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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第788話:あるように見える!

 さて、レイカの絵の方はどうなってるかな。

 ああ、やっぱり人だかりになってる。

 一人の冒険者が話しかけてくる。


「おい、あんたドラゴンスレイヤーユーラシアだな?」

「美少女ドラゴンスレイヤーユーラシアだよ」

「これは何だ?」

「あたしが絡んでると見当をつけるのはカンがいいね。画集を売るんだ」

「「「「画集?」」」」


 やじ馬どもが首をかしげる。

 美人絵画集だよ。


「よし、終わりだ。レイカ、お疲れ様。交代してくれ」

「はい。ありがとうございました!」


 ポーズでわかってたけど、まあえっちだこと。

 次はエルか。

 イシュトバーンさんに聞く。


「どこで描く?」

「地面に座れる場所がいいな。いい場所ねえか?」


 この時間だとそろそろ塔入り口の前は邪魔だ。

 イシュトバーンさんが絵描いてるところはやじ馬も見たいだろう。

 どうせもっと大勢集まるだろうから……。


「正門外の草原がいいかな」


 皆を引き連れゾロゾロ。

 うむ、ここなら広いし邪魔になるまい。

 イシュトバーンさんがエルにポーズを指示する。

 地面に座らせ、両腕を後ろに回して身体を支える。

 左足を伸ばして右足の膝を曲げる、と。

 顔が左上を向く。

 あっ、胸が反り気味になるから……。


「あるように見える!」


 何があるのかはデリケートなことなので言及しないが、やじ馬達も理解している。


「本当だ!」

「さすが画伯!」


 エルも察したか、すげえ嬉しそうなんだけど。

 やじ馬の一人が聞いてくる。


「で、画集ってのは何なんだ?」

「見ての通りだよ。美女美少女の画集。他にはこんなのもあるんだ」


 販促用に持ち歩いてる『ニルエ』『アリス』『サクラ』の絵を見せる。

 ハッハッハッ、皆ガン見じゃないか。


「モデルは二〇人の予定でーす。出たら買ってね」

「いつ出るんだ?」

「まだ決まってないけど、二ヶ月はかかんないと思う」

「そうか。欲しいが、二〇〇〇ゴールド以上だと迷うなあ」

「二〇〇〇ゴールドでも買うつもりだったのかよ。予定価格六〇ゴールドだぞ?」

「「「「六〇ゴールド?」」」」


 驚くやじ馬達。

 実に気分がいいなあ。


「安過ぎる。絶対におかしい!」

「裏があるのか? 何かの宗教に入信しろとか代金以外にお布施を出せとか」

「おおう」


 裏なんかないわ。

 そこまで阿漕じゃないわ。


「この画集はメチャクチャ売れるに決まってるじゃん?」

「当たり前だな」

「たくさん刷ったら本は安くできるかっていう、実験を兼ねてるんだ。ごめん、レイノスでは六〇ゴールドで売るつもりだけど、塔の村まで運ぶともう少し高くなっちゃうかも」

「いやあ、運び賃なんか知れてるだろ」

「おう、絶対買うぜ!」


 毎度ありー。

 塔の村での販促活動もバッチリだ。


「しまったなー」

「ん、どうした?」


 レイカが聞いてくる。


「販促を考えると、カトマスの人にもこうやって描いてるところ見せるべきだったかなと思って。モデルにカトマス出身者四人もいたのに」

「ハハハ、カトマスは物流の盛んな村なのだろう? 自然に伝わるよ」


 だよね。

 口コミに期待しよう。


「あたしちょっとデス爺んとこ行ってくるね」

「ああ」


 さっきから輝く頭が見つからないんだよな。

 どこかへ行ってるのか、あるいは小屋の中か。


「こんにちはー、あっ、じっちゃんいた!」

「相変わらず騒々しいの」


 小屋の中だった。

 ラッキー。


「ちょうどいい。この前頼まれていた、海水の転移吸入口用魔法陣の設計図と、受け手側ビーコン用魔法陣の設計図じゃ」

「ありがとう!」


 早いな。

 今日赤の民の村へ行くからちょうどいい。


「しかし、黒妖石に彫り込むのは大変じゃぞ。それこそアルアに頼むのでなければな」

「いや、黒妖石の小石を粘土で固めたものでもいいんだって。だから粘土に練りこんだ時点で魔法陣を描いて、あとで固めようと思ってるの」

「何じゃと? そんなことができるのか?」


 驚くデス爺。

 大きな黒妖石の塊を使わなければいけないとゆー先入観があると、思いも及ばないことだろう。


「うん、マルーさんに聞いた。人の転移にはしょっちゅう使うこと考えると、磨り減っちゃって事故の危険があるけど、海水の転移なら構わないだろうって」

「ふむ、随分考えているのじゃの」


 顎を弄りながら大きく頷く。


「いいじゃろう。クララよ。この転移吸入口用魔法陣は魔力供給があれば自動的に起動し、転移する海水の量は供給魔力量に比例する。有効範囲は魔法陣の手前二〇分の一ヒロほどじゃ。注意いたせよ」

「はい、わかりました」


 二〇分の一ヒロすなわち一ツカ弱だ。

 魔法陣のすぐ手前の水を転移させるということだな。

 クララが理解してくれればバッチリだ。


「ところで塔の村では何か困ってることない? おゼゼに関すること以外で」

「ふむ、順調じゃぞ。金以外は」

「そーかー」


 アハハと笑い合う。

 さて、エルの絵どうなってるかな?


「じゃ、じっちゃんありがと」

「ああ、ユーラシア」

「ん、何?」

「アレクがなかなか逞しくなった」

「うん。身体もなんだけどさ。考え方が少しずうずうしくなった気がするね」


 良く言えばタフになってきた。

 デス爺もアレクのもやしっ子っぷりはどうかと思ってたんだろうなあ。


「礼を言うぞ。形にはならんが」

「最近それ先回りで言われちゃう。何でかなあ?」


 再び笑い合い、デス爺と別れる。


「あ、リリー」

「すまぬ! 遅れた」

「リリーの寝坊は計算に入ってるから大丈夫だぞ」


 そろそろ起こしに行こうと思ってたところではあるけどな。

 リリーと黒服のコンビがホッとした様子を見せる。


「レイカの絵は描き終わって、エルの絵もそろそろ完了のはずなんだ」

「うむ、どこで描いているのだ?」

「門の外の草原だよ」


 現地に急ぐ、と?


「何ぞ、この人だかりは?」

「随分とやじ馬増えてるじゃん」


 とゆーことはもうすぐだな。


「よし、終わりだ。エルよ、お疲れさん」

「ありがとうございました!」

「「「「「「「「画伯! 画伯! 画伯!」」」」」」」」


 画伯コールだぞ?


「イシュトバーンさんは大丈夫? 疲れてない?」

「おう、何ともないぜ。次は皇女殿下だな」

「うん、場所はどこがいい?」

「ギャラリー多いから、ここでいいぜ」


 ポーズは?

 腰を落として左正拳突きか。

 あっ、斜め下からあおりで描くんだな。


「これは格好いいねえ。エル?」


 聞いちゃいねえ。

 自分の絵をメッチャ真剣に見てますがな。

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