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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第786話:最強だけど無敵じゃない

「ただいまー」

「お帰りなさい」


 チュートリアルルームから帰ってきた。

 うちの子達が出迎えてくれる。

 我が家はいいなあ。


「ヴィルが原画を持ってきてやすぜ」

「ペペさんとヴィルの絵か。今日遅いから、明日版画屋さんに持ってくよ」

「新人さんはどうでした?」

「うん、冒険者やるって。今もうレベル三だから、大して苦労せずにギルドに来ると思うよ。それよりあたしについて重大な報告があります!」


 何事かと緊張するうちの子達。


「ばばーん! レベル上限が一五〇になる固有能力が発現しました! 何とあたし今レベル一〇一だって。」

「よかったですねえ」

「ボスならソーユーことあるね」

「あれえ?」


 思ってた反応と違う。

 軽く流されたぞ?


「ま、いーか。こっちはどうだった? サイナスさん何か言ってた?」


 魔境クレソンを持っていってもらっていたのだ。

 貯水池の拡張が半分終わるとのことだったので、植えられるところがあるんじゃないかな。


「クレソンは届けやした。早速植えつけると言ってやしたぜ。しかし……」

「ボス、ノットチェンジね」

「えっ、何が?」

「新しい転送魔法陣でやす。やはり『この転送魔法陣を使う資格を満たしておりません』と」

「とゆーことは、レベルが資格じゃないんだな?」


 となると特殊な条件なのか?

 特殊じゃなくても年齢とか性別とか?

 いかんせんノーヒントなので、あたしの優れたカンをもってしてもサッパリわからん。


「とっかかりがないもんなー」

「いかがいたしますか?」

「……ま、特に気にする必要はないな。所詮番外の『地図の石板』だし。ギルドやバエちゃんにこんなん出ましたけどって、聞いとくだけでいいよ」

「この先、資格を得られるのかもしれやせんぜ」

「うん、期待しとこ」


 『アトラスの冒険者』のシステムの中でも、『地図の石板』は最も謎が多い。

 自動でクエストを集めてる仮説が本当なら、本部でさえ理解してない石板クエストも多いだろう。

 不完全な石板、特定のクエストをクリアして初めて機能する石板なんてものもあるのかもしれないし。

 判断の根拠となり得る情報のない内に考えるのはムダだというのは、冒険者になってから学んだことの一つだ。


「肥溜めガールにリッスンしてみるウェイはあるね」

「なるほど?」


 ほこら守りの村の幼女占い師マーシャか。

 確かにマーシャなら何か知ることができるかもしれない。


「よし、ダンテ賢い。マーシャのところは画集モデルの関係でどうせ行くから、その時にでも聞いてみようか。でも『焼け野原』だっけ? ザクザク宝箱続編は。本来の石板クエストだから先に行ってみないとね」


 うちの子達も頷く。


「よーし、御飯にしよっ!」


          ◇


「サイナスさん、こんばんはー」


 毎晩恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは。今日はレベル上げの日だったんだろう? 大体のことはクララ達に聞いてるけど』

「えらくおかしなことになったよ」

『……おかしなことがあったとは聞いてなかったな』

「あとから判明したんだ」

『君のやってることは大概常識を外れてるけれども』

「失敬だな」

『自分で告白するくらいならば、一般常識人からすると案外おかしくないのかもしれない』

「マジで失敬だな」


 とは言いながらサイナスさんも興味を持ってるのはわかる。


「あたしのレベル一〇〇超えちゃった」

『え? レベルの上限って九九だろう?』


 サイナスさんは素直に驚いてくれるなあ。

 うちの子達はこれくらいのことじゃ驚きゃしないからな。


「レベル上限が一五〇になる固有能力が発現したんだって」

『ちょっと待て。レベル上限が一五〇になる固有能力なんて、普通は役に立たないだろう?』

「昨日マルーさんに会った時、普通だと死に能力になっちゃうような固有能力が発現しているとは言われたんだ。何の能力かまで教えてくれなかったんだけど」

『ふうん。でも君今でも無敵だろ?』

「最強だけど無敵じゃないな」


 おっぱいさんには胸部装甲以外でも色々勝てない気がする。


『君にメリットはあるのか?』

「あたしの持ちスキルに、自分のレベル以下のザコ魔物を一撃で一掃するってやつがあるんだ。今まで例えばイビルドラゴンなんかはレベルカンスト扱いらしくて効かなかったんだよね。そいつらにも効く可能性が出てきたかな」

『つまり、イビルドラゴンをザコ扱いできるってことか』

「試してないけど多分」


 まあサイナスさんは呆れてるが、ウィッカーマンを『雑魚は往ね』で倒せるようになれば、もう一度赤の女王(仮称)にチャレンジできるかも。

 魔宝玉を展示して帝国から観光客を呼ぶ計画が本格化するなら、レベル上げとくのも必要かもしれないな。


『とにかくレベルは戻ったんだな? おめでとう』

「ありがとう」

『祝福は形にならないからな?』

「先回りされたぞ?」


 アハハと笑い合う。


「でも特別困ってはいないから、今以上のレベル上げを必死でやる気はないんだ。自然に上がってきゃいいかと」

『そんなことより明日、例の『光る石』スタンドでき上がりの日だろう?』

「おおう、そんなこと扱いされちゃったわ。赤の民の村へは午後に行くけど、サイナスさんはどうする?」

『オレも行こう』

「絵を置いてくるから、緑の村にも寄るけどいいかな?」

『ああ、画集も楽しみだな』


 『光る石』スタンドの完成が見たいのか。

 まだ試作品だぞ?


『明日午前中は?』

「塔の村だよ。三人娘の絵を描いてもらう予定なんだ」

『画集の案件が進むのはいいことだが、イシュトバーン氏、疲れてないか?』

「ツヤッツヤだよ。いい女に会えるとなると大喜びだもん」


 イシュトバーンさんに限って、いい女の絵で疲れるなんて心配はいらないのだ。

 むしろ間が空くと早くモデル寄越せとか言いそう。


「カラーズや開拓地は変わったことない?」

『特には。クレソンありがとう。早速貯水池の周りに挿してきて、移民達にも大事にしてくれって伝えてあるよ』

「春以降暖かくなるとわさーっと増えるはずなんだ。食の方でちょっと余裕ができて安心だよ」

『ああ。明日は久しぶりに輸送隊が出る。アレクは休みだが』

「ん、わかった。そんなとこ?」

『ああ』

「じゃ、サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日は塔の村からだな。

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