第84話:掃討戦開始
帰宅後、皆で掃討戦に関する作戦会議だ。
ザコの魔物はどうにかなるだろう。
しかし一体確認されているとゆー人形系魔物の大物デカダンスが難物だな。
クララが言うには、あたし達みたいな駆け出し冒険者が相手にするような魔物じゃないらしい。
ただパラキアスさんやサイナスさんの意見からすると、周りから支援を受けられれば倒せそうな感じだ。
参加者の内、ここまで情報を持ってるのは間違いなくあたし達だけ。
気張らねば。
「もし倒せたならば、莫大な経験値が入ると思われます」
「クララが欲を刺激してくるよ。ヒットポイントはどれくらい?」
「三〇~四〇と本には書いてありますね」
「つまりダメージソースの『経穴砕き』は全員分必要ってことだ。結論としては氷耐性のカードが四枚と、もう一人分の『経穴砕き』を手に入れるのは必須」
人形系魔物にダメージを与える手段は、今のところ『経穴砕き』しかない。
一ずつヒットポイントを削っていくのは大変だが、あらかじめ準備できるのはあたし達だけだもんな。
支援と回復は外野に任せて、うちのパーティーでデカダンスに相対することになりそう。
デカダンスは氷系の全体攻撃魔法が苛烈とのこと。
あたし達が矢面に立つなら、魔法を軽減しないと話にならない。
パワーカード『寒桜』に氷耐性三〇%がある。
今の交換ポイントが一八〇で、その後にある程度素材を拾ってるので実質二二〇くらいか。
今日明日明後日で残りのポイントを溜められるか?
『経穴砕き』はあたしとダンテが習得していて、パラキアスさんからもらったスクロールが一本。
もう一本買うべし。
でもさっき目一杯薬買ったからおゼゼがないっ!
「アルアさんとこと本の世界で経験値稼ぎと素材採取だね、今日から三日間頑張ろう!」
「「「了解!」」」
◇
――――――――――二六日目。
まあこの三日間は地味というか地道というか。
あたし達にこーゆーの似合わないなとは痛切に思った。
「若い内は苦労しな」
アルアさんは人生の先輩っぽく楽しげに言うけど、苦労というか苦痛なんだよ。
ノルマをこなさなきゃならないってのは。
苦痛の成果というか、全員レベルが二ずつ上がった。
あたし、クララ、アトムが一七、ダンテが一六だ。
属性を武器に付与する支援魔法を覚えるレベル帯だったらしい。
クララが『ウインドエンチャント』、アトムが『アースエンチャント』、ダンテが『ファイアーエンチャント』『アイスエンチャント』『サンダーエンチャント』を習得した。
前衛が簡単に魔物の弱点属性を突けるようになるメジャーな魔法で、スキルスクロールも販売されている。
でもあたし達はパワーカードで属性付与すればいいので、あまり出番はないかもしれない。
その他、あたしがバトルスキル『脚殺ぎ』を、クララが全体基本状態異常解除の白魔法『オールキュア』を覚えている。
『脚殺ぎ』は敵単体の防御力・敏捷性・魔法防御を同時に下げる強めの攻撃という、アトムの『透明拘束』に似たタイプのスキルだ。
強敵相手に『透明拘束』とセットで使うと大幅に能力を落とせそう。
「よくやったね。ほれ『寒桜』四枚だよ」
「ありがとうございまーす」
……癪だけど達成感は悪くないな。
残り交換ポイントは七。
あれ、コルム兄が手招きしてる。
何だろ?
「族長から招集がかかったんだ。オレも西へ移住することになった」
「コルム兄も引っ越しか。死亡認定されてる人がいきなり行くと、皆ビックリするんじゃないの?」
「いい加減そのギャグ止めろ。精神に来るから」
……変だな。
コルム兄が行くなら、パワーカード作製の技術が買われてるってことなんだろう。
移住先でパワーカードが必要なんだろうか?
「うーん、族長の考えはオレもわからんけど、問題はそこじゃないんだ。つまりアルア師匠に助手がいなくなるだろ? 何だかんだで高齢だし、オレの代わりが務まるような人がどこかにいたら紹介してくれよ」
コルム兄並みに器用で、パワーカードに興味がある人か。
あれ、条件厳しくね?
でもカードの供給が途絶えると、あたし達の死活問題になるしな。
「わかった。心当たりはないけど、探しとくね」
「頼むよ」
転移の玉を起動しホームに戻る。
バエちゃんとこで『経穴砕き』をもう一本購入し、これでうちのパーティーは全員が人形系魔物にダメージを与えられる体制になった。
さあ明日は本番だ。
今日はゆっくり寝よっ!
◇
――――――――――二七日目。
よーし、いい天気だ。
雨降ったら休もうかと思ってたよ。
これも日頃の心がけがいいからだな。
日課をすませて灰の民の村へしゅっぱーつ。
「朝からとは聞いてたけど、具体的な開始時間は聞いてなかったわ」
「そうですねえ」
「モーマンタイね。どうせフィニッシュまでには時間かかるね」
「おお、ダンテ正解だな」
「腕が鳴るぜ!」
のんびり歩きながら灰の民の村へ到着。
一応、道具屋に顔を出しておく。
「こんにちはー。ポーションとかの消耗品ってまだある?」
「ごめんね、さすがに売り切れなの。あらあら、ユーラシアちゃん。あんた魔物掃討戦の参加者なんだろ? ゆっくりしてていいのかい?」
「いいのいいの。どうせすぐには終わんないから」
村の東、魔物の住む領域との境である大柵のところへ行く。
大きな転移石碑があるが、おそらくギルドと繋がってるものだろう。
デス爺と精霊コケシ、サイナスさんが待機している。
ふむ、『ヒール』を使える面々だな。
「こら、ユーラシア! 遅いではないか」
「ごめんなさーい。始まる時間聞いてなかったの」
「いえ、始まる時間なんてあってないようなものでしたから構いませんよ」
ギルド依頼受付け所のおっぱいさんだ。
参加者名簿を片手に立っている。
「ええと、ユーラシア・ライムさん」
「あ、今日あたし『アトラスの冒険者』としてじゃなくて、灰の民の代表で参加ってことになってると思う」
名簿にあたしの名がないことに困惑していたおっぱいさんに声をかける。
「ああ、そうでしたか」
「でもギルドの祝勝会には参加するんで!」
「はい、承りました」
おっぱいさんニッコリ。
「皆が出撃したのはどのくらい前かな?」
「三〇分くらい前になります」
「わかった、行ってくる!」
「お気をつけて!」
お弁当を受け取り、皆に見送られて出撃する。




