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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第834話:お可愛らしいこと

「これはひでえな」


 転送先である縞模様の建物を出、一面の焼け野原を見てダンが憮然とする。

 火事は本当に怖い。

 何もかもが奪われてしまうから。


「詳しいことわかんないけど、二、三ヶ月前の火事らしいんだ。食料も冬の作物もほぼ全滅みたいでさ。赤眼族の人もその辺ほじくり返して植物の根食べてたって言ってたよ」

「だろうな。この有様ではな」

「困った時はお互い様だから助けることにしたんだ」

「石板クエストだしな」


 ……ちょっと疑問なんだよな?

 火事で困ってるならとっとと赤眼族のところに繋がる転送魔法陣を出しゃいいのに、このクエストの始まりは、バアルのザクザク宝箱だったから。

 おそらくは一〇年に一度ほどあるという、定期の赤眼族クエストなのでは?


 もっとも食べ物のない期間が少々続いたところにあたしが登場した方が受け入れられやすいから、あえて遅らせて火事で困ってる赤眼族を助けろなのかもしれない。

 何とも判断のしにくい部分だ。


 集落の方へ歩く。

 あ、村人だ。


「こんにちはー」

「よう、精霊使いの人。そちらは旦那かい?」

「違うけど、将来は旦那になるかも」

「あんたもようやく俺の魅力の虜になったか」

「あくまでも可能性の話だぞ? 何万分の一かの」


 こらダン、先走るんじゃないよ。

 可能性がないわけじゃないなーってだけのことだ。

 決してフラグではない。


「ユーラシア!」


 村長とミサイルが走ってきた。


「おお、ミサイル元気だね」

「ミハイルだ! 覚えろ!」

「間違えるんじゃないよ。あんたの存在感をあたしに刷り込めば、自然に名前なんか覚えるのだ。大物になりなさい」

「おう!」


 手懐け方が独特だなって顔をダンがしている。

 かもしれない。 


「じゃあ、行こうか」

「おう! 仲間の冒険者だな? よろしく」

「なかなか元気がいいじゃねえか」


 ダンも気に入ったらしい。

 ダンは量産型のいい子ちゃんより、ミサイルみたいな子の方が玩具にし甲斐があると思ってるんじゃないかな?


「よろしくお願いします」

「昼過ぎくらいに帰ってくるね」

「わかりました」

「父ちゃん、行ってくる!」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 クララの高速『フライ』で緑の民の村の広場に降り立つ。

 おーミサイルすごくコーフンしてるじゃないか。

 高速飛行アトラクションはよっぽど楽しかったかな?


「飛行魔法はどうだった?」

「すごかった!」

「でしょ? この前見せたパワーカードの中にも、自分で飛べるようになるやつがあるんだ」

「欲しい!」

「あたし達と取り引きするようになると、手に入るようになる。赤眼族も毛嫌いしてないで、外の文化を取り入れる方が得だぞ?」

「おう、わかった!」


 ダンがこっちを見てくる。

 そうやって洗脳していくんだな? 人聞きが悪いな、説得だよ。赤眼族も手懐けるのか? うん。

 一瞬のアイコンタクトで意思の疎通を図る。


 緑の民が話しかけてくる。


「よう、精霊使い。今日は大勢だな」

「若と姫と、待ち合わせなんだよ」

「ハハハ、二人をよろしくな」


 村人が去ったあと、ダンが聞いてくる。


「若と姫って何だ?」

「ラルフ君とその将来の嫁ヒルデちゃんのこと。ヒルデちゃんは可愛い子で緑の民の次期族長なんだけど、緑の民は髪色が統率に重要なんだよね」

「髪色? ははあ、ラルフのあの鮮やかな緑の頭に着目ってことか」

「ピンポーン! ラルフ君の頭髪力と『威厳』の固有能力があれば、緑の民は治まるって寸法なわけよ。もう完全にラルフ君は緑の民に受け入れられてる感じだな」


 ヨハンさん嫌いで揉めた過去は何だったというのか。

 髪色が重要ってのは、今でもあたしはよくわからんのだが、この辺突っ込んでも仕方ないところだろうし。

 緑の民の習俗だという理解しかないな。


「若と姫と緑の民の事情まではわかったが、魔境流しの刑を執行するのは何故だ?」

「魔境流しの刑ゆーな。ヒルデちゃんはあんまり身体が強くないんだって。デートもこの辺でしかできないみたいだから、話を聞く側としては実につまらんでしょ?」

「結局あんたの都合かよ」

「あたしの都合が最優先に決まってるだろ」


 うちの子達が始まったぞーって顔してる。


「要するにポロックさん家の娘みたいに、ステータス値を上げてやればって発想だな? レベリングじゃねえか」

「無茶レベリングではないってば。せいぜい一〇も上げればいいと思うんだ」

「まあ……そうだな」

「だからわざわざデカダンスなんかを狙いにドラゴン帯まで行かないし、ケルベロスかワイバーンを何体か倒せば用は足りるんじゃないかな」


 ダンが納得する。


「で、若が姫をお姫様抱っこで魔境に連れてくから、ダンは近衛兵役だよ」

「お姫様抱っこで魔境……」

「笑えてくるでしょ?」

「実に面白いじゃねえか。ギルドでこの話広めりゃいいんだな?」

「そうそう。ダンはわかってるなー」


 お姫様抱っこで魔境を往く。

 伝説の勇者みたいだよニヤニヤ。

 さて、緑の民族長宅に着いたぞ。


「こんにちはー。精霊使いユーラシアとその他五名が来ましたよ」


 大きな族長邸の奥からラルフ君が出てくる。


「師匠、お待ちしてました……あっ、ダンさんまで?」

「ヒルデちゃん連れてると、ラルフ君の両手が塞がっちゃうでしょ? 安全のためにガーディアンを配備するよ」

「ありがとうございます。わざわざお手数おかけして申し訳ありません。そちらの子は?」

「あたしのクエスト先の子。魔境行ってみたいって言うから」

「赤い瞳ですね?」

「誇り高き戦士の証だよ。ミサイル、ラルフ君の緑髪もなかなかでしょ?」

「おう、なかなかだ! でも俺はミハイルだ!」


 アハハと笑い合う。


「ヒルデちゃん、今日はよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いいたします」

「可愛い子じゃねえか」

「お似合いの二人でしょ?」


 赤くなるラルフ君とヒルデちゃんを見て、ダンがコソっと言う。


「見てるこっちが恥ずかしくなるほど愉快だな」

「両手で顔を覆いたくなるほど愉快だね」


 お可愛らしいことニヤニヤ。

 ん、何?

 うちの子達がジト目で見てくるんだけど。


「うちのクララが、ダンって趣味わるーいって顔で見てるよ」

「あれはユー様悪趣味は控えた方がいいですよって顔だ」


 何でわかるんだよ。

 こらクララ、コクコク頷くな。


「さて、そろそろ行こうか」


 フレンドで転移の玉を起動、あたしん家へ。

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