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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第83話:サイナスさんの知恵

 デス爺パラキアスさんと別れてから、サイナスさん家に足を運ぶ。

 いるいる。


「こんにちはー」

「やあ、ユーラシアじゃないか。冒険者になったとは聞いたけど、クララ以外に二人も精霊連れてるのかい?」

「うん。結構面白おかしくやってるよ」

「何よりだね」


 サイナスさんは線の細いハンサムといった印象の、二〇代後半の男性だ。

 一見モテそうではあるけど、実はそんなことない。


「ところで、デス族長達が開拓民として移住するって話は聞いたかい? いやもう移住しちゃってる人もいるんだけど。オレがここに残るみんなのまとめ役だってよ。どう思う?」

「一言でゆーと頼りない。二言でゆーととても頼りない」

「ひどいな。でも大体正しいんだよなあ」


 サイナスさんは頭を抱える。

 この大丈夫かコイツという感覚は、母性本能を刺激しないんだよなあ。


「マジで大丈夫なん? どうせ黄の民とか黒の民のやつら、ちょっかい出してくるでしょ」


 西アルハーン平原に割拠する諸部族は、カラーズと一括りにされてはいる。

 が、各々とても仲が悪い。

 特に精霊とともに生活する温和な種族である灰の民は、野蛮な黄の民や陰険な黒の民にバカにされているのだ。


 ……しかしパラキアスさんの持つドーラの今後っていう視点だと、カラーズ各村が仲悪いって、あんまりいいことじゃないな。

 『大掃除』でカラーズの東側エリアの魔物がいなくなると、各村の思惑が衝突しそう。

 融和や協調を考えなきゃいかん時なのかも。


「ここ灰の民の村の東の境界って、対魔物の前線だろう? レイノスから警備兵が来てくれることになったんだ。だから大丈夫……と思いたい」


 以前コモさんが『今だから大丈夫』って言ってた移住の根拠はこれか。


「曖昧な言い方だけど、東の平原から魔物追っ払うのと関係あるんでしょ?」


 サイナスさんは驚く。


「何で知ってるんだ? オレだけは知っててくれって、デスさんに打ち明けられたばかりなのに」

「チラッと他所で聞いてね。で、今じっちゃんとパラキアスさんにその話したら、じっちゃん家に引っ張り込まれて全部聞かせてもらった」

「マジかよ。すごいデキる人みたいだな」

「あたしはすごいデキる人なんだよ。可愛いだけじゃなくて」


 おいこら、笑うところじゃないわ。


「細かい打ち合わせがいるならサイナスのところ行け、って言われたから来たの」

「丸投げかよ」


 再びサイナスさんが頭を抱える。

 もうそれ飽きたとゆーのに。


「ねえ、パラキアスさんほどの大物が、この魔物掃討計画を進めてるのは何で? 今ってのがどうしても腑に落ちなくて」


 サイナスさんが思慮深い瞳をこちらに向ける。


「……『黒き先導者』殿は、ガチガチのドーラ独立派だろう? 帝国本土から大量の移民が来る未来を見越して、土地を確保しておきたいんじゃないか?」


 ドーラの独立と大量の移民?


「えらくきな臭い話だぞ?」

「デスさん達の移住地がずっと西ってのは聞いたかい? ドーラ西域は昔から自由開拓民が多くて、比較的しっかりした街道があるんだ。つまり物資の運搬がしやすい。ドーラ独立戦争でレイノスが戦場になった時、支援するには都合のいい位置だ。なんてオレの妄想に過ぎないけどな。でもあの二人が企むことだから」


 ……ヘタレだけど次期族長任されるだけあるわ、この人。


「……色々聞けてよかった。ありがとう、やっぱりサイナスさんは頭がいいね」

「そ、そうかい? 褒めても何も出ないよ?」


 褒められ慣れてない人はこれだから。

 族長らしくえらそーにしてろ。


「あたしも、ヤバそーな可能性を考えて動くことにするよ」


 ふと思いついたようにサイナスさんが言う。


「件の作戦で灰の民からも人員を派遣しなくちゃいけないんだ。適当な人がいなくてさ。ユーラシアに頼んでいいかな?」


 あたしも直近はギルドへ行かないことにしたから、どこで顔出せばいいのかタイミング計ってたんだよな。

 灰の民代表ならこっちから参加すればよくて、ギルドはそれこそ全部終わってから行けばいい。

 サイナスさんの申し出はあたしにとっても都合がいい。


「うん、どーんと任せて。代わりに情報入ったら教えて」

「了解、応援してるよ。灰の民ユーラシアの勇名が轟けば、他の集落からの圧力も減りそうだ。まったく何でカラーズはこんなに仲悪いんだか」


 またサイナスさんが悩ましげな顔になる。


「ま、こっちがダメならダメで、じっちゃんのところへ引っ越せばいいしね」

「なるべくそうならないようにしたいけど、灰の民に武闘派はいないからなあ。ゴリ押されるとキツいよ」


 わかる。


「あたしも期待されると困っちゃうけど、適当に頑張るよ」


 サイナスさんが意外そうに言う。


「あれ、君が弱気じゃ困るんだが」

「何で?」

「だってこの掃討戦で全容知ってる冒険者って、おそらくユーラシアだけだろう? 十分準備できるじゃないか」


 デビューして一ヶ月も経ってないペーペーには、実力と経験の問題が大きいんだが。


「具体的に何しておけばいいかな?」

「消耗品はたくさん用意しておきなよ。切らした連中に恩を売れる」

「おーなるほど」

「魔物は大して強くはない。だから中低レベルの冒険者でも計画を実行できるという判断になったんじゃないかな。でも状態異常攻撃を使ってくる魔物がいるから、対策はしていくべき」

「わかった」

「一体大型がいることが確認されている。人形系魔物のデカダンスだ。防御力無視系の攻撃じゃないとダメージ入らないし、氷系の全体攻撃魔法が苛烈だ。ただ敏捷性はなく、逃亡もしない。こいつだけは正直強いよ。中低レベルのパーティーが普通にやったんじゃ勝てないと思う」


 サイナスさんの分析は正確だからな。

 ここは乗っかる。


「普通じゃない方法だとどうすればいいかな?」

「氷耐性とダメージソースの確保は絶対の前提条件として、他の参加者から支援を得られればあるいは」


 自分らの力でどうにもできないならそんなもんだ。


「よーしわかった! やるだけやってくる!」

「その意気だ」


 サイナスさん家を後にし、道具屋へ。

 ヒットポイント回復薬のポーションとマジックポイント回復のマジックウォーターをありったけと、戦闘不能からの回復薬である蘇生薬を三つ、状態異常治療の万能薬を五つ買う。


「さあ、帰ろうか」


 転移の玉を起動して帰宅する。

 運命の掃討戦まであと三日。

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