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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第825話:クソガキホイホイ

「こんにちはー」

「あっ、精霊使いの人!」


 インウェンの絵を版画屋に持ってったあと、赤眼族の村にやって来た。

 様子を見がてらお宝ダイコンの種を届けに来ただけなので、今日は一人だ。


「三日ぶりか? どうしてたんだ?」

「何で心配されてる方が聞いちゃうのよ? 新しい芸風かな?」


 アハハと笑い合う。


「ダイコンかい?」

「うん。うちの畑で採れたやつ。ちょっとしかないけど食べてよ。それからダイコンの種は多めに持ってきたんだ。村長さんいるかな?」

「おい、ユーラシア」


 最初会った時槍を向けてきた、なかなか生意気なあの子だ。

 村長の息子で、名前は確か……。


「ミサイル?」

「ミハイルだ!」

「惜しいなー。まだあたしが名前覚えられるレベルじゃなかったか。努力するんだよ?」

「おう!」


 ハハッ、素直だなー。

 あ、村長も来た。


「こんにちはー」

「やあ、この前はすまなかったな」

「いいっていいって。ところでこの前の分のお肉で、どれくらい食い繋げそう?」

「一ヶ月ってとこか」


 うんうん、大体予想通り。

 

「これ使って。ダイコンの種だよ」

「ダイコン?」

「ちょっと変わった特性があるんだ。四季蒔きで成長が早く、葉っぱ食べるんだったら一〇日で収穫、根っこがあたしが持ってきたやつくらいになるまでに二〇日くらい、再び種が取れるまでに二ヶ月ってサイクルだよ」

「ほう! すぐ収穫できるのはありがたい」

「特急で育つ代わりに、土から栄養分吸う力が強いんだ。肥料はたくさん必要だから注意してね」

「わかった」


 喜ぶ村長と村人達。

 お宝ダイコンを主要作物にしてしまうと肥料が大変だけど、今みたいにあっちもこっちも食べもの足りないって時は大活躍だ。


「赤眼族の集落で取れる作物とか、年を通した農作業のパターンがわかんないんだよね。春に植えるやつとかは大丈夫なの?」

「作付け面積が最も多かったのは小麦、次いでトウモロコシなのだ」

「ふんふん、穀物ってことだね? あたし達と変わらんな」

「幸い春蒔き春植えの種等は被害を免れた」

「深刻なのは秋植えのやつだぜ。ダイコンもそうだが、小麦、ハクサイ、アブラナ、ホウレンソウ、ルッコラ等がほぼ全滅だ」

「ってことは、むしろ次の冬が厳しいな」


 ルッコラって知らん子だ。

 夏野菜でも知らないものは多いかもな。


「いや、保存の利く作物を多くすれば、飢えることはない」


 村長はそう言うが大丈夫かな?

 全滅してる作物が多くて家畜もかなり食い潰しちゃってるんじゃ、今年は相当苦しいと思うけど。


「ごめんね。あたし達はあたし達で、赤眼族とは違った理由で食料が足りないんだ。農産物についてはあんまり協力できないかもしれないけど」

「何? どういうことだ?」


 一ヶ月ちょっと前にカル帝国から独立。

 大勢の移民がやって来ることと、帝国の出国税の関係で鬼畜の所業になったことを話す。


「ふむ、カル帝国の存在は我々にも伝えられていたが」

「マジかよ。保存食もなしで放りだすってひでえな。人間の所業じゃねえぞ」

「許せない!」

「君はそんな中で我々に助力してくれるのか」

「何言ってるの。あんたらの状況の方が逼迫してるんだぞ?」


 自分らの現状を思い黙る三人。


「あたし達の方は皆で頑張れば多分どうにかなるけど、あんたらは自力だけじゃどーもならんのだから」

「「「……」」」

「あたしが協力するから心配いらんとゆーのに。冬でも育つ作物に、もう一つ心当たりがあるよ」

「そちらの社会にあまり迷惑をかけるわけには……」


 村長がためらいがちに言う。

 言いたいことはわかるけど、『アトラスの冒険者』のクエストでもあるしな。

 けりがつくまで見守るのは義務みたいなもん。


「作物って言うのはおかしいのかも。いや、これ全然迷惑かかんないやつなんだ。野生の植物だから」

「野生?」

「魔境に生えてるクレソン。辛味が少なくて食べやすいの。サラダ以外に炒めてもスープでもイケるよ。冬でも育つから有用だってことに気がついて、今あちこちに植えて広めてるところなんだ。水辺ならいくらでも増えるから、今度魔境行った時に取って来るよ」


 ミサイルが驚く。


「魔境って、ドラゴンとかサイクロプスがいる魔境か?」

「よく知ってるね。大体一般の人の認識だと、ドラゴンがいるところっていう感じかな」


 他所と交流がないのに、帝国や魔境について知ってるんだなあ。


「魔境に素材が多いことはよく知られてるけど、植物もいろんなやつが生えてるんだよね。いいところだよ。あたし好きなんだ」

「あ、危ないんじゃないのか?」

「まあそれなりに魔物は強いよ。あたしも同行者がいる時は、ただのドラゴンだからって舐めちゃダメだよって注意するもん」

「何だよ、ただのドラゴンって?」

「聞いたことのない表現だな」


 村人が呆れる。

 ただのドラゴンとは、レッドドラゴンとかアイスドラゴンとかサンダードラゴンのことです。


「でもあたし達はドーラ最強のパーティーだから、問題ないなー」


 『魔境の女』って言われてるくらいだしな。


「そのクレソンを取りに魔境へ行くんだな?」

「近い内に行ってくるよ。期待してて」

「俺も連れていってくれ!」

「え?」


 初対面の時の槍捌きはなかなかだった。

 ミサイルは武芸の筋がいいし、ビビって大騒ぎするような子でもない。

 特に魔境連れてっても問題はない気がするな。

 

「よし。じゃあ誇りある戦士として誓いなさい。あたしの言うことを聞くと」

「誓う! 言うこと聞く!」

「村長さん、いいかな?」


 苦笑する村長さん。


「こうなったミハイルは止められませんので。よろしくお願いします」

「よーし、許可もらったから今度行こうか。ダメな日ある?」

「ないぞ!」

「天気にもよるけど、二、三日中に迎えに来ると思ってて。あたし達の使ってる帰還用の転移装置は四人までしか使えないんだ。つまりあんたを連れていくためには、あたしの仲間の冒険者の協力を仰がなきゃいけない。いいね?」

「いいぞ!」


 誰かソロの冒険者をギルドで捕まえられれば、特に問題はないな。

 でもいつの間にかミサイルはよく懐いたもんだなあ。

 あたしいつかクソガキホイホイって言われそう。

 二つ名としてどうだろう?


「今日は帰るね。じゃ、楽しみにしてなさい」

「おう!」


 三人に見送られ、転移の玉を起動し帰宅する。

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