第778話:あんたがちょろいと信じてる
「ただいまー。今日のノルマは終わった!」
予定のバアルお詫び行脚は終了した。
わかっちゃいたけど、聖火の結界で未来永劫閉じ込めておくの干からびるまで魔力を抜き尽くすの唐竹割りか横薙ぎだの、実力者達にえらい恨まれてるのな?
バアルを料理するのにはいろんな方法があるんだなあ、と思った。
「ユー様、お帰りなさい」
「どうだった?」
うちの子達には海岸でのアイテム回収と昨日得たお宝の検証、転送魔法陣のチェックを行ってもらっていたのだ。
「新しい『地図の石板』は、海岸に来てなかったでやす」
「クエスト終了のアナウンスもなかったしな。すると昨日の宝箱に入ってた石板は、イレギュラーのクエストだね」
「それが変なんで」
「変?」
転送魔法陣の並ぶ我が家の東側の区画へ。
新たに出現した一八個目の転送魔法陣の上に立つ。
事務的な声が聞こえてきた。
『この転送魔法陣を使う資格を満たしておりません』
「資格?」
『……』
これ以上は話さないっぽい。
ノリが悪いとゆーか、いけずな転送魔法陣だな。
「資格か、どう思う?」
「レベルが足りないということではないでしょうか?」
「大いにあり得るね。鼻水垂らしてないと転送させてやらんとかの資格だったら、乙女の尊厳がピンチだよ」
うちの子達が笑う。
『アトラスの冒険者』は、ムリなクエストを冒険者に振らないってことだった。
その安全機能かな?
ま、どっちにしてもレベル上げが先で、クエストはあとだ。
検討するのはレベル上げする明日以降でいい。
「まだストレンジなことがあるね」
ダンテがザクザク宝箱の転送魔法陣に立つ。
『焼け野原に転送いたします。よろしいですか?』
「あっ、転送先変わったんだ?」
しまった、銅鑼を回収してくるの忘れたな。
「ネームが変わっただけかもしれないね」
「姐御、クエスト完了の通告がなかった上に、バアルの宝箱のクエストとしては区切りがついていやす。新展開でやすぜ」
「むーん?」
ザクザク宝箱クエストには続きって、ちょっと想像できないな?
「バアル、あんた何か知ってる?」
「あの宝部屋の外には一面焼けた跡があったである。焼け野原とはそのことやもしれぬ」
「あの部屋から外に出られるの? ドアとかなかったと思うんだけど?」
「出られるのである。壁の一部がカラクリ扉になってるである」
「カラクリ扉があるんだ? 情報ありがとう」
非常時には壁ぶち壊すつもりでいたから注意してなかったな。
もっとも転送先は部屋の外かもしれんけど。
「レベルが上がってから行ってみようか」
「「「了解!」」」
よし、お宝の検証だ。
「ユー様、このナップザックはすごいです。ほぼ無限にものが入るようです」
「何だとー? ワイバーンの卵Aやワイバーンの卵Bやワイバーンの卵Cまでもが入っちゃうってこと?」
「はい」
「メチャメチャ便利やん!」
ベースキャンプ出撃直後に手に入れてしまうワイバーンの卵とゆートラップを無効化できる、素晴らしいアイテムじゃないか。
「インフィニティストレージの一種である。便利であろう?」
「さすが大悪魔のお宝だけあるなー」
「ハッハッハッ、吾を崇めるがよい!」
袋の口から入れられるものならば際限なく入るらしい。
細かい条件はイシュトバーンさんに聞いてもいいな。
「魔境サーチが捗るね」
「まあねえ……」
「何か考えていますか?」
「聖風樹の箱を一個、あのナップザックに入るくらい小さく作り変えてもらって常備しとくじゃん? 凄草拾っちゃった時も続けて探索できるんじゃない?」
「姐御、冴えてやすね」
「ハッハッハッ、あたしを崇めるがよい!」
ザクザク宝箱クエストがなくなったので、今後は再び魔境に行く機会が増えるんじゃないかな。
となるとこのナップザックは非常に有用だ。
ヴィルに持ってきてもらったセレシアさんの絵を版画屋に持っていくから、黄の民に寄って小さい箱作ってもらお。
「あの振り子のマジックアイテムは何なの? ちょっと気になるんだよね」
「ペンデュラムであるか? 目の前で振ると、相手を催眠にかけられるである」
やはりヤバめのアイテムだった。
触らんどこ。
使う機会があるかな?
「昨日のお宝でよくわかんないのはそれくらいだったかな? あ、パワーカードは何だった?」
「『癒し穂』『マスターソード』『キントーン』でやす」
『キントーン』は[騎]敏捷性+一五%、回避率+二〇%、火/氷/雷無効だそうな。
[騎]カードのパフォーマンスが突き抜けてるのはわかってたけど、火/氷/雷無効ってのはすごいな。
ウィッカーマン怖くないじゃん。
「ユー様、一昨日の大きなマジックアイテムの甕は何でしょう?」
「あったあった。バアル、あのデカい甕は何?」
「世界の大秘宝である。中に液体を入れて記憶させ、スイッチを押すと、記憶させた液体が甕一杯に湧き出るというものである」
「すごいものだね。さすがバアル」
いろいろ有用な利用法が考えられるな。
考えるのはいずれでいいか。
「で、バアルがくれたお宝の中で一番の謎なんだけど、あの『地図の石板』はどうやって手に入れたの?」
「どうしたといわれると困るのであるが、いつの間にか手元にあったのである。本当である! 本当であるぞ!」
何か慌ててるけど。
どーしたバアル。
「別に疑ってないってば。あんたほどの誇り高き大悪魔が、つまんないウソなんか吐くはずがない」
「その通りである。誇り高き大悪魔バアルは偽りなど申さぬのである!」
どういう基準で配られてるのかは知らんけど、ギルドから配給される以外のエクストラな石板がある。
ほこら守りの村の少女霊リタや海の女王も、バアルと似たようなことを言っていた。
この辺考えても仕方がない。
『アトラスの冒険者』のミステリーな部分だ。
「じゃあ当然使用するのに必要な資格ってのもわかんないよね?」
「わからないである」
「うん、ありがとう」
バアルは意外だったようだ。
「貴女は吾がわからないことに関して、疑ったり怒ったりしないのであるか?」
「わかんないことはしょうがないじゃん。人間だもの」
「吾は人間ではない! 誇り高き大悪魔である!」
「あっ、そーだった」
信じてるんだってば、あんたがちょろいって。
「あたしは絵を置きに緑の民の村行ってくるね。帰ったらギルドにペペさん迎えに行こうか」




