃん、定型の挨拶はいいや。手っ取り早くいこう」

「そ、そう?」


 やる気満々のレノア、どこか他人事のジーク君、そしてニヤニヤするイシュトバーンさん。

 バエちゃんも何となく残念そうだけど、あたしも暇じゃないから。


「『アトラスの冒険者』とは、所属する冒険者に対する一種のお仕事マッチングサービスです。『アトラスの冒険者』が『地図の石板』を得ると、ホームに新たな転送魔法陣が設置されます。転送先にクエストがありますので、それを解決してください。報酬と経験値を得られます」


 バエちゃんの最初の説明だけは流れるようにスムーズだなー。

 レノアは前のめりだけど、ジーク君なかなか冷静じゃないか。

 ふむ、ここはあえて……。


「質問ある?」

「儲かりますかっ?」

「がっつき過ぎだろ」


 ついにイシュトバーンさんが笑いだす。


「この精霊使いは、ほんの数ヶ月でドーラ全土を買えるほどの資産を手にしたぜ?」

「お金に困ってる『アトラスの冒険者』はいないわね。おゼゼがないっていつも騒いでるのはユーちゃんくらい」

「えっ?」


 矛盾するように聞こえる二人の発言に混乱するレノア。

 でも完全に事実なんだよなあ。

 面倒だから説明は省くけど。


「三〇〇〇ゴールド相当の装備品は最初から支給してくれるんだ。初期投資が必要なんてことはないから、気軽に始められるよ。個人的な経験から言うと、アイテムや素材に関する知識があれば普通に儲かるな」

「師匠がおゼゼがないと騒ぐのは何故ですかっ?」


 師匠呼びかよ。


「いい女にはお金がかかるから」

「クエストでアイテムが手に入るのかヨゥ? 信頼できるアイテムの取り引き場があるのかヨゥ?」


 ジーク君の指摘するポイントはなかなか的確じゃないか。

 イシュトバーンさんも見直してるみたいだぞ?


「薬草、素材なんかはクエストで頻繁に手に入るねえ。魔物がドロップする場合もあるし。もちろん判別できないと見逃しちゃうから注意だよ。クエストの達成報酬よりも、アイテム売買がメインの収入になるかな」


 熱心に聞いてるジーク君とレノア。


「三つくらいクエストをクリアすると、ドリフターズギルドっていう冒険者の集まる場に行けるようになるんだ。ギルドには誤魔化したりしないで、しっかり買い取ってくれる店があるから安心だよ」


 レイノスからならギルドまで歩いて行けるけど、ある程度経験積んで行った方がいいだろ。

 もし序盤のクエストに詰まるようなら教えてやってもいいし。


「胴元はアイテムの転売で儲けてるのかヨゥ?」

「胴元て。それも収入の一つだね。あとは武器防具の販売や依頼紹介の仲介料とか」

「一つ前の期は、ユーちゃんの魔宝玉荒稼ぎで最高益を叩き出したのよ!」

「魔宝玉! ドーラが魔宝玉の産地だってことは知ってますっ!」


 レノアが食いつくなあ。


「魔宝玉は人形系っていう特殊な魔物のドロップ品なんだ」

「精霊使いは人形系を倒しまくってぼろ儲けしたんだぜ」


 レノアのキラキラな瞳がギラギラしてきましたけど?


「人形系は滅多に出現しない上に、普通の攻撃じゃダメージ入らないって特性があるんだよ。今はまだムリだけど、ちょっとレベル上がれば踊る人形っていうヒットポイント一のやつは何とかなるから、いずれ倒し方教えてあげるね」

「はいっ!」


 今教えるとレベル足りないのに突っ込んでいったり、武器防具揃える前に『経穴砕き』のスキルスクロールを買ったりしそうだ。

 レノアにはブレーキをかけないといけない。


「稼げるのが『アトラスの冒険者』の一番のメリットなのかヨゥ?」

「当たり前ですよっ!」

「とは言い切れないなー」

「えっ?」


 驚くようなことでもないんだが。


「ドーラは魔物が多いじゃん? 隣の村行くのも難しかったりするんだよ。あちこち行けるようになるのが一番の利点じゃないかなー。あたしの場合はおいしい魔物肉を狩れる転送先があってさ。それが一番ありがたいね」


 盛んに頷くバエちゃん。

 心の友、お肉の友よ。


「メリットなんかたくさんあるよ。どれが一番なんて、あとで決めりゃいい」

「そうですねっ!」

「オレ達は何すりゃいいのかヨゥ?」

「うーん、ジーク君は『アトラスの冒険者』に魅力感じてる?」

「実はあんまり、なんだヨゥ」

「「えっ?」」


 バエちゃんとレノアが極めて意外そうだが、まあやる気なさそうな気はしてた。

 ジーク君からあんまり熱量を感じないんだよな。

 父親に評価されなかった魔法力や最大マジックポイントを評価されて何となく嬉しくなっちゃったんだろうけど、興奮が冷めて自分のポジションを曖昧に感じてるんじゃないか?


「ジーク君とレノアのパーティーがフィールドを往きます。スライムが一匹現れた! コマンド?」

「戦うっ!」

「身を守るヨゥ」

「ぱーふぇーくと! オーケーでーす」


 ジーク君の眉間にしわが寄る。


「オレは何もできないヨゥ」

「ジーク君が最初からバリバリ魔物を倒せるなら、あたしもこんな世話焼かないんだって」


 ジーク君がこちらを見てくる。

 ……本当にモブ顔だなあ。


「レノアは弱い魔物だったら一人で倒すだけの力が最初からある。だからって後々まで通用するわけじゃないぞ? 一方で最初は確かにジーク君お荷物でしかないよ。でもレベルが上がるにつれ存在価値は高まる」

「魔法かヨゥ?」

「正解だよぅ」


 感染ったよぅ。


「魔法を使えるようになるってのは魅力じゃない? しかも数の少ない水魔法使いだぞ?」

「まあ……」

「補助魔法だって悪くないんだぞ? 前衛でレノアが機能するなら、ジーク君は支援と回復を受け持てばいい。自分で魔物からダメージを奪えなくってもいい」

「冒険者なんてパーティーメンバーごとに役割が決まってるもんだ。火力叩きつけるだけが能じゃないぜ」

「……了解だヨゥ」


 うんうん、ジーク君も少しずつ冒険者とゆーものを理解してきたようだ。


「レノアが冒険者やりたがってるんだから、手伝ってやりゃいいじゃん。男の甲斐性だぞ?」

「ジークさんっ! よろしくお願いしますっ!」

「わ、わかったヨゥ」

「男に二言は?」

「ないヨゥ」

「やったあっ!」


 よーし、いいだろう。

 レノアも飛び跳ねて大喜びだ。

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