第818話:玩具だぜ玩具
「イシュトバーンさん、インウェン、御苦労様」
「おう、どうすんだ? 盛り上がり過ぎて収まらねえぞ?」
あんまり刺激のないカラーズに、イシュトバーンさんの生絵は刺激的過ぎたか。
刺激ないことあるか!
この前ブラックデモンズドラゴン倒すとこ見せたったわ!
でもメッチャ沸騰してるな。
仕方ない、販促にもなることだし。
「レディースアンドジェントルメーン! 紹介するよ! いい女しか描こうとしない絵師イシュトバーンさんと、モデルの黄の民輸送隊副隊長インウェン! 拍手!」
「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」
「本日皆様には、緑の民のショップで売ってる美人画ポスターの、新作を描いてる過程の現場を見ていただきました。どうだった?」
「いやあ、すげえよ!」
「お団子ちゃんがセクシーでよ、見比べちゃったぜ」
「もう、これもんがあれもんで……」
たくさんの声がかかる。
ハハッ、何言ってるかわかんない人もいるけど。
「数日中には今日の絵もショップに並ぶからよろしくね。さらに皆さんにお知らせがあります!」
お、静まったな。
「モデル二〇人を集めた画集を出します! 定価何と六〇ゴールド」
「六〇ゴールド?」
「メチャクチャ安いな」
「基本的に緑の民のショップで売ってるポスターの集大成になるけど、画集にはショップで売らない絵も収録されるよ。逆にショップで売ってても画集に入らない絵もあるからね」
ポスターは壁に貼って眺めるんだろうし、画集とは扱い違うんだろうけどな。
「ちなみに画集に収録されるけどポスター販売しないシークレットの内の一枚は、緑の民の村の版画屋さんに飾ってあるよ。興味ある人はそちらへどーぞ」
かなり興味ありそうですね。
おっぱいさんの上目遣いにやられてしまうといいよ。
「以上、お知らせ終わり! 集まってくれてありがとう! 画集もよろしく!」
「「「「「「「「パチパチパチパチパチパチパチパチ!」」」」」」」」
「おーい、精霊使いさんよ、あんたの絵はあるのかい?」
「画集の表紙になるよ。買ってちょうだい!」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
喧騒も徐々に静まり、皆がめいめいに散っていく。
「インウェン、いきなりでごめんね。これお礼だよ」
「まあ、すみません」
透輝珠を渡す。
「おかげで画集のいい宣伝になったよ。ありがとう」
「オレも満足だぜ。傑作になるから、お団子ちゃんもあのモヒカンに一枚ポスターをプレゼントしてやるといいぜ」
「フェイさんも欲しがるんじゃないかな」
「そ、そうでしょうか?」
赤くなった。
インウェン可愛いよインウェン。
「じゃあ、また今度ね」
「はい、また」
インウェンと別れ、うちの子達アレクケスハヤテイシュトバーンさんヘリオスさん他一名とともに緑の民の村へ。
◇
「あれ? 師匠。大勢ですね」
「ラルフ君、ヒルデちゃん、こんにちはー」
緑の民の村に入るなり、デート現場にバッタリ。
玩具にしろとの、神様の声が聞こえた気がする。
「おいラルフ、その娘が嫁か?」
「老い先短いジジイはせっかちで困るねえ。将来の嫁だよ」
赤くなるラルフ君とヒルデちゃんを前に、ヘリオスさんに説明した。
「ほう、ヨハン殿の息子と緑の民の次期族長。これは失礼を」
「いえ、こちらこそ」
ラルフ君はヘリオスさんを知ってたみたいだ。
「で、皆さんはどちらへ?」
「あたしは版画屋さんに用があるんだ。ヘリオスさんは緑の民の作る紙に興味があるみたいなんだよ。あとでそっち見に行くの」
「自分達もお供してよろしいでしょうか?」
チラッとイシュトバーンさんと視線を交わす。
どういうことだろ? 大方デートも行けるとこ行き尽くしたんだぜ。話題がないってことか。おそらくな。じゃあ連れていこう。玩具だぜ玩具。
一瞬で意思疎通する。
イシュトバーンさんもダンと同じ、この能力の持ち主だったか。
「じゃ、一緒に行こうか」
「「はい!」」
皆で版画屋へ。
「こんにちはー」
「おお、精霊使い御一行さんかい」
「こちら天才美人画絵師のイシュトバーンさんだよ」
版画屋さんが頭を下げる。
「ポスターの売れ行きがなかなか好調でして、一度お会いしたいと思ってたんですよ」
「おう、今後もよろしくな」
握手。
「で、こちらがレイノスで紙を商っているヘリオスさん。緑の民の作る紙が見たいんだって」
「紙の方か。案内してやるぜ」
「店は留守でいいの?」
「ハハッ、かまやしねえさ」
いいのかなー?
ついさっき、シークレットの一枚は版画屋さんに飾ってあるって言っちゃったからなー。
まあいいや、後々面白くなるだけだ。
「先にお願い」
「原画かい? おお、エルマじゃねえか。こりゃ可愛い……エロ可愛い……エロいな?」
版画屋さんが本気で首を傾げるほどの謎絵だ。
うむ実によくわかる。
ムダに謎な部分がある以上、イシュトバーンさんの画集は絶対に売れてしまう。
「版にしといてね。はい、二〇〇ゴールド」
「わかった。これはポスター販売ありでいいんだな?」
「うん」
あとは札取りゲームの件だな。
「札取りゲーム、木札が完成し次第、追加で印刷頼みたいんだけど」
「景気がいいねえ。前と同じ六〇〇セットか?」
「うーん。一〇〇〇セットに増量したらサービスしてくれる?」
「世話になってるからな。一セット二ゴールド、一〇〇〇セットで二〇〇〇ゴールド、一割まけて一八〇〇ゴールドでどうだ?」
「ありがとう。払ってく」
「金払いの良さは精霊使いのいいところだぜ」
「金払いの良さだけしかいいところがないみたいにゆーな! 他にもたくさんいいところはあるだろうが。女っぷりとかギャグセンスとか」
全員が笑う。
……ヒルデちゃんの笑顔可愛いな。
「木札はこの前の子達が持ってくるからね。まず半量の五〇〇が五、六日後だと思う」
「おう、わかった」
版画屋さんがアレク、ケス、ハヤテを見て頷く。
「じゃ紙の方、行くか」
「お願いしまーす」
「ユー姉、ボク達は帰るよ。店が心配だ」
「サイナスさんを甘やかし過ぎじゃない?」
「サイナスさんじゃなくて、札取りゲームの予約注文が入るかもしれないから」
「おおう、なるほど」
アレクケスハヤテもしっかり商売人になってきたじゃないか。
三人と別れ、版画屋さんに案内されて出発。
さて、ヘリオスさんが緑の民の紙をどう思うかな?




