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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第828話:妙な胸騒ぎ

 ――――――――――一五七日目。


 フイィィーンシュパパパッ。

 うちの子達及び聖火教のミスティさんとワッフーを連れてギルドへやって来た。


「やあ、おはよう、チャーミングなユーラシアさん。と、そちらは聖火教のミスティ大祭司?」

「そうそう。おっはよー、ポロックさん」

「おはようございます、ミスター・ポロック。こちらはハイプリーストのワフロスです。お見知りおきを」

「こちらこそよろしくお願いします。で、どういうことだい?」


 説明する。


「三日前にマウさんのクエストに連れていってもらったんだ」

「ああ。確か、もう結構な期間塩漬けになっていたというクエストだね?」

「うん。その転送先のエリアで、何十年前かにおそらくは聖火教の開拓者が崖崩れに巻き込まれて犠牲になっちゃったとこ見つけたんだ。ミスティさんに祈ってもらうと、魂達も安らぐかと思って」

「ああ、いいことだね。了解です」

「マウさんと待ち合わせしてるの。今から行ってくる」


 ポロックさんにも納得してもらえたようだ。

 ギルド内部へ。


「御主人!」


 食堂に入るやいなやヴィルが飛びついてくる。

 マウ爺に遊んでもらっていたか。

 よしよし、いい子だね。


「マウさん、おはよー。ミスティさんとハイプリーストのワッフーだよ。こちらは最年長の現役『アトラスの冒険者』マウさん」

「うむ、よろしく」

「こちらこそ。本日はお手数おかけして申し訳ありません」


 ワッフーがヴィルを見ながら言う。


「驚いた。悪魔が野放しなのか」

「野放しってゆーな」

「野放しぬよ?」

「やっぱ悪魔に拒否反応ある人もいるだろうから、どこでもってわけにはいかないんだけどね。ギルドは皆が可愛がってくれるんだ。ヴィルも好感情に浸れて気持ちいいみたい。なるべく呼ぶようにしてるの」


 あ、ヴィルがミスティさんに撫でられに行った。

 悪魔と相容れないはずの聖火教の、しかも大祭司に可愛がられる高位魔族ってむず痒い絵面だなあ。

 マウ爺も苦笑しとるわ。


「まいろうか」

「お願いしまーす」


 フレンドで転移の玉を起動、マウさんのホームへ。


          ◇


「これは美しいところですね!」

「絶景だ!」


 『奇妙なクエスト』の転送先に来た。

 高台から見下ろすと、森と湖がマジで綺麗なんだよな。

 ドーラは温暖ではあるがどちらかというと乾燥気味の土地柄なので、水をたっぷり湛えた湖の近くというのは貴重ではある。

 将来的には多くの人口を支えられる土地かもしれないな。


「ちょうどあっちの崖の真下に読めない石碑があってさ。その近くの斜面が問題の現場なんだ」

「わかりました。どこから降りられるでしょうか?」

「クララ、お願い」

「はい、フライ!」


 フワリと浮き上がり、崖下に着地する。


「見事な飛行魔法ですね」


 ミスティさんが感嘆する。

 うん、クララの飛行魔法は実に安定している。

 全く不安を感じさせない。

 レベルと練習の賜物だろう。


「……最近、パラキアス殿が飛行魔法で礼拝堂を訪れるのだ。彼は風魔法の心得はなかったはずなのだが?」

「ペペさんとパワーカードの工房が共同で面白いものを開発したんだよ」


 『遊歩』のカードを見せる。


「飛行魔法付与のパワーカードだよ。普通の『フライ』みたいに一〇人以上一度に運ぶとかはできなくて自分だけなんだけど、代わりに実質マジックポイントがいらないっていう優れもの。これをパラキアスさんも持ってるの」


 興味深げなミスティさんとワッフーついでにマウ爺。

 あれ、マウ爺も知らなかったのか。

 宣伝すりゃいいのに。


「こんなものがあるとは知らなかった」

「飛べるパワーカードがあると便利だなーって話をしたら作ってくれたんだ」

「最近のトピックスには全部精霊使いが関わってるんじゃないか」


 かもしれんけど、非難するような目で見るな。

 悪いことじゃないだろーが。

 尊敬しろ。


「レベル依存だけど、二〇あれば使えるって話だよ。ミスティさんなら余裕だし、ワッフーでも十分だな。試しに使ってみる?」

「はい、お願いします」


 『遊歩』を貸す。

 二人とも問題なく飛べるね。


「嬢よ。ワシにも貸してくれ」

「どーぞどーぞ」


 うむ、マウ爺も普通に飛べる。

 これレベル二五~三五くらいの人が一番使いやすいんじゃないかな?

 レベル五〇以上になると、初っ端のコントロールが結構怪しい。


「パワーカードはマジックアイテムと効果が干渉しやすいから、魔法の装備なんかと同時使用はしないでね。価格は二〇〇〇ゴールド。ドリフターズギルドの武器・防具屋で注文を受けてるから買えるよ。あたしが買って届けてもいいし。どうする?」

「いずれは何枚か欲しいですね。でも移民の家の建築で緊急に一枚入り用なのです。何とかなりませんか?」


 なるほど、いろんな用途で活躍できるな。


「じゃ、これ譲るよ。うちはクララがいるから」

「ありがとうございます!」


 ミスティさんとワッフー大喜びだ。

 さて、崖崩れの現場へ。


「ん?」


 何だろう、違和感あるな?

 碑も目印に置いた大石も、この前来た日のまま変わってないのに……。

 ミスティさんとワッフーが祭壇を組み立てる中、クララに話しかける。


「いつでも全員連れて『フライ』で飛べるよう、準備しといてくれる?」

「はい、わかりました」

「嬢よ、妙な胸騒ぎがせんか?」

「する。マウさんも警戒しててよ」

「うむ」


 百戦錬磨の冒険者であるマウ爺も何やらおかしいと感じるらしい。

 要注意だ。


「ヴィル、こっちおいで」


 ふよふよ飛んでるヴィルを呼び寄せる。


「何かぬ?」

「今の負力の状態はどうかな?」

「三日前よりもうんと弱いぬ。何言ってるかわからないぬが、ざわついてる気がするぬ」

「うん、ありがとうね」

「どういたしましてぬ!」


 ふむ、気にはなるが。

 ワッフーが大きな蝋燭に火を灯し、二人で聖歌を歌い始める。


「ヴィルは聖歌聞いても平気なの?」

「御主人の側なら平気ぬよ」

「よしよし、可愛いやつめ」


 ぎゅっとしてやる。

 と、右手の森から魔物が現れる!

 聖歌歌ってるんだからすっこんでりゃいいのに。


「トロル二体じゃ!」

「クララ、『フライ』!」

「はい、フライ!」


 全員の身体が浮き上がると同時にゴゴゴゴゴッという音が鳴り、土砂が崩れ落ちる。

 隣接部分で再びの崖崩れだ!

 トロルどもが土砂に飲み込まれる。

 妙な予感はこれだったか。

 トロルよ、安らかに眠れ。

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