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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第815話:交渉終了

 今度は札取りゲームの紹介だ。

 ナップザックから取り出す。


「こういうゲームだよ」

「なるほど。絵と言葉が対応しているから、何の絵かさえわかれば字の形も覚えられると」

「秀逸だと思うのですよ。字の上下もわかりやすいですし。誰かが遊んでいるのを見るだけでやり方が覚えられる」

「これ、あんたが考えたのか?」

「原案って意味ならまあそう。でもあたしは思いつきを喋っただけだよ。形にしたのはアレクとケスと、もう一人ハヤテっていう精霊。結構やる子達なんだ」


 ヨハンさんには以前見せたから知ってるけど、ヘリオスさんとイシュトバーンさんは初めてだからな。

 興味深そうにしている。


「面白えな。これ、予備ないか?」

「あるよ。一個あげる。ヨハンさんとヘリオスさんもどーぞ」

「やあ、すみませんな」

「ありがとうございます」


 影響力のありそうなところにはバラ撒いておかねば。

 とにかくドーラの識字率を上げないと話にならん。

 いつまでもドーラ黎明期と同じような自給自足でいいって考え方してるのは大間違いだわ。

 どうやったって欲しいものを手に入れやすい、豊かな国になる気がしないもん。

 交易を活発にするためには、まず読み書き計算が必要なのだ。


「しかし……案外売るの難しくねえか」


 イシュトバーンさんは実演しないと売るの難しいことわかってるな。

 逆に言えば、こういうものがあるって知られさえするなら爆発的に売れるんじゃないか?

 もっとも仕組みは簡単だから、いずれ類似品が出ちゃうだろうけど。


「一昨日からカラーズで先行販売してるんだ。九〇セットだけだけど。多分今日には完売するな」

「ほお。実演して見せたのか?」

「テスト版で遊ばせたことのある子供達がいてさ。その子達が買いに来たから、捕まえてすぐに実演させたみたいだよ」

「ほう」


 ヘリオスさんが言う。


「これはいい。私のところでも販売したいですな」

「嬉しいなあ。レイノス以西での販売分はヨハンさんの管轄だから、ヨハンさんと交渉お願いするね」


 まあヘリオスさんとこにも販売委託ってことになるんだろう。

 取扱量増えれば、卸しのヨハンさん儲かるしな。


「ところで『精霊使いユーラシアのサーガ』の件だけど……」


 ヘリオスさんの顔色が変わる。

 もちろんバレてるとゆーのに。


「おい、何だそれ? 聞いてねえぞ?」

「ダンが『精霊使いユーラシアのサーガ』の執筆依頼をヘリオスさんから請けてたんだよ。あたしが生きてることわかったんでタイトルどうしようって相談されたから、『生ける伝説』ってつけとけばよくない? ってアドバイスしたんだけど」

「ははあ、ヘリオスよ。精霊使いの生存がわかって、慌ててキャンセルしたんだな?」

「おわかりになりますか」


 なかなか潔い。

 イシュトバーンさんが例のえっちな目でこちらを見る。


「あんた、何でこの話を今持ち出したんだ?」

「ん? いや別に」

「脅しかけるってことじゃねえんだ?」

「あたしを何だと思ってるんだ。純情可憐かつ謹厳実直なユーラシアさんは、そんなことしないんだぞ?」

「しないんだぬ!」


 ヴィル以外のうちの子達はまるで信じてない顔なんだが。

 いや、本当に脅すつもりなんかないとゆーのに。


「……要するに画集にしても札取りゲームにしても、ヘリオスがかなりのやる気見せてるから、『精霊使いユーラシアのサーガ』の件については不問にするってことか?」

「合ってるけれども、わざわざ言わなくてもいいじゃん」


 無粋だろうが。

 いずれあたしの伝説が完結した時に『精霊使いユーラシアのサーガ』を出版してもらいたいってのは、偽らざる本音であるし。


「ヘリオスさんはどうしてダンを知ったのか。ヘリオスさんと『オーランファーム』は、何か繋がりがあるのかなーと思ったんだよね」


 ダンはレイノスに農作物を納めてる『オーランファーム』の跡取りだ。

 農場と紙屋って、あんまり関係がないような気がするもんな。

 何か他の理由で知り合ったのだろうか?


「『オーランファーム』は、カトマス~レイノス間の輸送を行っておりますのでな。その関係でダナリウス君のことも存じていたのですよ」

「カトマス~レイノス間の輸送かー」


 ダンの姉夫婦が輸送業やってるって言ってたな。

 紙屋のヘリオスさんが西から仕入れるものって何だ?

 あれか、ザバンのサトウキビの搾りカスから作る新聞の紙。

 ふむふむ、関係は理解した。


「何考えてるんだ? 良からぬことか?」

「違うってばよ。いや、新聞の紙なんてきちんきちんと届かないと困るじゃん? ヘリオスさんが新聞の紙の輸送に『オーランファーム』使ってるんだったら、かなり信頼できる輸送業者なんだなーって思ったんだ。優秀な業者は覚えておかないと」

「せ、精霊使い殿。何故私が新聞の紙輸送に『オーランファーム』を使っていると……」

「あ、言っちゃった。ごめんなさい」


 イシュトバーンさんが笑う。


「ハハッ、ヘリオスよ諦めろ。こいつのカンは尋常じゃねえからな。言葉の端々からいろんなことに気付くんだぜ」


 もーヘリオスさん恐縮してるし、ヨハンさん苦笑してるじゃないか。

 用終わったし、とっとと終わろう。


「今日の用はお終いかな?」

「おい、つれねえじゃねえか。さっさと帰ろうとすんな」

「今からカラーズ行くんだよ。あ、今日インウェンいるはずだな。イシュトバーンさんも行く?」

「お団子ちゃんの絵を今からってことか? 約束してねえんだろ?」

「してないけどインウェンの場合、約束なしの方がいいと思わない?」

「おう、面白えな! よし、連れてけ」


 インウェンは優等生キャラなので、ちょっと想定外の目に遭わせたった方が愉快だろ。

 イシュトバーンさんは、インタレスティングな話には必ず乗ってくるなあ。


「じゃあヨハンさん、ヘリオスさん。よろしくお願いしまーす。緑の民の村にも寄るけど、ヘリオスさんも一緒に行く?」

「よろしいのですかな? ではお願いします」


 ヘリオスさんも大変ノリがよろしい。

 ヨハンさんが言う。


「ユーラシアさん、愚息がオイゲン族長宅に行っているはずです。よろしくお願いします」

「了解。挨拶してくるね」


 イシュトバーンさんに言う。


「うちの子達をまず置いてくるから、絵の準備しといてよ」

「おう、わかった」


 転移の玉を起動し、一旦帰宅する。

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