第782話:自分をパワーレベリング
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「あっ、ユーラシアさん?」
魔境にやって来た。
あたしが魔境に来るのなんか日常だろうに、何故オニオンさんが慌ててるんだ?
「ひょっとしておっぱいさんと進展あった?」
「静かに愛を育んでいますけれども」
「おおう、あんまりストレートだと、言われた方が恥ずかしいね」
やるじゃないかオニオンさん。
「いやユーラシアさん、悪魔のせいでレベルを一に戻されたとか聞きましたが?」
「悪魔のせいではないけど、レベルが一なのは本当。メッチャ不便なんで、今日はレベル上げに来たんだ」
「危険ですよ!」
「大丈夫だって、ほら」
ギルドカードを起動、掌を当ててステータスパラメーターを見せる。
「かなりステータスアップの薬草を食べてるから」
「あっ、本当ですね。レベルこそ一ですが、これなら……」
あたしは慎重派なので、無謀なことをやろうとは思わない。
今のあたし達でも、上級冒険者に近い中級冒険者くらいのステータス値はあるのだ。
「装備も揃ってるし、一度習得したスキルはまんま覚えてるんだ。だからウィッカーマン以外の人形系か、オーガ、ケルベロスくらいなら何とかなるよ。一体倒せばいくつかレベル上がるはず。もうその後は問題ないな」
「なるほど、納得しました」
安心していただけたようだ。
「行ってくる!」
「行ってらっしゃいませ!」
ユーラシア隊出撃。
◇
「姐御、今日はどうしやす? 最初が肝心だと思いやすが」
「その通りだねえ」
今のあたし達がどれくらい弱体化しているのか、ステータス値からの推測でしかわからない。
とにかく一体倒せば感覚も掴めるだろうし、レベルも上がる。
幸いベースキャンプには回復魔法陣があるから、倒して戻るを繰り返すつもりでいい。
「デカダンスに遭えればベストだけど、ドラゴン帯まで行くのはリスクが大きいね。クレイジーパペットを第一の目標にしよう。次善がケルベロスだな。クリティカルが怖いオーガはなるべくやめとこ」
「「「了解!」」」
「わかってると思うけど、ダンテは『実りある経験』使ってね。あたしとアトムは惜しみなく全力攻撃で行くぞー」
「「「了解!」」」
オーガ帯をウロウロ。
オーガがいるけどスルーだな。
よし、ケルベロスがいる。
「バックがシャインね」
「あっ、餌食にしよう!」
『エナメル皮』持ちのケルベロスだ。
レッツファイッ!
ケルベロスの通常攻撃! アトムが受ける。ダンテの実りある経験! ケルベロスの強撃! あたしが受ける。……割と痛いな。あたしのハヤブサ斬り・零式! よし、『暴虐海王』の効果でケルベロスを弱体化した! 『あやかし鏡』の効果でもう一度ハヤブサ斬り・零式! ケルベロスのファイアーブレス! 全員がダメージを受ける。クララの乙女の祈り! アトムの地叫撃! ケルベロスを倒した! ワンターンキルだ!
「リフレッシュ! 皆、大丈夫?」
「大丈夫です!」「問題ないぜ」「ヘッチャラね」
よしよし、『エナメル皮』をゲット。
レア素材じゃないけど、あんまり得られない素材だから何となく嬉しい。
レベルも上がったし、イケそう。
「さすがにレベルが低いとケルベロスでも苦戦するなー。『地叫撃』の即死効果が出たっぽい?」
「そうでやすね」
「ラッキーね」
「でもあたしのマジックポイントほぼ空だぞ?」
レベルが低いと『ハヤブサ斬り・零式』はツラいな。
凄草を食べてかなり最大マジックポイントは上がってるのに。
「一旦ベースキャンプに戻って回復しましょう」
「「「賛成」」」
帰り道に新経験値君ことクレイジーパペットと遭遇。
やったぜ、ラッキー!
「我が刀の錆にしてくれる!」
「パワーカードは錆びないですぜ?」
普通に実りある経験からの通常攻撃で倒す。
「リフレッシュ! おー、レベルが低いと魔宝玉もありがたみがあるねえ」
「ユー様はいつも感謝を忘れないですよ。口では」
こらダンテ、そのふーって顔やめろ。
ベースキャンプに到着。
「ただいまー」
「お帰りなさいませ。いかがでした?」
「レベル二桁になったからもう大丈夫だよ。でもマジックポイント空になっちゃったから、回復しに戻ってきた」
「そうでしたか」
オニオンさんニッコリ。
回復魔法陣を使用して再出撃。
「やっぱどー考えてもデカダンスがいいなー」
「もっともでやすね」
「バット、今のレベルでドラゴン帯は、まだデンジャーね」
となれば?
「真っ直ぐ突っ切るのは諦めよう。ワイバーン帯ならもう何とかなるから、西側からワイバーン帯を通って北辺の人形系パラダイスを目指すよ。基本クレイジーパペット以外は無視で」
「「「了解!」」」
大回りになるが仕方あるまい。
◇
「ようやく到着だー」
急ぎ足で来たものの、かなりの時間がかかったな。
レベルは二〇を超えたくらい。
「今日は新装備の無限ナップザックがあるから、いくらでもアイテム拾って帰れるぞー」
「『豊穣祈念』を使えないのが痛いですねえ」
「まあねえ」
今日はレベル上げが目的なので、ダンテが使用するスキルは『実りある経験』になる。
でもドロップ・レアドロップ確率上昇装備『るんるん』は装備してるから、そこそこは期待できるんじゃないかな。
「『豊穣祈念』を使いながらの満ち足りた魔境探索は、来たるべき日の楽しみに取っておこうじゃないか」
「来たるべき日とは、明日以降のことでやすか?」
「そうそう」
何故なら今日中にレベルカンストさせる予定だから。
「ブロークンドール三体ね」
「よーし、ありがたく経験値と魔宝玉になっていただこう!」
「「「了解!」」」
以後も人形系レアを倒しまくり、昼にはレベル四〇を突破した。
「しまったなー。一つくらいワイバーンの卵拾っとくんだった」
「残念ですけど、余裕がなかったですねえ」
お弁当を食べながらうちの子達と話す。
ワイバーンをターゲットにしてる暇は確かになかった。
「これからもこのメソッドでゴーね?」
「少なくともレベル五〇を超えるまではね。デカダンスを中心に倒して経験値を稼ごう。今のあたし達だったら、レベル五五あればウィッカーマンも倒せると思うんだ。そーなりゃ勝ったも同然」
皆が頷く。
レベルも五〇が近付くとなかなか上がらないものだが、ウィッカーマン倒すとウソみたいにポンポンレベル上がっていくからな。




