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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第830話:懐かしのゲレゲレさん

 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「ユーラシアさん、いらっしゃいませ」


 武器・防具屋で『遊歩』のパワーカードを三枚注文、ミスティさんとワッフーを聖火教本部礼拝堂に送り届け、さらに女王とアビーの絵を版画屋に置いてから魔境に来た。

 ついでにサイナスさんに海水吸入口とビーコン、ワイバーンの卵も渡している。

 あたしは可憐な美少女の上に何て働き者なんだ。


 オニオンさんが心持ち小声で言う。


「……暗殺に使えそうなスキルや固有能力を、カールさんとともに調べてくれとのことでしたが」

「うん、おっぱいさんに聞いた?」

「はい」


 カル帝国の今上陛下は、もうこの先長くないらしい。

 一応皇位継承順位はあるのだが、定められた皇太子がいない。

 皇位継承順位一位の第一皇子が病弱ってこともあるみたい。


 次期皇帝を巡る争いは激しくなりそう。

 となると堅実な政治手腕を評価されており、かつドーラに実質島流しされているプリンスルキウスの存在は危うい。

 どこかで一度はプリンスに対する暗殺計画が実行されるのではないか、ということなのだ。

 実際どうなるか知らんけど、状況としてヤバいんだな。

 プリンスを推すドーラとしては、注意しとくに越したことはない。

 

「レベル五〇の人間に対して、スキルで不意を突いて致命傷を与えるのは不可能に近い、という結論です。それこそユーラシアさんのような超高レベル者が、ステータス値にものを言わせて行うのでなければ」

「うんうん」


 危険な超高レベル者が来れば、レベル五〇のプリンスルキウスなら一目で察知できるしな?

 じゃあスキルのセンはないか。


「となると危ないのは低レベルの相手でもヤバいやつだから……」

「固有能力関係か、個人で使える爆発物・兵器の類ですね」

「プリンスもフル装備だから、持ち込めるくらいの爆発物・兵器は耐えられると信じたい。とゆーか大規模なことやられると、どうしようもないんだよね」

「では、やはり固有能力に絞って調べておきますね」

「お願いしまーす」


 謎の固有能力が一番怖い。

 フリッツの『ララバイ』みたいに問答無用のやつもあるしな。


「ところでおっぱいさんとサフランの様子どう?」

「仲良くなったようです。今度の休みにレイノス行こうみたいな話してます」

「へー。あれ? ギルドの職員っていつが休みなの?」

「年末年始と夏休みくらいですね」

「マジか。休みがないじゃん」


 いいんか、その労働環境は。

 でも『アトラスの冒険者』は予算決まってて職員を増やせないみたいだしなあ。


「あとは突発事項が起きた時くらいで」

「突発事項?」

「また何かのフェスやっていただけませんか?」

「そー来たかー」


 あーゆーの狙ってやるのは大変なんだけど。

 皆が動いてくれなきゃいけないから。

 移民も一杯来るし、余裕がない。

 レイノスだけなら問題ないか?


「考えとくよ。お祭りは皆も楽しいだろうしなー」

「よろしくお願いいたします」


 お願いされちゃったぞ?

 食フェスは評判よかったし、イベンターのヨハンさんも次をやる気だったから、今年もやりたいな。

 ドーラの食文化発展のためにもなる。

 

「今日はレジャーですか?」

「稼ぎに来たんだ。ボチボチ輸出に考えてる品ができ上がってくるからね。引き取らないといけないんだけど手持ちが寂しくて」

「お忙しいですね」


 好きでやってるからいいのだ。

 何にもしてない方がつまんない。


「明日赤眼族の子を連れてくるんだ。よろしくね」

「赤眼族?」

「今あたし、赤眼族のクエスト請けてるの。火事で食べもの焼けちゃって大変なんだって」

「ははあ、気の毒な事情ですね。しかし赤眼族……」


 何か考えているオニオンさん。


「赤眼族の食料事情はドーラに来た移民以上に差し迫ってるんだ。がーっとお肉狩ってきて保存してあるから、とりあえず一ヶ月は食べるものあるけどね。魔境のクレソンも持っていってやろうかと思って」

「ああ、あれはいいですね。ユーラシアさんにもらったやつ、もうかなり増えてます」

「そしたら赤眼族の村長の子が魔境連れてけって言うからさ」

「つまりパワーレベリングが目的ではないと」

「うん」


 考えてみりゃ、レベリング以外で他人連れてくるのは初めてか。


「……稀にあるようですね。赤眼族関係のクエストは」

「みたいだねえ。ただどうしたらクリアかわかんないんだよね。先輩で誰か請けたことある人いないかなあ?」

「現役でもおりますよ。しかし誰が何のクエストを請けているかというのは、職員として言ってはいけないことでして。赤眼族もですが、特に他国他部族関係のものはデリケートなので口外厳禁となっております」

「赤眼族クエストを請けた人が現役でもいるってことが、オニオンさんの出せる最大のヒントだね?」


 曖昧に頷いている。

 オニオンさんらしからぬ、いたずらっぽい顔だ。


 ……赤眼族の村長は、一〇年おきくらいに『アトラスの冒険者』が来ると言っていた。

 今回は火事があったからイレギュラーかもしれないが、一〇年ほど前に既に実力のある冒険者で、今でも現役。

 『アトラスの冒険者』は依頼を効率的にこなすことを主眼に置いてるらしいので、赤眼族のことをある程度知ってる人だろう。

 となればホームが西にある……。


「ゲレゲレさんってどうすれば会えるかな?」


 一層にこやかな顔になるオニオンさん。

 どうやら正解らしい。

 ウサギの獣人ゲレゲレさんが以前に赤眼族関係のクエストを請けた人だったか。

 ゲレゲレさんは本当に久しぶりだ。

 クエスト抜きにしても会いたいな。


「難しいですね。ゲレゲレさんはほぼ換金でしかギルドを訪れないはずです。ポロックさんかサクラさんに伝言を頼むしかないと思いますが、会えるかどうかは……」

「だよね。あたし初めて会った『アトラスの冒険者』がゲレゲレさんなんだけど、その後一回しか会えてない」

「初めてがゲレゲレさんですか? ああ、確かユニコーンのクエストで会ったとか」

「うん。家に招待してもらったんだけど、奥さんがネコっぽい美人なの。お子さん双子ですっごい可愛くてさあ……」


 懐かしいな。

 あれから五ヶ月近くも経っているのか。

 もう歩けるようになってるだろうな。


「オニオンさん、ありがと。行ってくる!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊出撃。

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