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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第79話:バエちゃん言い寄られる

 フイィィーンシュパパパッ。

 うちの子達とともにチュートリアルルームに降り立つ。


 ん? 何か騒がしいな。

 どうも珍しく取り込み中のようだ。

 冒険者らしき男二人がバエちゃんに詰め寄ってる。

 剣士と魔法使いかな?

 見たことない人達だし、結構な実力者っぽい。

 上級冒険者だろう。


「バエちゃん、いつからそんなにモテモテになったの? ニクいね」

「あっ、ユーちゃんいらっしゃい」


 剣士の男がこちらを見て、少し驚いたような顔をした。


「精霊連れ? ああ、君が噂の精霊使いか。ちょうどよかった。君のところ、新しい『地図の石板』の配給止まってないか?」


 ビンゴ! 予想通りだ。

 やっぱり今クエストを割り振ってないんだな。

 となると『アトラスの冒険者』は当日まで何も知らないまま集められ、『大掃除』に投入される可能性が高い。

 バエちゃんの表情からすると、『大掃除』の事情を何か知ってるみたいだな。

 バレるとよろしくないみたいだし、ここはとぼけておくか。


「えっ、どういうこと?」


 もう一人の魔法使いらしいローブ姿の男が説明する。


「この二、三日、石板クエストを完了しても次の石板が出ない、って冒険者がチラホラいるのだよ。ギルドからは何も説明がないし、もしかしてここならば何かわかるかと思って来てみたのだが」

「クエストはギルドが一括で扱って冒険者に割り振ってるんでしょ? チュートリアルルーム来たってギルドの事情はわからなくない? それともバエちゃん、何か知ってるの?」

「し、知らない」


 焦ってどもるバエちゃん。

 ヘルプしてるんだから、もうちょっと演技力を何とかしなよ。

 お芝居もいい女の条件だぞ?


 バエちゃんが隠し事をしてるのには気付かなかったようだ。

 剣士が両手を挙げ、降参したように言う。


「もっともだな。受付の姉さん、変なこと聞いて悪かった」


 バエちゃんがホッとしている。

 あたしもギルドがどういう雰囲気になってるか知りたいな。

 突っ込んでみるか。


「あたしも昨日クエストクリアしたんだけど、新しいやつ来てないのかな?」

「早く確認すべきだ」

「ポロックさんやおっぱいさんは何か言ってないの?」

「「おっぱいさん」」


 おっぱいにばっか反応すんな。

 まったくこのお兄さんズは仕方ないな。


「ごめんなさいという謝罪と、数日中に事情を話せるってことだけだ」


 ふむふむ、数日中ね。


「じゃ、今ギルドで聞いてもダメなのかー」

「ああ。姉さん、『クイックケア』のスキルスクロールを一つくれ」

「はい、八〇〇〇ゴールドになります」


 基本状態異常を治療し同時にヒットポイントを回復する、戦闘中にのみ使える魔法です、プラスの速度補正がありますとクララが教えてくれた。

 ターン先制で治癒・回復できるってことか。

 パーティーの安全度を高めるいい魔法じゃないか、高いけど。

 敏捷性の高いあたしやダンテが覚えると事故の確率が減るかもな。

 八〇〇〇ゴールドだけど。


「精霊使い君はどうしてここに来たんだ? スキルを買いにか?」

「いや、夕御飯を食べに。バエちゃんとは仲良くしてるんだ」

「ハハッ。なるほど、そりゃあいい」


 二人は帰るようだ。


「失礼した。精霊使い君も頑張れよ」

「お兄さん達も元気でねー」

「じゃあな。また会おう」


 転移の玉を起動し、二人の姿が掻き消える。

 よし、これでオーケー。


 たまりかねたようにバエちゃんが何か言おうとする。


「ユーちゃん、あのね……」

「おっとストップ。あたしの推理は全ての謎を解き明かした!」


 あたしは左手を前方に突き出し、掌を開いてバエちゃんを制止する。


「ギルドがクエストの供給を止めていることは事実。そしていつもと異なるアタフタした態度から、バエちゃんは理由を知っている」


 バエちゃんはギクリとし、あたしを見つめる。


「ギルドがクエストの供給を止める理由はいくつか考えられる。しかし理由を説明しないのは何故か? それは事情を聞きに来た『アトラスの冒険者』達をギルドに集める必要があるから」


 バエちゃんの目が驚愕に見開かれる。


「冒険者をギルドに集めなければならない理由は? 決まっている。大勢の冒険者を一度に使ったミッションがあるとしか考えられない。以上、証明終了」


 恐ろしいほど決まった。

 左手を下げる。


「……ユーちゃん、神探偵?」


 バエちゃん、ビックリしすぎだろ。

 でも『神探偵』の称号はいいな。

 『精霊使い』より格好いいかもしれない。


「いや、種を明かすと、四日後にアルハーン平原での魔物退治の計画があるの知ってるんだ。中級以下の『アトラスの冒険者』全員参加で魔物退治するんでしょ?」

「か、神推理……」

「違うんだって。あちこちで情報集めてただけ」


 バエちゃんが何かに気付いたように言い立てる。


「えっ? でも待って。これ絶対秘密だから、誰にも漏らすなって上司から言われてるんだけど?」


 ああ、シスター・テレサが来たのか。

 一度会ってみたいもんだ。


「知ってる。だからさっきバエちゃんが言おうとしたの止めたんだよ」

「すごーい!」


 ふふふ、もっと崇め奉っていいんだよ。


「バエちゃんが口外禁止されてたのは、作戦行動があることについてでしょ? 一つ教えて欲しいことがあるんだ。これ何で内緒なの?」

「冒険者にしてもそれ以外の人達にしても、この計画に参加するのはあんまりレベルの高くないメンバーだから、と聞いたわ。もし高位魔族にでも知られて、参加者を危険に晒したら大変っていう配慮だそうよ」

「おーダンテすごい、当たってたね」

「えっ、これもわかってたの?」


 バエちゃんがまた目を見開く。


「予想はしてた。高位魔族がしゃしゃり出てくる可能性があるのはよろしくないわ。じゃあ秘密の方がいいな。あたしもなるべく言わんとこ」

「もう驚くの疲れた。カレーできてるわよ」


 異常に切り替え早っ!


「ところでここって窓ないの? 仕事場にかれえ臭が充満するのは良くないと思うんだけど」

「空間が空間だから、窓がつけられないの。換気はできるけど」

「場所が秘密なんじゃなくて、空間が謎なの?」


 青くなるバエちゃん。

 もーしょうがないなー。


「チュートリアルルームのある空間も『アトラスの冒険者』の秘密の一つなのか。内緒なのはわかってるし、別に言いふらしたりしないから、心配しなくていいよ。それよりかれえ食べよ?」

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