第793話:世話を焼く
「できたじゃないか」
「アイデアとしては成立するとわかったね」
帰りも皆と話しながらの道中だ。
何ができたかって、もちろん『光る石』スタンドのことだ。
どーも『光る石』スタンド欲しいズのテンションがあたしにはウザい。
「純粋な黒妖石の半分くらいは魔力入る感じだったな。使用感としてはね」
「『光る石』は誰でも使えるくらいだ。魔力を光に変換する効率は非常にいい」
「じゃ、これだと黒妖石のムダ遣いだな。スタンドは何時間くらい使えると嬉しいの?」
「「「「……」」」」
『光る石』スタンド欲しいズが相談始めたぞ?
アトムが話しかけてくる。
「姐御、黒妖石を粉にできれば、おそらく焼きでもイケると思いやすぜ」
「ふーん? でもわざわざ粉にするのも大変だよねえ」
黒妖石メッチャ硬いしな。
どこかで黒妖石の細かい砂を手に入れることができるんだったら話は別だが。
そーゆー機会があるまで、黒妖石入り焼き物の考え方は保留だわ。
「ユー様、最低五時間くらい照らすことができればという結論です」
「最低五時間か。オーケー、皆それでいいね」
『光る石』スタンド欲しいズの面々が頷く。
「今日のは抵抗が強くなるまで魔力流し込んでみたんだ。最大容量の七、八割ってところ、実用上の最大限だと思う。これで何時間光ってるか確認して、逆算で必要な黒妖石の量を探ってみよう」
「期待してるよ」
さてと、赤の民族長宅だ。
スクワッターカグツチさんはいるかな?
「こんにちはー」
「おお、精霊使いにサイナス族長。どうされた?」
「この前注文した『光る石』スタンドの試作品を取りに来たんだよ。それから今日の午前中、レイカに会ったんだ。カグツチさんによろしくとのことだった」
「ハハハ、元気でやっておりますかな?」
「元気も元気だよ。ところで緑のショップでこういうもの売ってるの知ってた?」
予想通りスクワットしていたカグツチさんに、画伯の絵を取り出して見せる。
「最近話題の版画だな。もちろん知っておるが」
「これ、レイカがモデルのやつも売り出すから、一応知っておいてよ」
「何? いつだ!」
おお、がぶり寄ってきたな。
暑苦しいわ。
スクワット止めるほど重要なのか。
「今日絵師に下絵を描いてもらったんだよ。明日には原画が完成。版を起こして刷ってって工程だから……。でも一〇日はかからないな。五、六日だと思う」
「そうか、すまぬな」
「後姿で振り返る、旅立つ冒険者って感じのかっちょいいやつなんだ」
ムチムチでエロかっちょいいやつです。
「うむ、楽しみにしておく」
「じゃ、さいなら」
「また会おう」
◇
サイナスさんが笑う。
「相変わらず世話焼きだなあ」
「カグツチさんも娘が飛び出しちゃって寂しいと思うんだよ」
レイカのこと知らせてあげられるの、あたしくらいだしな。
アレクが言う。
「ところで赤の民の次代族長はどうなるんですか?」
「あたしも気になるな」
「赤の民は基本世襲だ。女性でもいいのか婿を取るのかはわからんが」
ふーん、赤の民にとってはレイカの身の上は重要だな。
でもこいつらギャンブラーだから、あんまり気にしないのかも。
「レイカさん、冒険者辞めちゃうのかな?」
「冒険者なんていつまでもやるもんじゃないんじゃないの? 普通は」
『アトラスの冒険者』でも、孫がいそうな年齢まで現役なのはマウ爺とシバさんくらいだわ。
「ユー姉もいずれやめる考えなんだ?」
「必要がないならやめるよ。あ、でも肉狩りが冒険者の範疇なら、いつまでもやってると思う」
「どうしても話が食に偏るんだな」
皆で笑う。
「話変わるけど、この前の輸送隊の時、新人の未成年三人どうだった?」
「未成年って言っても、フリッツさんはそろそろ一五歳らしいよ。あの眠らせる固有能力はすごい。宿で全員に使ってみせてくれたんだけど、ケス以外全滅だった」
「マジか。やっぱ状態異常耐性は重要だな」
ケスはあたしと同じ固有能力『自然抵抗』持ちで、沈黙・麻痺・睡眠に耐性があるのだ。
耐性があれば無効じゃなくても『ララバイ』は効かないようだ。
「しかもかなり離れてても能力が有効なんだよ。最大五ヒロくらい?」
「五ヒロもか」
ヤバい固有能力だなー。
パワーレベリング以前は、素手で握手しないと『ララバイ』の能力発動しなかったのに。
しかしグリフォンを眠らせた能力者も、考えてみりゃ触んなきゃ有効じゃなかったら危ないわ。
「無敵の輸送隊にしたかったのになー。どこかに穴はあるもんだ」
「ハハハ、どれだけ厳選して鍛えても、ユーラシアみたいな盗賊が襲ってきたらムリだろう?」
「美少女精霊使いは品行方正なので、ドロボーのマネごとなんかしないというのは物申しておきたい」
「でもおいしい肉を独占しようとしてる悪徳商人の商隊だったら?」
「天誅食らわすねえ」
「言い方違うだけで、やってることは盗賊だからな?」
「あれっ?」
大笑い。
自分が納得すりゃいいんだよ。
「灰の民の村にとうちゃーく。あたし達は帰るね」
「ああ、『光る石』スタンドの完成は楽しみにしているよ」
「念押すなあ。わかってるってばよ」
「ユー姉、明日から札取りゲームを販売してみるよ」
「そうしてちょうだい。札取りゲームの正式な商品名は何て言うの?」
「『文字を覚えるための札取りゲーム』だよ」
「おーわかりやすい」
まータイトルで内容を把握してもらうことは大事だな。
「じゃねー」
ヴィルを通常任務に戻し、転移の玉を起動し帰宅する。
◇
「さて、どうしよう? 御飯にはまだ間があるし」
家には帰ってきたが、若干中途半端な時間なのだ。
魔境でリラックスするもあり、誰かのところへモデルの依頼に行くのもあり、チュートリアルルームにボニーの確認行くのもありだ。
たまには落ち着いて家にいるってことは考えないのかって?
考えないねえ。
アトムが言う。
「パワーカード工房行きやしょう。素材がかなりありやす」
「それが一番いいか」
バアルが会話に参加してくる。
「『焼け野原』の転送先は確認しないのであるか?」
「……『焼け野原』のクエスト次第で、持ってないパワーカードが必要になる可能性があるな。やるねバアル」
「ハッハッハッ、吾を崇めるがよい!」
「よし、チラッと『焼け野原』覗いてこようか。ごめんアトム、アルアさんとこ明日だ」
「へい」




