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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第81話:黒き先導者

 ――――――――――二四日目。


 朝の畑仕事を終えて我が故郷、灰の民の村へ向かう。

 あたしん家から歩いて二〇分くらいの遥か彼方だ、なんちゃって。

 村の南門を潜ったところで、いきなり見知ったハゲ頭の老人に出会う。


「じっちゃーん、久しぶり!」


 灰の村の族長であるデス爺だ。

 転移術のオーソリティで、村一番の秀才アレクの祖父でもある。

 アレクも年取ったらハゲちゃうのかなあ?

 頭の使い過ぎのせい?

 知識を蓄える分だけ髪の毛が抜けていく状況を想像して笑えてくる。


「何じゃ、騒々しい。おお、ユーラシアとクララか。初めて見る精霊もおるの」

「こっちの二人はアトムとダンテ。一緒に冒険者してるの。で、そちらの人は?」


 外見から年齢のよくわからない浅黒い肌に、精悍な顔つきのやや大柄な男性だ。

 いかにもな強者の雰囲気を漂わせている。

 ぶっちゃけのんびりした灰の民の村では、存在がメッチャ浮いてる。


「彼女が『精霊使い』の?」

「うむ、いかにも」


 あれ? 今のニュアンスはあたしの通り名じゃなくて、『精霊使い』の固有能力持ちであることを知ってる感じ?

 デス爺も?


「『精霊使い』とは珍しい。私はパラキアスという者だ」

「有名人だ!」


 『黒き先導者』の異名をとるドーラ大陸の大立者だ。

 パラキアスさんが時々灰の民の村に来るって、以前アレクが言ってたことを思い出した。

 あっ、『大掃除』の関係で来ていたとすると説明がつくぞ?


「これユーラシア、失礼であろう!」

「ごめんなさーい」

「ハハッ。元気なことはいいことだ。よろしく、お嬢さん」


 気持ちのいいおっちゃんだ。

 しらばっくれて聞いたろ。


「でも何でパラキアスさんがこんなところに? 例のクー川からこっちのモンスターを駆逐する計画……」

「これ、黙れ!」


 デス爺が慌てて制止する。

 やはり当然デス爺も知っていると。

 貴重な情報を得るチャンスだな。

 逃がさん。


「パラキアス殿、ここではよろしくないので我が家の方へ。お主も来るのじゃ」


 デス爺の家に連れていかれる。

 家といっても、アレクと二人で住んでいる小さな小屋だ。

 あたしん家の方がよっぽど大きい。


「さてユーラシアよ、お主どこまで知ってるのじゃ? 誰に聞いた?」

「あたしが『アトラスの冒険者』になったってこと、じっちゃんは知ってるんだっけ?」

「うむ、聞いておる」

「決定的なことは本の世界のマスターに聞いたの。『アトラスの冒険者』のクエストで飛んだ先なんだけど」


 やっぱりこの二人は『アトラスの冒険者』くらいじゃ驚かないな。

 それにしては難しい顔してるけど。

 『大掃除』が漏れちゃいけない計画だからか?


「本のダンジョン……おそらくは『全てを知る者』。デス殿、少なくとも敵ではなさそうですな」


 パラキアスさんが張りのある声で言った。

 敵?

 そーいやバエちゃんが、高位魔族に知られるといけないみたいな話をしてたな。

 マジで悪魔が敵なのか?

 悪魔って強いんでしょ?

 さすがにシャレにならんのだけど。


「で、魔物の掃討に駆り出されるから、しっかり準備しとけみたいな」


 これは金髪人形アリスに言われたことじゃないな。

 あちこちの情報を総合するとそーゆー結論になったけど。


「……まあ、合っておる。他所では喋らんようにな」

「魔物側に情報が筒抜けになるとよくないんだ。特に高い知能と実力・野望を備えた高位魔族が問題でね。やつらと直接敵対してるわけではないにしろ、面白半分に首を突っ込まれる可能性がある。悪魔は人間が苦しんだり焦ったりするのを喜ぶから」

「ふーん、悪魔ってとんでもなく迷惑なやつなんだなあ」

「作戦に参加するのは、港町レイノスの警備兵とカラーズ各集落から数名ずつ。あとは初級~中級の『アトラスの冒険者』じゃ。高レベル者を手配できない以上、参加者をなるべく危険に晒さぬ注意は必要であろう?」

「悪魔相手では上級冒険者でも荷が重いんでね」


 ふむ、どうやらあたしには作戦の全容を教えてくれるようだ。

 中途半端に聞き込みされて、台無しにされても困るからだろう。

 ありがたい、わかんないところは聞いたろ。


「じゃあ高位魔族の介入さえなければ、さほど大変な仕事でもないんだ?」

「中級以下冒険者にとってはそうでもないぞ。特に普通の攻撃や魔法ではダメージの入らん、人形系の大型魔物が厄介じゃ」

「人形系の大型魔物?」

「ちょうど手持ちが一本ある。これをあげよう」


 パラキアスさんがスキルスクロールをくれた。

 敵単体に確実に一ダメージ与えることのできるバトルスキル『経穴砕き』だ。


「パラキアスさん、ありがとう。そーか、『経穴砕き』だったのかー」

「む? どういう意味じゃ?」


 デス爺が問う。


「占い師にね、この作戦でのラッキーアイテムはスキルスクロールですって言われてたの。何の、まではわからなかったから」


 パラキアスさんが驚く。


「ちょっと待った。お嬢さん一ヶ所から情報を得てたんじゃないのか? 順番に話してくれるかな?」

「えーと、一番初めはドワーフのアルアさんのパワーカード工房で、ギルド職員が『大掃除』なる計画を話してた、って教えてもらった」

「コルムか……」


 デス爺御名答。

 コルム兄は割と耳聡いのだ。


「三日前、レイノス西口の警備兵隊長さんに『大掃除』について知ってるかって聞いたら、七日間は口外しないようにと言われた。で、本の世界でクー川からこっちの魔物を殲滅する計画があるよって聞いて、あらかた全部が見えた感じ」


 パラキアスさんが頷く。


「クエストで行ったほこら守りの村に、占い師の子がいたの思い出してさ。ぼかした言い方したけどその子にどうしたらいいか聞いたら、ラッキーアイテムの話が出たの。最後にチュートリアルルームの受付のお姉さんにね。侵攻計画があること自体を話すのは禁止されてたけど、あたしは既に知ってたから。何で秘密なのかだけ教えてもらった」

「実に素晴らしい。驚きの嗅覚だ」

「好奇心は身を滅ぼすこともあるのじゃぞ。よくよく気をつけよ」

「クー川から西のアルハーン平原の魔物を駆逐しようとするなら、多分灰の民の村から出動することになるじゃん? じゃあ情報が拾えるかもしれないねってことで、今日はここに来たんだよ」


 デス爺が固まった。

 パラキアスさんは首を竦めてヤレヤレってポーズしてる。

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