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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第798話:ノブ君を紹介

 赤眼族の集落から帰宅後、うちの子達と話をする。


「はい、予想通り赤眼族でした。今わかってるのはここまで」


 頷くうちの子達。


「火事がなかったら打ち解けるの大変だったかもしれやせんぜ?」

「かもね。でも時間の問題だぞ? 食料があったとしてもコブタマンのお肉に勝てるとは思わない」


 いや、笑ってるけどあたしは本気だぞ?

 コブタ肉美味いもん。

 ほぼ無敵。


「このクエストはどうしたらフィニッシュか、やはりアイドントノーね?」

「うーん、当面の食料危機を脱してもクリアにならなかったもんな? となると赤眼族監視のクエストなんだと思う」

「「「赤眼族監視?」」」

「赤眼族はバエちゃんとこの世界から追い出された一族だ。『アトラスの冒険者』は赤眼族を監視する機関だって仮説があったじゃん?」


 証拠もないけど矛盾もないと考えていた仮説だ。


「ユー様は仮説が本当だと考えているのですか?」

「でもないけど、少なくとも『アトラスの冒険者』の目的の一つであることは間違いないと思うな。あたしのカンでは」


 あれ? うちの子達全員大きく頷いてるじゃねーか。

 あたし自身より信用のあるあたしのカンってどうなの?


「とするとクエストの完了条件はどうなりやす?」

「わからんなー。ある程度赤眼族に関しての知見が得られたら、とか?」


 あたし達が赤眼族の知見を得たからといって、『アトラスの冒険者』本部が得するわけじゃない。

 じゃああたし達から聞き取りでもするのかな?

 あっ、あの正体不明の資格を満たしてないって言われる転送魔法陣は、あたし達を本部に呼ぶために設置された?

 いやいや、あの『地図の石板』の手に入れ方は、どー考えたってイレギュラーだろ。

 バアルからお宝を毟りまくって最後にくれたやつだぞ?


「うーん、頭がぷしゅーってなっちゃう」

「ボスはズノーロードーに向いてないね」

「何だとお! と言いたいところだけど、あたしは賢いから。材料が足んなくて結論の出ないことをいつまでも考えるのはムダだと知っている」


 そう、材料が足りないのだ。


「バアルは赤眼族について何か知ってることない?」


 籠の中の悪魔に問う。

 あたし達の知らない何かの情報を持ってるんじゃないか?

 首をかしげるバアル。


「ドーラの先住亜人と言われる者どもであろう? 吾も赤眼族に注目していたことはないので確実ではないであるが、二〇〇年前より昔に見た記憶はないである。今の異世界からこちらの世界へ追放された一族という話を聞いて、ありそうだと思ったである」

「大悪魔の考えでもそーか。もう一つ、バアルはあたし達に『地図の石板』をプレゼントしてくれる気はあった?」

「宝箱ザクザククエストは、リスクと引き換えの取り引きであったである。高位魔族がメリットもなく、ただ譲り渡すなどということはあり得ぬである」

「うん、ありがとう」


 バアルの言うことは至極もっともで筋が通っている。

 あの謎の『地図の石板』をあたし達が手に入れたのは、おそらく『アトラスの冒険者』本部も意図しない偶然だ。

 赤眼族クエストとは関係ないと思われる。

 

「よし、わからん。結論、保留! お昼ご飯にするぞー」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「アルアさーん、こんにちはー」

「はいよ、いらっしゃい」

「師匠」「お姉さま!」「お姉ちゃん!」


 お昼を食べた後、パワーカード工房にやって来た。

 今日は素材の換金のみなので一人だ。

 しかしエルマはともかく、ここでラルフ君パーティーとノブ君に会うとは。


「今日は大勢だねえ。アルアさん、これお土産だよ」


 コブタ肉を渡す。


「おや、いつもすまないね」

「エルマはお仕事?」

「そうです」

「ラルフ君達とノブ君はパワーカードの物色に来てるんだ?」

「「「「はい」」」」「うん!」


 なるほど、つまらん理由だった。

 ヒルデちゃんと喧嘩したとかなら面白いのに。

 ってのはともかく、あたしのレベルが戻ってることに関して、ラルフ君パーティーが何も言わない。

 当たり前だと思われてるのかな?

 まーあたしのことはいいけど……。


「えーと、ノブ君のことは皆知ってるんだっけ?」


 あれ、微妙な雰囲気だね?

 何がどーした?


「わたしはここでお会いしていたので知っていますが、『アトラスの冒険者』だと聞いて驚きました。どう見てもわたしより年下ですから」

「自分も同様です。師匠の仕込みですか?」

「理解できない現象が起きた時、全てあたしのせいにするのは何とかならんものか。いや、あたしも無関係ではないけど」

「エルマも浮足立っているんだよ。アンタ、知ってるんだったら経緯を聞かせてやっておくれ」


 アルアさんも興味あるみたいだね。

 どうもあんちゃんヨブ君はもう、ノブ君に付き合って冒険者やる気はないみたいだな。

 じゃあノブ君が怪しまれて孤立しちゃうかもしれない。

 手伝ってやるか。

 

「ノブ君、自己紹介してみようか」

「うん。ノブ・タルクスカル。一〇歳。カトマスに住んでる」

「「「「「一〇歳?」」」」」


 皆が驚く。

 そりゃそうだろう。

 『アトラスの冒険者』は自分のことを自分で始末つけられる成人が原則のようではあるから。

 アルアさんは面白そうだが。


「この件はあたしよりおっぱいさんの方が詳しいから、厳密なことを知りたかったら おっぱいさんに聞いてね。個人情報に抵触しない程度は教えてくれると思う」

「「「「「はい」」」」」

「ちょっと事情があるんだ。本来はエルマの次の新人『アトラスの冒険者』が、ノブ君のあんちゃんだったの。あんちゃん今日はどうしたの?」

「家で寝てる!」

「って具合で、冒険者稼業よりも自宅警備を自分の使命と心得ている人なんだよ。御想像の通り、『アトラスの冒険者』として脱落寸前でさ。辞めちゃうとあんちゃんにつぎ込んだ初期投資がムダになっちゃうじゃん?」

「理屈は……わかりますね」

「しかし個人の動向は、冒険者が気にすべきことではないのでは?」


 エルマもラルフ君パーティーもクエスチョン面ですね。


「まあね。でもあたしはムダとか損が嫌いなんだよ」

「お兄さんにとってためにならないから、ということではないのですか?」

「だってあんちゃん怠けもんなんだもん。あんなののためにあたしが働くのは、ムダだし損なんだもん」

「ははあ、極めて師匠らしい理屈だと窺い知りました」


 皆で笑う。

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