第784話:新人ボニーの個性
ボニーが混乱を隠せぬまま、叫ぶように言う。
「じ、じゃあ本当にレベル一〇一なのか? 昨日レベル一だったじゃないか!」
「やり方を知ってて、それを行えるだけの実力と手段と装備があれば、レベルなんてすぐ上げられるんだぞ?」
「あはは。ここへ来る冒険者は皆、ユーラシアはデタラメだって言ってるわよ? ボニーさんもマネしようと思っちゃダメよ?」
「あたしは清く正しく美しく美しく物事を進めとるわ。誰だデタラメなんて言ってるのは。御飯を奢らせないといけない」
「今、美しくが二回入ってたわよ?」
「ちょっとしたサービスだよ」
アハハ。
ようやくボニーの表情が緩んできた。
うむ、その方がいいよ。
タレ目の人に厳しい顔は似合わないと思うぞ?
「ところでユーちゃん、また固有能力増えたの?」
「固有能力って人生波乱万丈だと増えることがあるみたいなんだよ。いや、あたし帝国で死にかけて、固有能力を一つ犠牲にして生き延びたらしいんだけどさ。レベルリセットで二つ増えたみたいなんだ」
「えっ、ちょっと待って! 色々わからない!」
かくかくしかじか。
帝国戦、飛空艇、潜入工作兵、悪魔バアルとの関わり。
「……覚えてる。先月一二の月の七日、切羽詰まった様子で私の村に一人の『アトラスの冒険者』が来たんだ」
「うん、近くに飛べる『アトラスの冒険者』が注意を喚起しに行ったんだと思う。ただその日の内に、塔の村に攻め込んだ潜入工作部隊を降伏させることができたから……」
「ああ、午後には全て終わったと連絡が来た。帝国で暴れたという話も本当なんだな?」
「本当だよ。帝国戦については以前にバエちゃんにも話してて、ゲラゲラ笑ってたわ」
慌てるバエちゃん。
「えっ? そういう言い方をされると、私がとっても不謹慎な人みたいじゃない。ねえユーちゃん、あの時の話をボニーさんにも聞かせてあげてよ」
「じゃあせっかくだから……」
帝国のテンケン山岳地帯で山ごもりしてた時の話をしてやる。
回覧板がインチキ横文字トーカーで十分おつりが来るのがどうのこうの。
「「あははははははは!」」
ハッハッハッ、二人の腹筋を絨毯爆撃したった。
「ああ、腹筋が痛い」
「お腹痛い、お腹痛い」
「どーだ、これが美少女精霊使いの鉄板話だぞ? とゆーかバエちゃんはこの話聞くの二回目だろうに、何でバカウケしてんのよ?」
「だってえ」
呼吸を整えたボニーが言う。
「決めた! 私は『アトラスの冒険者』になる!」
あれ、このタイミングで?
あたしの清く正しく美しく美しい活躍に感化されたか。
「ボニーさん、やっと活動してくれる気になってくれたのね!」
「はい、ボニーさんにインタビューでーす! 『アトラスの冒険者』になる、決め手は何でしたか!」
「私にも……鉄板のウケ話を語れると思ったから」
「「はい?」」
わけのわからん理由が来たぞ?
どゆこと?
こらボニー、モジモジすんな。
しっかり説明しなさい。
「私は……子供の頃から可愛げがない、つまらない子だと言われていて……」
「だろうね」
「おい、私の何を知っているんだ!」
可愛げがないのは自分で納得できるんじゃないの?
「どーしてあたしがボニーの何かを知ってると思うんだ。それはそれとして?」
「『アトラスの冒険者』になれば話題が増えるのではないかと」
「多くのクエストが回されるから、話題は増えるだろうな。だから?」
「つまらないと言われるのは心にグサッと来るから」
「つまらないと話題の豊富さは違うけどな。からの?」
「とにかく『アトラスの冒険者』で経験を……」
「ふーん、さらに?」
「こらっ、実は聞いてないだろう!」
「合格だよねえ?」
「十分ねえ」
「えっ?」
ポカンとするボニー。
わかりませんか。
「ボニーさんは決してつまらない子ではないわ。ツッコミ属性なだけだと思うの」
「周りにボケ属性がいなかったんじゃないかな?」
「ユーちゃんみたいにボケもツッコミもイケる人はなかなかいないのよ?」
「『アトラスの冒険者』はボケもツッコミもイケる人材を求めているのだ!」
こらバエちゃん、え? みたいな顔すんな。
そこはノってこい。
「『アトラスの冒険者』を始めるきっかけは何でもいいんだよ」
「ユーちゃんなんか、最初はここへ損害賠償請求しに来たんだから」
「もーまたそれ蒸し返すのかよ」
ボニーも目を輝かせんな。
「さて、話がくどいと嫌われるから次行こか。今ボニーはレベルいくつなんだっけ? 装備は?」
「レベルは三。装備は木刀とか棍は使ったことあるけど」
依然バエちゃんがボニーのレベルは二って言ってたけどな。
ホームで頑張ってレベル上げてたのか。
努力家は嫌いじゃないぞ?
「こういうものがあるんだ」
パワーカードを見せる。
「あっ、武器持ってたのか!」
「パワーカード。見せるだけで驚いてもらえる装備品だぞ?」
「すごい!」
予想してたのの斜め上の食いつき方だ。
まあいいけど。
「うちのパーティーは皆これ使ってるんだ。応用が利く、かさ張らない、七枚まで起動できるから、とりあえず枚数揃えれば強いっていう利点があるよ」
「しかも起動しただけでウケが取れるのか。素晴らしいな」
「そーゆーとこを利点に数えられる感性の、どこがつまんない子なんだよ」
「ボケ属性も持ってるのかしら?」
「こんなところにあたしの後継者が」
アハハと笑い合う。
出身がクルクルとかゆー自由開拓民集落だったっけ?
ボニーはまあまあ面白い子だわ。
クルクルにボニーを生かせる個性がいなかっただけだわ。
「ボニーさんのパワーカードよ。ユーちゃんが選んでくれたの」
「斬撃属性の攻撃用カード『スラッシュ』と、ヒットポイント自動回復付きの防御用カード『武神の守護』だよ」
「自動回復なんか気が利いてるとは思うけど、もう一つ面白みに欠けるな……」
「身体を張ってウケを取りに行くスタイルは、最近のトレンドじゃないんだ」
「そうだったのか。田舎に住んでると知らないことはあるな」
「バエちゃん、とっととテストモンスターを起動しておくれよ。これ以上はあたしの腹筋が試される展開になりそう」
真面目か知らんけど、常人とかなり感覚がズレてる弄り甲斐のある子だぞ?
ボニーは誰とコンビ組んだらもっと面白くなるだろ?
いかんいかん、エンターテインメント主体で考えてたわ。




