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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第774話:新人に初めて会えた

 フイィィーンシュパパパッ。

 チュートリアルルームにやって来た


「バエちゃん、おっはよー」

「あっ、ユーちゃんいいところに!」


 慌てた様子のバエちゃん。

 今日お土産ないよって言う暇もなかったわ。

 で、知らん子がいるな?


「新人『アトラスの冒険者』のボニー・ギャレットさん」

「新人って女の子だったんだ?」

「まだ新人と決まったわけじゃない」


 おお、突っかかってくるじゃないか。

 あたしに対して無遠慮な視線を寄せてくるが、バエちゃんと似た感じのタレ目なのでユーモラスな感じだ。

 あたしより若干背は低いか。

 グレーのクセっ毛で、えんじのバンダナを巻いている。

 ふむ、武器さえ持ってりゃ初級冒険者って感じだね。


「ドーラ最強のパーティーを率いる、ユーラシア・ライムさんよ」

「ウソだ! 私よりレベルが低いじゃないか!」

「えっ? どういうこと?」

「まあ、あたしくらいの冒険者になると色々あるんだ」


 バエちゃん、オロオロすんなよ。

 ボニーは『サーチャー』の固有能力持ちで見ただけで正確なレベルわかるって言うけど、どーも他人の実力を測れるってわけじゃないらしいな。

 レベル上がってくりゃ自然に感じられるようになるもんだが。


「で、ボニーは何でこんなところでウジウジしてんのよ? バエちゃんから『アトラスの冒険者』の説明聞いたんでしょ? じゃあやってみるしか、選択肢なくない?」

「……バルバロスさんから精霊使いユーラシアに会ってみろって言われた」

「おおう、なるほど」


 バルバロスさんを知ってる子だったのか。

 確かに『アトラスの冒険者』みたいなわけわからんものに入る前に、実力者の意見を聞きたくなるわ。

 納得した。

 苦々しげにボニーが言う。


「バルバロスさんがすごく褒めてたから期待してたんだ。まさかこんな低レベルだと思わなかった」

「うーん、あんたは『サーチャー』の能力持ちなんでしょ? 見えてるレベルが絶対だと思わない方がいいよ」


 キッと睨んでくるボニー。


「レベルの低いやつの負け惜しみだ!」

「わかんないかな? じゃああたしに触ってみなよ」

「えっ?」

「あたしがあんたを持ち上げる前に、あんたがあたしに触れたら勝ち、どう?」

「バカバカしい。私が勝つに決まってるじゃないか」

「やってみそ?」


 レッツファイッ!

 確かにステータスアップ薬草分のパラメーターは有効みたいだな。

 中級冒険者以上ってのも本当みたいだ。

 ボニーになんか負ける気しないわ。

 真っ直ぐ突っ込んで来たんで、くるっと後ろに回ってえいやと持ち上げる。


「ユーちゃん、すごーい!」

「ま、まぐれだっ!」

「かもね。もう一回どーぞ」


 ボニーを降ろす。

 何度やっても一緒だぞ?


 ――――――――――数分後。


「はあはあ、こ、こんなバカな」


 へたり込むボニー。


「うーん、レベルが低いと疲れるなあ。腕がちょっと痛い」

「か、カラクリがあるはずだ!」

「あるよ。でもボニーに見えてるレベルだけが全てじゃないってことは、今ので理解できたでしょ?」

「そ、それは……ああ」


 ボニーがあたしを見上げながら言う。

 少しは話聞く気になっただろ。


「納得せざるを得ない。バルバロスさんの言ってたのはこういうことだったのか」

「いやー、バルバロスさんはこんな小手先の技をどうこう言ってたんじゃないと思うがな」

「でもユーちゃん、レベルはどうしちゃったの?」

「これ捕まえるのに必要な魔法のコストが、持ちレベル全部だったんだよ」


 籠を見せる。


「何なの?」

「悪魔。ドーラを戦乱に陥れようとしたとんでもないやつ」

「「えっ?」」

「いや、まあレベル下がったのは私事だからどうでもいいんだ。何でボニーは『アトラスの冒険者』にならないの?」


 顔を背けるボニー。


「……信用できないからだ」

「わかる。だろうとは思ってたけど」

「えっ、ユーちゃんまで何で?」


 バエちゃんが心底わからんと言う声を上げるが、当たり前だぞ。


「ハイテク見せつけてくる割には、運営母体が意味不明過ぎるんだよなー」

「まさにそれ!」

「か弱い女の子が身を投じるには、胡乱で怪しくていかがわしいんだよなー」

「まさにそれ!」


 すげえ頷くボニー。


「で、でも皆納得して冒険者になってくれるんだけど」

「メリットの方がうんと大きいからね」

「「えっ?」」


 あんたら立場逆だろうに、どーしてここで声が揃うのよ?

 一種のエンターテインメントかな?


「バエちゃんにはわかんないかもしれないな。ドーラは隣の村にちょびっと遊びに行くのだって大変なんだよ。魔物がいるから。確かに冒険者という職業は危険ではあるけど、行動範囲を格段に広げてくれる『アトラスの冒険者』が与えてくれるものは大きい」


 二人が頷く。

 ふむ、ボニーは『アトラスの冒険者』のメリットは十分理解してるっぽい。

 バルバロスさんと話したなら当然だが。


「ボニーも既に転移の玉のヤバさには気付いてるでしょ? それ以外に三〇〇〇ゴールド分の武器防具が支給されて、クエストを進めれば転送魔法陣で行けるところが増える。怪しげな謎はあっても、一〇〇年以上にもわたって安定して運営されてる、人々にある程度認知されてるとなれば、やってみないと損だぞ?」

「で、でも……」


 まだ迷いがあるか。

 『アトラスの冒険者』が意味不明過ぎるのがいけない。


「じゃあ明日の午後四時過ぎ頃、もう一度チュートリアルルームへ来なよ。あんたの信じられるものを見せてあげるから」

「私の……信じられるもの?」

「そしたら『アトラスの冒険者』になってくれる?」

「……わかった!」


 瞳に覚悟の色が見える。

 いいだろう。


「また明日来る」

「じゃーねー」

「さよなら」


 転移の玉を起動して去ってゆく。

 バエちゃんが心配そうに聞いてくる。


「ユーちゃん。ボニーさんは大丈夫そう?」

「問題ないな。今帰る時すごくいい顔してたもん。ところでボニーのステータスパラメーターはどんなもん? 運動能力はありそうだったけど」

「攻撃力と敏捷性の高いスピードアタッカータイプね。魔法力はかなり低め」

「武器はまだ持ってないんだよね? 初期装備用にパワーカード『スラッシュ』と『武神の守護』を取り寄せといてよ」

「わかったわ」


 女の子の物理アタッカーは軽いパワーカードが向いてるわ。


「じゃ、明日午後また来るよ」

「うん、待ってる」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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