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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第785話:旅立つ新人、次の新人

「ではいきますよ。出でよ! 邪悪なる存在、テストモンスターよ!」


 これバエちゃんの決めゼリフみたいだな。

 ノリノリだし。


 戦士みたいなぼやけた影が現れた。

 レベル三で運動能力のあるボニーがテストモンスターなんかに苦戦するとは思わんけど、とりあえずやることやっとかないと落ち着かないわ。

 ボニーレッツファイッ!


「そいつ弱いぞ。あんたなら普通に勝てる」

「わかった!」


 ボニーの斬撃! うむ、もう少しだな。テストモンスターの攻撃を回避! やるね。ボニーの斬撃! 問題なく勝利だ!


「おめでとう! これでチュートリアルは終わりです。あとは実戦で頑張ってくださいね」

「パワーカードの使い心地はどうだった?」

「軽くて使いやすい。都会にはこんな武器があるんだって、誰かに見せたいな」


 えっ、都会とか田舎とか関係ないんだが?

 むしろ田舎の武器だと思うんだけど?

 誤解は誤解で面白そーだから放っておこっと。


「バエちゃんは言ってないと思うけど、丸っきり素人で『アトラスの冒険者』に入ってきた子の、最初のクエスト成功率って四割なかったそうな。言っとくけど最初のクエストって、村人から笑いをとるってことじゃないからな?」


 ちょっとボニーの表情が引き締まる。


「四割弱か。考えてたより随分厳しいな」

「武器なんか持ったことのない丸っきり素人ならばだぞ? そこでボニーの信じるレベルの出番だ。丸っきり素人とレベル三とでは全然違うのは知ってるでしょ?」

「ああ」

「バエちゃん、最初のクエストだとバトル系だよね?」


 バエちゃんが言う。


「石板クエストの配布はチュートリアルルームの管轄じゃないから、ハッキリしたことはわからないの。でも一般的にチュートリアル後の最初のクエストは、ほぼ最弱クラスの魔物単体を数回退治するクエストになるわ」

「スライムや大ネズミみたいのを一匹ずつ倒していくってことだぞ? 油断は禁物だけど、ボニーの実力とパワーカードがあれば、まあ達成できる」

「問題なさそうなんだな?」


 目尻が下がるボニー。

 タレ目が可愛いとゆーのに。

 ナチュラルにチャームポイントを強調してくるとはやるじゃないか。


「さあ、そこだ。実際にはどんな石板クエストが振られるかなんてわからない」

「ボニーさんにどういうクエストが回ってくるか、ユーちゃんがギルドで聞くわけにはいかないの?」

「守秘義務が絡むクエストとかがあるじゃん? 原則的にギルドの職員は、他人のクエストの内容については教えてくれないな」

「ああ、ギルドのルールなのね」


 逆に言えばクエストを請けるボニー本人が、他人に教えても構わないと判断したならいいわけだ。

 つまり全てはクエストを請けてから。


「さて、クエストを上手く完遂できなかった時どうするか? ボニーはどう考えてる?」

「あまり……考えてなかったな」


 うむ、『アトラスの冒険者』に対する不信が頭を占めてただろうからな。

 『アトラスの冒険者』になったあとのことは、ぼんやりとしか考えてなかったというのが本音だろう。


「『アトラスの冒険者』は結構な資金をかけて新人を送り出すんだ。一人前になれば依頼の手数料やアイテムの売買で儲けが出るけど、脱落しちゃうと何の得にもならない。結構な赤字損切りになっちゃうと思う」

「前の期はユーちゃんの活躍で、『アトラスの冒険者』始まって以来最高益が出たの!」

「あれで最高益だったのかよ。まだまだだなー」

「運営の仕組みがちょっとわかった気がする」


 ちょっとは怪しさが抜けましたか?


「だから新人が困ってたら助けろって制度が最近できたんだ。解決できないことがあったらバエちゃんに泣きつけ。いいね?」

「二、三クエストをこなすと、冒険者の集まるドリフターズギルドへ行けるようになるわ。ギルドでは様々な情報が入るし、仲間候補もいるの」

「まずギルド行きを目標にね」

「わかった」


 力強く頷くボニー。


「チュートリアル終了に伴い、次の『地図の石板』が発行されます。最初の石板と同じところに来ることが多いわ」

「『地図の石板』に触れると新しい転送魔法陣が設置されるんだったな」

「ボニーは恵まれてるよ。あたしが『アトラスの冒険者』になった時、バエちゃん肝心なこと教えてくれなかったぞ? だから毎日押しかけて聞き出そうとしてたんだ」


 今考えりゃデス爺やコモさんに相談してみる手はあったな。

 『アトラスの冒険者』自体を知らなかったし、いきなりハイパーテクノロジーを見せつけてくるとか現実離れしてたから、他人に話すことが憚られたわ。


「えっ? ユーちゃんが初めの頃しょっちゅうチュートリアルルームに来てたのは……」

「もー察してよ。あたしが脱落してたケースの給料査定でも考えながらさ」


 何バエちゃん青くなってるのよ?

 アハハと笑う場面だぞ?


「まず次のクエスト行ってみなよ。要領がわかるからさ」

「そうする。ユーラシア先輩、よろしくお願いします」

「お? おう」


 先輩呼びは初めてだ。

 新鮮だなあ。


「ではまた」

「じゃーねー」

「さようなら。頑張ってくださいね」


 転移の玉を起動したボニーの姿が掻き消える。


「基本真面目な子なんだろうけどなー」

「思ったより悪い子じゃなかったわ」

「悪い子は『アトラスの冒険者』に選ばれないって」


 ボニーはクエストで難儀することはないだろ。

 どこぞの引きこもりみたいに自宅警備に専念することもないだろうし、ギルドまで来れば仲間もできると思う。

 ツインズやノブ君と共同で、お互いのクエストをこなし合ってもいい。


「ところで、次の新人は決まってるの?」

「まだなの。移民の中から出す予定で選定を進めている最中だって。来月の頭になると思う」

「へー」


 来月の頭だったら、既に来てる移民の中から選ばれるのか。

 余裕のある人がいるかはともかく、おそらく移民に『アトラスの冒険者』を認知させる意図もあるんだろう。


「運営本部も考えてるね。移民の中から次の新人が出るなら、あたしも力になれると思うよ」

「あっ、ユーちゃんが協力してくれるなら助かる!」


 掃討戦跡地にしても聖火教本部礼拝堂のところにしても馴染みがあるからな。


「詳しいこと決まったら教えてよ」

「うん、わかった」

「じゃーねー、また来るよ」

「またね。待ってるわ」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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