第799話:先輩冒険者としての気配り
ノブ君についての話の続きだ。
「で、ノブ君は怠けもんあんちゃんとパーティー組んでた。でもあんちゃんがサボると、ノブ君の才能がパーじゃん?」
「師匠が注目するほどの才能ですか?」
「ノブ君は『竜殺し』の固有能力持ちなんだ。ま、『アトラスの冒険者』は皆それなりの固有能力持ちだから、『竜殺し』が特に惜しいってわけでもないんだけど。ノブ君やる気あるし利発じゃん? こういう子があんちゃんのせいで冒険者できなくなるのはもったいないなーって、おっぱいさんに相談したんだよ。だったらノブ君に『アトラスの冒険者』の資格を移しましょう、成年か未成年かは『アトラスの冒険者』の要件にありませんって」
「そういうことだったんですか」
「資格を移すなんてことができるんですね。知りませんでした」
「あたしもビックリしたわ。既存の転送魔法陣と転移の玉が、設定ちょっと変えるだけでまんま利用できるからっていう、特殊なケースだよ。兄弟で資格を失う側と受け取る側双方が納得できる、ならば親御さんの許可取ればいいだろうということだったの」
ラルフ君パーティーとエルマが頷く。
でもギルドでちょちょいと設定変えるだけで、資格を移すなんてことができるのがすげえ。
不始末起こして『アトラスの冒険者』をクビになる時は一瞬だな。
「とゆーわけで、ノブ君は正規の『アトラスの冒険者』なんだよ。これ事情知ってる人まだあんまりいないはずだからさ。ギルドで話題になったら話しといてよ。ああ、ダンに言っとけば勝手に広まるわ」
「「「「「わかりました」」」」」
ラルフ君が聞いてくる。
「ところであんちゃんというのはどういう方で?」
「気になる? 風魔法を使える剣士だよ。ムオリス君みたいなタイプ」
ラルフ君パーティーの魔法剣士ムオリス君もまた風魔法使いなのだ。
「もったいないですね。飛行魔法は大変有用だと思いますか」
「まったくだよ。あんちゃんの固有能力は強く発現してるから、レベル二〇くらいで『フライ』を覚えるだろうってことだったんだけどね」
エルマが困ったような顔になってる。
エルマも意欲に溢れる子だから、色々残念に思うんだろうな。
世の中才能よりもやる気の方が重要だわ。
やる気がないと何にもできんわ。
「あんちゃんも冒険者を完全に辞めちゃったわけじゃないんだよ。やる気がないだけで。ノブ君に引っ張られてギルド行くこともあるだろうからよろしくね」
「「「「「わかりました」」」」」
生温かい目で見てやってください。
エルマは冒険者本業じゃないからいいけど、ノブ君は一人だと厳しいんじゃないかなあ。
「ノブ君は三つ目のクエストがここだったのかな?」
「うん、そう!」
「今装備してるパワーカードは?」
「『スラッシュ』『シールド』『ホワイトベーシック』『逃げ足サンダル』の四枚!」
「いいね」
「お姉ちゃん、『スラッシュ』と『シールド』、もう少し借りててもいい?」
「いいよ。ノブ君頑張ってるから、それはあげる」
「やったあ! ありがとう!」
喜んじゃいるが。
「ノブ君、ギルド行ってからのクエスト、キツくない?」
「キツい!」
「だよなー。さすがに物理アタッカー一人じゃキツいよなー」
ノブ君ほど意欲があればいずれレベルと購入スキルが解決するだろうけど、効率的じゃないんだよなー。
かといって、一〇歳児が仲間の冒険者を募ってってのはムリがあるだろ。
ならば……。
「……今、ヌヌスツインズってどうなってるか知らない?」
「二人で依頼受付所によくいますね」
「じゃあパーティーメンバーは増やしてないのかな?」
「だと思います」
ツインズも若いし実績ないから、なかなかパーティーに加わってくれる人がいないんだろう。
そしておそらく石板クエストに苦戦してるんで、依頼所クエストで腕を上げようとしていると見た。
「今度ツインズを見かけたら、ノブ君を紹介してやってよ。実力近い者同士で協力し合うのが、本来は一番いいと思う」
「かもしれませんね」
「特にツインズ妹は支援タイプなんだ。パーティーに前衛メンバーが多いほど生きる能力だから。あたしも注意しとくよ」
「了解です」
あたしが言うのも何だけど、年齢や経験不足ってのは短期間じゃどーもならんことが多い。
こういうのこそ先輩冒険者が取り持ってやらないと。
「ギルドにパーティーメンバーマッチングサービスがあってもいいねえ」
「それは自分も思いますね」
あたしやラルフ君みたいに支配系の固有能力持ってりゃ別だけど、さもなければ経験の少ない冒険者がパーティー組んだり共闘したりするのは、案外難しいぞ?
「でもギルドも予算決まってるから、人員増やせないって言ってたんだよなー」
「お姉さまは、ギルドの事情をよく御存じですねえ」
エルマは素直に尊敬してくれるなあ。
「チュートリアルルームで聞いたんだよ。まーポロックさんもおっぱいさんも、これ以上仕事増やすのは問題あるだろ」
低年齢低レベル組を個別に気をつけてやればいいか。
『アトラスの冒険者』なんて人数多いわけじゃないしな。
「ちなみに今ノブ君が狙ってるカードは何なの?」
「『スナイプ』!」
「パーフェクトだねえ」
攻撃力増強かつ遠隔化の効果があるパワーカードだ。
特殊なクエストの事情がない限り、今のノブ君に最も必要なカードだろう。
ラルフ君とエルマも頷いている。
もう『スナイプ』が交換対象になってるのはツイてるな。
「じゃ、ノブ君頑張ってね」
「うん!」
「アルアさん、素材の換金お願いしまーす」
「はいよ」
交換ポイントは一八九八となる。
随分溜まったもんだ。
「カードと交換していくかい?」
「いや、やめておきまーす」
もうポイントをパワーカードと引き換える機会はあんまりないかもな。
でも全然構わないのだ。
「師匠、美人絵画集の刊行と販売について、父とヘリオス氏交えての会談ですが」
「あっ、日が決まったかな?」
「二日後いかがでしょう?」
「オーケー。どこになる?」
「昼にイシュトバーン氏の邸宅で」
「えっ?」
いや、イシュトバーンさんも当事者だからおかしくはないか。
嗅ぎつけて参加したがったのかもしれない。
「わかった。エルマの絵も描かせてもらいたいんだけど、いつがいいかな?」
「いつでも大丈夫ですよ」
赤プレートに話しかける。




