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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第835話:お姫様抱っこで魔境を往く

 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「いらっしゃいませ?」


 予定通り魔境だ。

 赤眼族の子を連れてくるとは言ったが、思ったより大人数なので驚いたのだろう。

 ハッハッハッ、オニオンさんも修行が足りない。


「随分と大勢なんですね?」

「やることは大したことじゃないんだけどね」


 非戦闘員はミサイルとヒルデちゃんだけ。

 ダンが言うところのいつもの無茶レベリングに比べれば、全然どうってことない。


「こっちが赤眼族のミサイル、そっちがカラーズ緑の民のヒルデちゃんだよ」

「ミハイルだ!」


 ミサイルの抗議の声は軽く無視され、オニオンさんが説明を求める。

 ま、赤眼族の事情は昨日話してあるから。


「ヒルデちゃんは次期緑の民の族長で、ラルフ君の婚約者ね。でもちょっと身体弱いんだって。レベル上げれば平気だろうから」

「なるほど、ステータスパラメーターが上がれば楽だろうということですね? しかし……」


 お姫様抱っこを矯めつ眇めつするオニオンさん。

 何か問題が?


「ユーラシアさんがお強いのは理解していますが、これは危険なのでは?」

「だからカバーにダンをつけてるんだ」

「俺は赤眼族の坊主の子守りのつもりで来たんだが」

「ミサイルだけじゃなくて、若と姫の方も見ててよ」

「そういうフォーメーションかと思えばありですか」

「ペコロスさんよ。かなりユーラシアに毒されてきてるぜ?」


 魔境ガイドのオニオンさんは、本来ならこーゆー冒険者にあるまじき舐めた行為は、止める立場だろうからな。

 まーでも今日はさほど危なくないよ。

 やたらと突っかかってくる魔物の多いドラゴン帯には行かないからね。


「行ってくる!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及び誇り高き戦士と姫と若、パパラッチガーディアン出撃。


          ◇


「空気が重いです……」

「ぼーんとする」

「変わった表現だな。魔境特有の空気だよね。魔力濃度が高いからだって言われているよ」

「で、どうすんだ?」


 ダンが聞いてくる。


「長いこといる気はないんだ。ヒルデちゃんのレベルが一〇くらいになればいいと思うから、ワイバーン二、三体も倒せばオーケーじゃないかな。卵拾ったらギルドの食堂でお昼御飯食べていこうよ」

「おう、了解だ」

「あ、オーガだ。あれ割とヒットポイント高いし、クリティカル出すから嫌いなんだよね」

「嫌いなのはドロップしねえからだろ」

「それなー。ほとんどドロップしない。自分が何のために存在してるか、考えたことないのかな? 大いに反省してもらいたい」


 でもレッツファイッ!

 ダンテの実りある経験! あたしのハヤブサ斬り・改×二! ウィーウィン!


「すげえ……」


 ミサイルがワクテカしてる。

 うむ、魔境の魔物に対して全然ビビった様子を見せないのは評価できる。

 しかし興奮しておかしな行動を取られても困る。

 釘を刺しておかねば。


「今のだけでもレベルいくつか上がってるはずだよ。でも優秀な戦士は敵を侮ってはならない。魔境の魔物はまだまだあんたが敵うレベルじゃないから、血気に逸ったことをしてはダメだぞ?」

「おう!」

「ヒルデちゃんはどう?」


 ラルフ君に抱えられてる姫に声をかける。


「はい、何だか身体が軽くなった気がします」

「うんうん、いい傾向だねえ。次行こうか」


 もうちょっとラルフ君にお姫様抱っこされててくださいニヤニヤ。

 その後二体のワイバーンを倒し、無事卵ゲット!


「なあ、あの二人も固有能力持ちなのか?」


 ダンが聞いてくる。

 二人とはもちろんミサイルとヒルデちゃんのことだろう。


「ヒルデちゃんは違うけど、ミサイルは固有能力持ちだよ」

「何の話だ?」


 ミサイルは聞き方がストレートだね。

 嫌いじゃないぞ。


「固有能力って知ってるかな? 生まれつき魔法使えるみたいなやつ。個人の持ってる特殊な能力のことだよ」


 目を輝かせるミサイル。


「俺もなのか? 魔法を使えるようになるのか?」

「ミサイルは魔法系じゃなさそうだけど、固有能力持ちだよ。ただあたし、何の能力かまではわかんないんだよね。あとで調べてもらおうか」

「おう!」


 嬉しそうじゃないか。

 レベル一〇超えて何も覚えてないってことは、スキルには期待できないかもしれないな。

 何となくだが物理アタッカー向きの固有能力の気がする。

 若と姫?

 あっちはあっちで幸せそうだニヤニヤ。


「クララ、クレソンのところまで運んで」

「はい、フライ!」


 びゅーんと魔境東奥、クレソンの生える湿地へ。


「これはすごい……」

「全部食えるのか?」


 ごわさーっと湿地を覆っている緑に皆が驚く。


「うん、悪くない味だよ。摘まんで食べてみ?」

「なるほど、若干ピリッとくるが、悪くねえな」

「おいしい!」

「ドーラくらいの気候だと冬でも育つって気付いたからさ、あっちこっちに植えて回ってるの。水辺ならいくらでも増えるよ」


 頷く一同。


「うちの農場にも欲しいぜ」

「緑の民の村にも植えておきたいです」

「レイノス東の自由開拓民集落は、比較的水が豊富ですので自分にも」

「折り取って挿しとくだけで根付くよ。あっ、ちょっと待った! 足元ズブズブだぞ!」


 ダンとミサイルがズブズブしてる。

 もー何やってるんだよ。


「注意力散漫だなー」

「俺としたことが、笑いを取りに行ってしまったぜ」

「欲しがり過ぎだろ」


 アハハと笑い合う。

 まあダンは先に入ったミサイルを捕まえに行ったんだろうけどな。


「こらミサイル。見えてる罠に嵌るのは優秀な戦士の振る舞いじゃないぞ」

「反省した!」

「よし」


 最初ツンだったけど、デレてくるとノブ君に似たキャラみたいだな。

 素直で元気がいい。

 クソガキ色が薄れてきちゃった。


「クララ、お願い。多めに取っておいてくれる?」

「はい、わかりました」


 クララに無限ナップザックを渡し、飛行魔法を使ってクレソンを摘んでもらう。


「『遊歩』持ってる何人かでやった方が早いんじゃねえか?」

「おいこら、魔境ってこと忘れてるだろ。あたし達は警戒するんだよ」

「おお、マジで油断してたぜ。どうもあんたの側だと安心しちまう」

「あたしから溢れ出るマドンナの安らぎの罪だったか」


 アハハ、今日は楽しい日だなー。

 よーし、今日のノルマ終了。


「ダン、ミサイルをギルドに連れてってやってくれる?」

「おう、任せろ」


 一旦解散してギルドで待ち合わせる。

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