第779話:精霊使いの取立ては世界一厳しい
フイィィーンシュパパパッ。
「やあ、いらっしゃい。チャーミングなユーラシアさん」
「こんにちはー、ポロックさん」
ギルドにやって来た。
正直者ポロックさんのいつものセリフに満足する。
「今日は遅いね?」
「うん。ペペさん誘って、イシュトバーンさん家で夕御飯をいただくんだ」
「ハハッ、そうだったのかい」
ギルド内部へ。
あ、ヴィルはおっぱいさんに遊んでもらっていたか。
「御主人!」
ヴィルが飛びついてくる。
よしよし、いい子だね。
ぎゅっとしたろ。
おっぱいさんが話しかけてくる。
「今日、ノブ君がドリフターズギルドまで来たんですよ」
「ついに来たか。やるねえ」
ノブ君はカトマス出身、最年少一〇歳の『アトラスの冒険者』だ。
「一人で来たの? ニート連れ?」
「ニート連れです」
あんちゃんのヨブ君も来たか。
べつになけなしのやる気を起こしたわけじゃなくて、おっぱいさんを見たかっただけだろうけどな。
「あの二人、字の読み書きができないんだよ。依頼受けるのに苦労すると可哀そうだから、『初心者の館』を紹介してあげてくれる?」
「はい。もう地下に行ってましたよ。おそらくポロックさんに聞いたんだと思います」
「ノブ君はやる気あるなあ。どうせノブ君の転移の玉がなければ帰れないから、覇気なし男ヨブ君も強制的に勉強タイムになるだろ」
「いいことだと思います」
笑い合う。
ちょっと声を潜めて聞く。
「オニオンさんとその後どう?」
「ダンさんが時々間に入ってくれるようになったんです」
「よしよし、ダンはいい仕事してるな。じゃあサクラさんさいなら」
「バイバイぬ!」
「ではまた」
サクラさんと別れ、お店ゾーンへ。
「たのもう!」
「たのもうぬ!」
「ふあっ?」
突っ伏していたオリジナルスキル屋の店主が飛び起きる。
「迎えに来たよ」
「あっ、待ってた!」
ペペさんはいつもと同様、変な寝グセついてるし頬っぺたまでよだれでガビガビだし真っ赤な口紅べろーんだ。
およそ世界でバカ売れする画集(予定)の美人モデルに見えないけど、元がいいことには間違いない。
まあイシュトバーンさんが何とかするだろ。
「イシュトバーンさん家行くよー」
「うん!」
フレンドで転移の玉を起動し帰宅する。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「おう、来たか精霊使いとペペちゃん。ようこそ」
「だから何でここにいるの。カゼひくってば」
「お招きありがとうございます、イシュトバーンさん」
イシュトバーンさん家は広い。
そして何故か隅っこの転送先で待ってるイシュトバーンさん。
あたしはこれだけの広さがあると、何作れるか考えちゃうんだよな。
職業病だろうか?
「御主人、わっちの絵も描いてもらったんだぬ」
「よかったねえ」
「百獣の王のポーズだぬ!」
「幼女悪魔はあれが一番魅力あるぜ。ペペちゃんの絵とともに、明日には完成だ」
「ありがとう、イシュトバーンさん」
ヴィルが嬉しそう。
屋敷に上がる。
「おい、化粧と髪型直してやってくれ」
「「はい」」
お付きの女性二人がペペさんの身なりを整えていく。
「今日時間少し早かったかな?」
ギルドが引ける前だったからな。
「いや、先に絵を描くからちょうどいいぜ。ペペちゃんは食べ始めると絵どころじゃなくなるだろ?」
「あ、ペペさんの大食い知ってるんだ?」
「まあな」
ポーズは?
ふむふむ、座卓に座らせて足を伸ばし、あのデカい杖を抱えると。
なるほど、可愛い系魔道士だな。
「同じ魔道士ルックでも、エロスなセリカとは違う感じになるねえ」
「ああ。でもあんたが思ってるのとも違う感じになるぜ? 多分な」
「ふーん?」
何が違うって言うんだろ?
輪郭が取れてきたが、ここまでじゃわからんな。
「で、その籠の中にいるやつが、本日の面白案件だな?」
「第二皇子と組んでた悪魔バアルだよ」
「吾の名はバアル! 以後見知りおけ」
「ほお?」
チラッとこちらを見るイシュトバーンさん。
ちっとも驚きゃしねえ。
イシュトバーンさんをビックリさせるのって結構大変だ。
「あんたはバアルにレベルドレインでも食らったのか?」
「いや、違くて。捕まえるのにレベル全部コストにするって魔法使ったんだよ。ペペさんが作ってくれたやつなんだけど」
「ハハッ、結構な魔法だな。思い切りがいい」
心底楽しそうだな。
「どうせ気が向いたらレベル上げるんだろ?」
「飛行魔法使えないのがメッチャ不便なんだよ。明日上げてくる」
版画屋に歩いてくのがかったるかった。
特に今日、いろんなところ行ったからなー。
「おいバアル、天下にその名を知られた精霊使いユーラシアに代償負わせるなんてすげえじゃねえか」
「ハッハッハッ、吾を崇めるがよい!」
「しかし、調子に乗り過ぎたな」
「えっ?」
不穏な空気に心配そうな小物。
「どうして自分が生かされてるか、考えてみたか? 精霊使いの取立ては世界一厳しいんだぜ?」
「ひっ、ひえええええええええええ!」
今日バアルはバラエティに富んだ脅かし方されてたけど、イシュトバーンさんみたいなトリッキーな言い方する人は初めてだな。
おまけに悲鳴が一番大きいぞ?
「もー可哀そうだよ。この子面白いから飼うことにしたんだ」
「あんたならそう言うと思ったぜ」
アハハと笑い合う。
ある程度絵が描けてきたが……。
「……何とゆーか、妖艶だね?」
「だろう?」
可愛い方向に寄ってることに間違いはないのだが、表情や佇まいがえっちなのだ。
おかしいな?
実物と見比べてどこがどう違うってわけでもないのに、どーしてこうなる?
「心眼を駆使して描いてるんだぜ」
「心眼かー」
見えないものを見て描いてるのか。
「塔の村の三人娘だけど、明後日の午前中が都合いいんだって。イシュトバーンさん大丈夫?」
「おう、問題ないぜ」
「じゃ、九時から一〇時の間くらいに迎えに来るよ」
「ん? 遅くねえか?」
「リリーの起きる時間が遅いから」
「ああ、朝寝坊だという話だったな。よし、描けたぞ」
興味津々でペペさんがにじり寄ってくる。
「どお?」
「どうもこうも。安定のクオリティだよ」
「ハハッ、傑作だぜ」
「わあ、イシュトバーンさん、ありがとう!」
無邪気に喜ぶペペさん。
こういうとこ幼女っぽいなあ。
お礼の透輝珠を渡しておく。
「ありがとお!」
「さあ、飯だ」
「ゴチになりまーす!」
「ゴチになるんだぬ!」




