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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第82話:第一の精霊使い

「呆れたもんじゃ。全部知っとるんじゃないか」


 デス爺ったらマジで呆れた顔すんな。

 あたしは冒険者としてごく当たり前の情報収集をしてるだけだぞ?

 胡散臭そーな目で見られるのは心外なんだが。


 一方パラキアスさんはあたしを適正に評価してくれてるようだ。


「驚きの行動力、情報収集力ですよ。ほこら守りの村というのは、土地神が消滅して霊が荒れてたところだろう? つまり『アトラスの冒険者』のクエストでほこら守りの村へ飛び、あの霊を宥めてくれたのが君か?」

「そうそう」

「三日前のレイノス精霊様騒動も?」

「うん」


 おいおい、どんだけ事情に通じてるんだよ。

 両方ともここ六日以内の話だぞ?

 パラキアスさんこそ情報収集力おかしくない?


「精霊様騒動? また何かやらかしたか?」

「じっちゃん、またってどーゆーことよ?」


 あたしがいつも何か問題起こしてるみたいじゃないか。

 心当たりは……一つもないとは言わないけれども。

 パラキアスさんが笑う。


「いやデス殿、精霊を持ち上げ上級市民をへこます痛快極まる話でしてな。ああ、オルムスが憮然としていたよ。精霊使いに許可は出したけど、精霊様にお墨付きを与えた記憶はない、とね」


 おお、言われて初めて気がついたわ。

 『アトラスの冒険者』であるあたしにはともかく、レイノス副市長が精霊に便宜を図る理由がないもんな。

 そしてパラキアスさんはレイノス副市長オルムス・ヤンと懇意なのか。

 デス爺ともだけど、当たり前みたいに有力者同士って繋がってるんだな。


「ところでお主、他の冒険者にはこの話してないじゃろうな?」

「あ、ごめん、女の子二人に話しちゃった」

「何故じゃ!」


 いやまあ、アンセリに話したのはあんまりいいことじゃなかったと反省はしている。

 ただ仕方なかったのだ。

 弁解しとこ。


「賢い子達でさあ、お喋りしてるうちに言葉尻から『大掃除』に感付かれちゃったんだ。ぶっちゃけたのは、じっちゃんやパラキアスさんがあたしに話してくれたのと同じ理由だよ。聞きかじり知識からあちこちでこの話されたら、計画自体がパーになるかもしれないじゃん。だからその時あたしの知ってたことは全部話して、代わりパーティーリーダー以外には口外厳禁って言っといた」

「……まあ、リカバリーとしては最善でしょうな」


 パラキアスさんが苦笑し、デス爺も不承不承ながら頷く。


「クー川下流域は、知られている中ではドーラ大陸最大の平野じゃ。今後のドーラの発展を視野に入れると、いつかは必ずノーマル人居住域に繰り入れなければならない地域じゃった」

「だから今回の魔物掃討計画が立案されたんだ」

「ふーん。何で今なん?」


 ドーラはそんなに人口が多くない。

 帝国からの移民も近年はほぼ止まってるって話だけどな?

 土地がなくて困ってるなんて話は聞いたことないのに。


「いつかはやらなければならないことだからだな」


 あれ、パラキアスさん誤魔化したぞ?

 今じゃなきゃいけない理由があるらしい。

 でもあたしも目の前の掃討戦に全力で臨まないといけないしな。

 より掘り下げたことを考えるのはちょっと。


 デス爺が魔物掃討計画についての話を進める。


「高レベルの冒険者の手配がつかない故、弱い魔物を根絶やしにしてくれれば大型は残しても仕方ない。あとで高レベル冒険者に駆除依頼すればよいと考えていたんじゃ」

「秘密に進めたんじゃ、誰もロクに準備すらできないだろうからね。でも事情を知っている精霊使い君は別だ。ボスは君が責任持って仕留めてくれ」

「えーと、できるだけ頑張りまーす」


 高レベル冒険者じゃなきゃ倒せないような魔物をどうしろってゆーんだ。

 『経穴砕き』のスキルがあればどうにかなるのか?

 でもパラキアスさん、あたしの呼び名が『お嬢さん』から『君』になってるしな。

 ここは期待されてると思っておこう。


「そうじゃ、この掃討戦が終わったらワシは西へ移住するというのは知っとったか?」

「ちょっと前、コモさんに聞いたけど」

「もうコモをリーダーに、ほとんどの移住メンバーは先発しとる。残ってるのはワシとコケシだけじゃ」

「何でじっちゃんとコケシが残ってるの?」

「回復魔法を使えるでな。掃討戦でケガ人が出るのに備えてじゃ」


 なるほど、もっともなことだったわ。

 コケシは詰草の精霊だ。

 うちのクララもそうだが、一般に植物系の精霊は白魔法や回復術を得意とする者が多い。


「そもそもどうして移住なの? じっちゃんがいなくなると、カラーズの他の村からの圧迫が強くなるよ。灰の民の村が大変だと思うけど」


 パラキアスさんが説明する。


「ドーラ大陸におけるノーマル人社会の発展のためには、居住拠点の増加と資源の安定供給が必要なのさ。デス殿の考えも同様だろう」

「ドーラの今後を見据えてか」


 あたしの好きな考え方だなあ。

 ドーラの幸せ皆の幸せ。


「灰の民の村のことはサイナスの手腕に任せる。サイナスは掃討戦のことを知っておるでな。細かい打ち合わせが必要ならそちらでせよ」

「わかった、サイナスさんとこ行ってみる。じゃあじっちゃん、パラキアスさん、さようなら」


 デス爺の小屋を出て、ぐいーっと伸びをする。

 サイナスさんとこにも顔出してくるか。

 賢いことは賢いけど、どーも頼りなくて族長ってタイプじゃないんだけどなー。サイナスさんは。


          ◇


 小屋に残った二人は話を続ける。


「彼女が『第一の精霊使い』ですか。あの歳で精霊三人連れ、おまけにカンも運もいい。バイタリティもある。なかなかに興味をそそられますな。彼女もまた、デス殿の計画の候補者でしたか?」


 老人がためらいがちに首を振る。


「うむ……いや、元々ユーラシアがいたから思いついた移住計画ではあった。しかし考えてみれば、あやつは命令した通りに動く性格ではないでな。早期に候補から外したのじゃ」

「なるほど、やはり野におけ、と言うことですか。しかし彼女の精霊親和性は稀有の才能ではないですか? パーティーバランスも申し分なかった」

「ほう、ユーラシアとは初対面なのに随分買ってくれるんじゃな、パラキアス殿は。精霊との相性は、確かに灰の民の中でもピカ一ではあるが」


 浅黒い肌の壮年の男は、先を見通すような目を細めて言う。


「才能ある若者は宝石よりも貴重です。今日はいい出会いでしたよ」

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