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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第817話:絵師が天才だから

 イシュトバーンさんがインウェンの寝姿の絵を描き始めた。

 すぐに黒フードの男が話しかけてくる。


「おい、精霊使い。これ何だ? どうせあんたが絡んでるんだろ?」

「何でわかっちゃうのかなー。最近、緑の民のショップで美人絵ポスター売ってるの知ってる?」

「おう、あの色っぽいやつだな?」

「そうそう。あれの新作だよ」

「なるほど……。お団子の姉ちゃん、美人ではあるが、色気が足んなくねえか?」


 周りで聞いてる連中も頷いてる。

 あたしも言いたいことはわかる。

 でもだからこそイシュトバーンさんは布団を持ってきたんだと思うぞ?


「でも絵師が天才だからなー。書き上がる頃には色気が足んないとか言えなくなっちゃうと思うぞ?」

「へえ?」


 半信半疑ですね?

 クララやエルマの絵であんなにえっちな仕上がりになるんだぞ?

 インウェン&布団なんかすごいことになっちゃうぞ?


「イシュトバーンさんが描き終わったら、緑の民の村行こうか」

「うむ、お任せする」

「大体三〇分くらいだと思う。その前に赤の民の村行かない? ヘリオスさんもきっと興味持ちそうなものがあるんだよ」

「ほう、面白そうですな。まいりましょう」


 アレク達に言う。


「あんた達も行く?」

「例のやつ?」

「例のやつ」

「「「行く!」」」


 ヘリオスさんが首をかしげる。


「例のやつとは?」

「『光る石』のスタンドだよ」

「!」


 あれ? 驚きの中にも納得が見える表情やないけ

 やるね、これだけでピンときたらしい。

 本を商売にするくらいの人は、やっぱ夜も本を読みたいと思うものなのかしらん?

 うちのクララも『光る石』スタンドにはメッチャ食いついてきたしな。


「イシュトバーンさん。描き終わる頃までには帰るね」

「おう、行ってこい」


 三〇分しかないからな。

 クララの『フライ』で、赤の民の村陶器工房へ。


「こんにちはー」

「あっ、精霊使いか!」


 あれ、職人さん慌ててるけど?


「どーしたの? 浮気しててもあたしは奥さんに告げ口したりはしないぞ? ちょっと安くしてって交渉するかもしれないけど」

「誰が浮気だ! かみさんのいるところで根も葉もない話するんじゃねえ!」


 ハハッ、冗談だとゆーのに。


「頼まれてた塩の装置、引渡し明日って言ってなかったか?」

「あ、ごめん。別口の仕事頼みに来たんだ」

「何だよ、ビックリしたぜ」


 悪いことしちゃったな。


「別口というと、『光る石』スタンドの方か?」

「うん。小石はこれ全部使うとちょうどいいくらい。広口のコップくらいのサイズで、真ん中に窪みつけて……」


 まあこの前試作品作ってるから、大雑把な説明でも大体わかってもらえる。

 デザイン自体も単純で、『光る石』が乗っかればいいだけだからな。


「これも試作品ってことだな? 了解だ。一五〇ゴールドでどうだい?」

「お願いしまーす。試作品二号の結果が良ければ、同じタイプで二〇個くらいまとめて作ってもらいたいんだ。とすると一個あたりいくらになる?」

「二〇個なら、一個あたり五〇ゴールドでいいぜ」

「安いなあ。いいの?」

「一番調達の難しい石を持込みじゃねえか」


 借り作るみたいで気持ち悪いな。

 まず一五〇ゴールド払っておく。

 ヘリオスさんが興味ありげな顔で聞いてくる。


「これは『光る石』を乗せると、手を触れていなくとも光り続ける台、という認識でよろしいですかな?」

「よろしいよ」

「いかなる理屈で?」


 身を乗り出してきますね?

 ヘリオスさんは圧迫感があるなあ。


「この小石が黒妖石という、魔力を溜めておける特殊な石なんだよ。転移石碑にも使われてるやつ」

「ほう、魔力を溜めておくことができる……」

「純粋なものに比べて容量は落ちるんだけど、黒妖石の大きな塊じゃなくても小石を粘土で固めてやれば同じ効果があるんだ。そーやって作ったスタンドに魔力を注ぎ込み、『光る石』を置いとくと、手で持たなくても明るく輝かせることができるの。今日のこれくらい小石の量を使用した試作品だと、抵抗があるまで魔力を注ぎ込めば大体六~七時間くらい光量が持つんじゃないかなって考えてるんだ」

「なるほど、便利ですな! これも販売するおつもりで?」

「いや、さすがに商売になるほど材料が集まらないなー。皆が欲しがるんで、いくつか作っといて贈答品にしようかと思ってるんだ。ヘリオスさんにも一つあげるね」

「ありがたいですな!」


 喜んでもらえるのは重畳。

 ヘリオスさんの機嫌取っといて悪いことないしな。


「精霊使いよ。製塩用の海水転移させる装置の塗料乾いてる。もう完成してるわ。何度も来てもらうの悪いから、持っていってくれよ」

「そお? 急がしちゃったみたいで悪かったね」

「いいんだぜ。精霊使い御用達の工房ってことで、うちも注文増えてるんだ」

「そりゃ良かったねえ」


 海水の転移吸入口と受け手側のビーコンを受け取る。

 これで海水の転移までは自動でできそうだな。

 煮詰めるところを自動化するのはまだわかんないことあるが、塩の生産も始められるか?

 いや、でも開拓地に水路を通す方が先なんだよなあ。

 やっぱ当面は、海の王国に塩売ってもらうことにしよ。


「これは何の装置ですかな?」

「海水を転移させてくるものだよ。塩を作るのに利用するんだ」

「ははあ、いろんなことに使えるんですな」


 まったくだ。

 他にも利用法は山ほどあるだろう。


「じゃ、また来るね」

「おう、今日の注文の『光る石』スタンドの試作品は、四日後には完成だぞ」

「わかった、お願いしまーす!」


 クララの『フライ』で緩衝地帯へ戻る。


          ◇


「うん、まあわかってたけど」

「な、何事ですかな?」

「イシュトバーンさんが絵描いてると、大体こんなんなっちゃうの」

「これほどとは……」


 鳴り止まぬ画伯コールとお団子ちゃんコール。

 インウェンすげえ恥ずかしそうだが、イシュトバーンさんは当然ノリノリだ。


「よし、できたぜ。お団子ちゃん、ありがとうな」

「は、はい。こちらこそありがとうございます」

「「「「「画伯! 画伯! 画伯!」」」」」

「お団子ちゃん、可愛いよ!」


 ヘリオスさんが呟く。


「需要を見誤ったか?」

「ポスターとしてバラ売りして初めて気付いたんだけど、割と女の子も買っていくんだよね。画集としてはドーラで五〇〇〇部、輸出分含めて一〇万部目標でいくつもりだよ」


 もっと売れちゃう気もするけどね。

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