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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第826話:おばけ怖い

 フイィィーンシュパパパッ。


「やあ、チャーミングなユーラシアさん。こんばんは」

「こんばんはー、ポロックさん」


 バエちゃんに明日お肉食べよと連絡してからギルドに来た。

 聖火教大祭司のミスティさんと連絡が取れたので、崖崩れ現場に連れていくことについてマウ爺と相談したいのだ。

 

「夕御飯を食べに来たのかい?」

「うん、御飯も重要な用件の一つだね。マウさんいるかな?」

「いるんじゃないかな。神経痛に悩んでない夜は、大体食堂で食べていかれるから」


 そーだったのか。

 神経痛って大変なんだな。

 もう神経痛は大丈夫なはずだから、毎晩いるってことかな?

 食堂へゴー。


「こんばんはー。あれえ?」

「御主人!」


 ヴィルはいつも通り飛びついてくるけれども。

 よしよし、あんたはいい子。

 マウさんとツインズ、ノブ君、ボニーがいる。

 まずは注文っと。


「マウさん、あれから神経痛の具合どーかな?」

「おう、一度も発作は来んな。実に快調じゃ」

「快調なんだぬ!」


 アハハ、バッチリだ。

 めでたしめでたし。


「えらく珍しいメンバーじゃない?」

「じいちゃんの話を聞いていたんだ!」

「おお、ノブ君元気だね」

「ハハハ。賑やかなのもええじゃろう。ヴィルの紹介はすませておいたぞ」

「ありがとうございまーす」

「ありがとうぬ!」


 ヴィルが皆に認知されたのは嬉しいね。

 もうヴィルはかなりギルドには馴染んでいるから、あたしがいなくても普通に出入りできるだろうけど。

 皆もマウさんの話ならためになるよ。

 マウ爺は正統派の冒険者だから。

 あたし?

 正統派美少女の話はどうだろう?


「ボニーはもうギルドまで来たんだ? 早いね」

「今日だ。来るなりおっぱいの大きなお姉さんに、ちょうどそこにいた双子とノブと話することを勧められたんだ」

「うん、よかったでしょ?」

「よかった!」


 だから『アトラスの冒険者』になることをウダウダ躊躇するより、とっととこっちの世界へ飛び込んできちゃった方がよかったのに。

 まー結果論ではあるか。

 ボニーは冒険者に向いてると思うけど、自分じゃ向き不向きなんてわかりづらいものだしな。


「早速明日から四人でクエストに挑んでみようかと」

「いいと思う。前衛が三人もいると、エオリアの『戦神の鼓舞』を効かせてタコ殴りにできるでしょ」


 『戦神の鼓舞』は味方全員の攻撃力と魔法力を少し上げるノーコストのバトルスキルだそーな。

 現在配られてる石板クエストなら全然問題なくクリアできるはず。


「クエストをクリアしたと思われる時は、そのクエストの持ち主の転移の玉で一旦全員が飛ぶのじゃ。さすれば全員にクリア時の経験値が入るでな」

「「「「はい!」」」」


 気をつけてないと忘れそうなところだ。

 さすがマウ爺、年の功。

 

「ノブの剛速球なキャラを見習いたい」

「今そんな話してなかったろーが。いや、ボニーはボニーで相当面白いから心配いらん」


 こら、ちょっと褒めたくらいで喜ぶな。

 この芸人冒険者が。

 あ、御飯来た。


「いただきまーす!」


 マウ爺が聞いてくる。


「嬢はどう思う?」

「ギルドの御飯は最高だねえ。おいしいし安いし量もあるし」

「そうでなくてじゃな」


 笑うマウ爺。

 何のことだったろ?


「この四人がパーティーを組むとするとじゃな」

「前衛が三人いるなら、ツインズ妹の支援スキルの効果がかなり大きいよ。ゴリゴリ押していくだけでいいと思う」

「ふむ、注意すべきは?」

「ボニーがいるがゆえに、レベルで魔物を舐めちゃったり、逆に怖がっちゃったりすることかなあ」


 マウ爺が頷く中、ボニーが聞いてくる。


「どういうことだ?」

「知らない魔物に対してレベルで判断するのは有効だと思う。でもレベルが低くても状態異常に警戒しなきゃいけないやつはいるよ。逆に人形系レア魔物なんか、ボニーにはすげー高いレベルに見えるだろうけど、倒さないと意味がない」

「『経穴砕き』で倒せということですね?」

「そうそう」


 ツインズには教えてたっけな。

 人形系レア魔物ハントは冒険者の醍醐味だから。


「経験や知識が重要ということじゃな」

「……ということは、私の固有能力はあまり意味がない?」

「そんなことはないなー。有益な情報の一つだよ。見慣れた魔物に似たやつが出ました、しかしボニーが異常なレベルを感知しました。明らかに注意すべきでしょ?」


 全員が頷く。

 一つの情報源を信用し過ぎるなってことだよ。

 中級冒険者くらいになれば相手の強さなんか大体把握できるもの。

 だけどボニーの『サーチャー』から得られる情報と乖離するなら要注意なのだ。


「嬢は何か用があって来たのか?」

「あ、そーだ。ミスティさんと連絡取れたんだ。マウさんの明日朝の都合はどお?」

「構わぬぞ。明朝、ギルドで待っておればよいな?」

「はい、お願いしまーす」

「お姉ちゃん、何だ?」


 ノブ君は遠慮がないなー。


「オカルトな話だよ。夜トイレに行くのが怖くなっちゃうぞ。いいかな?」


 よくなさそーな子もいるけど、気にせず話す。


「ミスティ殿の御両親の率いる移民団じゃったか……」

「おそらく間違いないってことだったよ」


 やりきれない事故ではある。

 しかしドーラはどこもかしこもフロンティアだらけなのだ。

 我々は輝かしい未来のために、前を向いて進まねばならない。


「おばけかあ」

「おばけだあ」

「おばけだぬ!」


 アハハと笑い合う。


「明日、鎮魂の儀式を行うということですか?」

「現地へ連れていけってことは、そゆことなんだと思う」

「住めないところなのか?」

「うーん、生息してる魔物が魔境並みの強さなんだよね。頑張れば住めるようにできるけど、あそこを開発するくらいなら、クー川の左岸とか中流域を何とかするのが先だな」


 単純に効率の問題ではある。

 でもアルハーン平原はその平地の広さから、将来ドーラの中心地域になるだろう。

 となればどんどん東へフロンティアを前進させていくのがトレンドになるんじゃないかな。


「どうしたの、ボニー。何かこの話題になってから喋んなくなっちゃったけど?」

「おばけ怖い」

「何なんだよあんたは! おばけに遭えたら話のネタにできるぞ? 出くわした時のリアクションでウケ加減が変わっちゃうから、前もって研究しといたら?」

「……」

「真面目に検討するんじゃねー!」


 笑い声とともに夜が更けてゆく。

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