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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第807話:策士

「新人さんはパーティーメンバー揃えるのもなかなか難しいじゃん?」

「入ってきたばかりの『アトラスの冒険者』の成長を阻害する要因の一つですね」


 あ、おっぱいさんも同じ考えなんだな。

 あたしや『威厳』持ちのラルフ君みたいな、持ち固有能力がプラスになる特殊なケース。

 うまいこと需要と供給がマッチしたソル君みたいなケースじゃないと、新人が仲間を得るのは困難だ。


「ツインズとノブ君に一緒に行動してはどうかって勧めたんだ」

「いいことですね。ありがとうございます」

「で、今んとこ最後の冒険者のボニーって子が三つ目のクエストにかかってるから、そろそろギルドに来ると思う。ツインズ・ノブ君と一緒に行動することを勧めてやってくれる?」


 ツインズ妹の支援スキル。

 前衛が三人いるなら、かなり恩恵は大きいのではないか?


「わかりました。勧めてみます」

「お願いしまーす。ボニーがギルド来るの遅くて、ツインズ・ノブ君とレベル差がついちゃうくらいなら却下でいいんだけど」


 ボニーに言ってはあるが、あたしもあんまりギルドにいられないしな。

 おっぱいさんに推薦されるのがいいだろ。

 来月の新人もすぐみたいだから、ボニーはそっちと組んでもいいかもしれない。

 

「もう一つ聞きたいことがあるんだ」

「はい、何でしょう?」

「変な『地図の石板』を手に入れたんだ。魔法陣は設置されるんだけど、上に立つと『この転送魔法陣を使う資格を満たしておりません』って言われちゃうの」


 おっぱいさんが形の良い眉を顰める。

 どうだろう、心当たりはあるかな?

 バエちゃんに聞くよりはおっぱいさんが先だと思ったんだけど……。


「……資格を満たしておりません、ですか。前例がありませんね」

「そーかー」


 有能ギルド職員のおっぱいさんでも知らないとなると、この件は難しいっぽいな。

 まともな情報が得られるとすると残りはバエちゃんだが?


「しかし管理者の使用する転送魔法陣があると、聞いたことがあります。それのことかもしれません」

「管理者?」

「管理者です。私どももギルド職員に採用される時に『アトラスの冒険者』の運営に関するルールを申し渡されまして、守秘義務に抵触するのでこれ以上は話せませんけれども」


 おっぱいさんが見つめてくる。

 ドキドキするなあ。


「守秘義務か」

「ユーラシアさんなら何を意味するのか、見当がつくと思いますが」

「何となく」


 つまり、バエちゃん達の世界の人が使う転送魔法陣ということか。

 資格を満たせば、進んだバエちゃんとこの世界に飛べちゃうかも?

 実に面白いじゃないか。


 ともかくこの件をバエちゃんに聞くのはやぶ蛇っぽい。

 危なかった、先におっぱいさんに聞いて正解だった。

 いずれ誘導したり何かの機会に聞き出したりすることはできるかもしれないけど、今の段階でバエちゃんに聞くのは警戒させちゃうだけだ。

 そしてわかっちゃいたが、『アトラスの冒険者』に関わることじゃアリスに聞いても教えてくれないだろうな。


「ありがとうサクラさん」

「参考になりましたでしょうか?」

「十分十分。とりあえず転送先にクエストはなさそーだから、放っておくことにするよ」

「はい」


 おっぱいさんにっこり。

 これはお礼をしておかねば。


「サクラさんはダブルデートとゆーものに興味ある?」

「あります」


 おっぱいさんは興味の持ち方もエレガントだなあ。


「最近、ピンクマンとサフランが一緒にいるでしょ?」

「はい。ギルドにも時々来ますね。あの二人の関係性はどうなのですか?」

「サフランの方がピンクマンにラブなんだ。サフランはカラーズ黒の民の族長の姪なの。サフランの配偶者が次の黒の民族長になるんじゃないかって立場」

「ユーラシアさんは二人を結びつけたいと?」

「絶対くっつけって考えてるわけじゃないけど、自然かなと思う。ピンクマンは賢いし外の世界もよく知ってる。二人の相性も悪くないし」


 ピンクマンがトップなら黒の民も安泰だろう。

 あたしもやりやすいし。

 あたしの都合が前面に出過ぎてるだろうって?

 当たり前だろ。


「それでダブルデートとは?」


 うむ、本題だ。


「この前帝国の第二皇子とつるんでた、バアルって悪魔をとっ捕まえたんだ」


 頷くおっぱいさん。

 ふむ、バアルについてはギルドでも結構知られているらしい。

 ダン辺りが広めてるのかな?


「バアルに第二皇子が今後どう動きそうか聞いたら、自らの権力・支配力を、より強化させる方向に舵を切るのは疑いのないところ。しかし、どんな手を使うのかはわからぬって言ってた」

「はい」

「ドーラはプリンスルキウスを推すから、プリンスの評判は第二皇子の思惑を超えて高くなる。とゆーかそーなってもらわないとドーラが困る。となると……」

「ルキウス殿下が害される可能性が高まると」


 さすがおっぱいさん。

 さようにごじゃりまする。


「うん。でもプリンスが高レベルのことを知ったら、まともには来ないと思うんだよね。だから毒無効の装備は持たせてるんだ」

「注意すべきなのは重火器か魔道兵器?」

「戦争みたいなことやられちゃお手上げだなー。でも規模が大きいことや、明らかに帝国のお偉いさんが動いてるのわかっちゃうようなことはしてこないんじゃないかと」

「……となれば可能性のありそうなのは、個人レベルの固有能力かスキルですか?」

「一番ヤバそーなのはそこ」


 おっぱいさんが頷く。


「オニオンさんやピンクマンは固有能力やスキルについて詳しいから、二人で調べて何に注意したらいいか教えてくれると助かるの」

「それをデートの名目にしろ、ということですね?」

「名目があれば幸せが深まっちゃう、あら不思議」


 ニコッと微笑むおっぱいさんの美しいこと。


「あたしも露骨にピンクマンとサフランが会う機会を増やそうとしてたから、最近ピンクマンに警戒されてるっぽいんだよね。サクラさんにサフランを誘ってもらえるとちょうどいいな」

「よくわかりました。ユーラシアさんは策士ですね」

「そーなんだよ。なのにあたしが行き当たりばったりの権化だと思ってる輩が多くて困る。縁結びの使者だとゆーのに」


 アハハと笑い合う。


「じゃ、お願いしまーす」

「はい、ありがとうございます」


 おっぱいさんと別れて食堂へ。

 本日のメインイベント、マウ爺のラストクエストだ!

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