第769話:バアルを捕獲
やってることが大胆な割に、精神攻撃には弱いんじゃないかと思われる悪魔バアルの声が震える。
「わ、吾が『抑圧者』だと……」
「あんたを対象としたマジックポイントを使用するアクションを封じるっていう、結構な固有能力みたいだねえ。ただし有効範囲は限定されてるでしょ? 遠距離からの魔法は発動を止められない」
「……!」
バカめ、態度が肯定しとるわ。
以前、遠くからダンテの最強魔法で更地にしてクエスト終わらせちゃおうと言った時、おそらくバアルが潜んでいた宝箱の中から、ビクッとした気配があったのだ。
皆が怖いというキメ顔を見せ、バアルに告げる。
「塵になれって他人に言うなら、自分が塵になる覚悟がないといけないねえ」
レッツファイッ!
ダンテが逃封の札を使用! あたしの通常攻撃! 『あやかし鏡』の効果でもう一度通常攻撃! アトムの通常攻撃! クララの通常攻撃! バアルは逃げようとするが逃げられない!
「うーん、やっぱりダメージ入りにくいねえ」
衝波属性の『アンリミテッド』を装備しているあたしの攻撃は入るのだが、アトムとクララの攻撃ではほとんど削れない。
元々高位魔族は物理攻撃に対して強い上、いろんな属性に対して強度の耐性があるからだろう。
『雑魚は往ね』に対してはボス補正があるかも?
まあ逃げられない内に距離を取って、ネタ魔法『デトネートストライク』を遠くからぶちかませば終いなのだが……。
「姐御、どうしやす?」
「……やっぱこれか。皆ごめんね。ロック&デス!」
「バカめ、魔法など……」
言いかけたバアルが硬直、驚愕の表情になる。
小さい身体がより小さくなり魔力が霧散、掌に乗るくらいの小さな籠に押し込められる。
おおう、何度も使える魔法じゃないけど、一見の価値のある効果だな。
さすがペペさんが作っただけのことはある。
「こ、これはどうしたことだ! 何故吾は捕まったのであるか?」
うろたえるバアル。
ハプニングに弱い子かな?
「これはパーティーのレベル全部使って無力化する魔法だよ。マジックポイント使わないし、あたし達のパーティーは全員がレベルカンストしてたから、理論上どんな敵にもかかるんだそーな」
「パーティーのレベルを全部コストに使うだと? そ、そんな魔法が……」
「レベルはまた上げるからいいんだ。ちょっと面倒ではあるけど、久しぶりに低レベル状態も楽しんでみようかと思ってる」
「なっ、なっ、なっ、何と非常識な……」
ハハッ、褒め言葉かな?
こいつは自分が常識的だとでも思っているのだろうか?
「まあ観念しなよ。あんたはあんたで面白い子だから、プチる気はないんだ」
「な、何だと!」
「んー? 囚われの身になるくらいならプチられたい子だった?」
「そ、そんなことないである!」
慌てて答えるバアル。
だからそーゆーとこが小物なんだって。
「じゃあ、あたしに誓いなさい。今後集団の人間に迷惑かけることはしないと」
「悪魔バアルの名と存在にかけて誓うである!」
クララが頷く。
悪魔にとって契約は絶対だそうだ。
これで大した悪さはできまい。
さて、ここからはバアルと交渉だ。
「これ変わった効果の魔法でさ。籠ごとプチるとあんたは死んじゃうんだよ」
「……」
「ガッカリすることないぞ? 解放する条件がわかんないから、今からこの魔法作った人に聞きに行くけどいいかな?」
「もちろん構わぬであるが……吾を解放してくれるのであるか?」
意外そうなバアル。
「あんたはバアルの名と存在にかけて誓ったじゃないか。もう大した悪さはしないって」
「確かに誓ったである」
「あたしはあんたがウソ吐くようなゲスな悪魔には見えないから、解放してやってもいいかと思ってる。でも当分はダメだぞ? まずあんたが迷惑かけた人に謝ってから」
「わ、わかったである」
クララが聞いてくる。
「ユー様。『デトネートストライク』を撃ち込んで消滅させた方が、後々問題が起きなくてよろしかったのではないですか?」
「何を言うか、この幼女精霊めが!」
ビビって大声を出す悪魔バアル。
「うーん、この部屋がなくなるとガンガンするのに困るから」
「今から潰しちまえばいいでやすぜ」
「でもなー。あたし達のレベルを下げた分、何か面白いものを見せてもらわないと割に合わないでしょ?」
「極めてボスライクなリーズンね」
「あたしは常に首尾一貫してるからね。さあ、ガンガンしてから帰ろうか」
「「「了解!」」」
「やめるである!」
「やめない」
バアルが泣き出すまでガンガン銅鑼を鳴らし、転移の玉を起動して帰宅する。
……転送事故起こさないとこみると、籠に入ってれば一人前扱いされないっぽいな。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「やあ、いらっしゃい。チャーミングなユーラシアさん」
「こんにちはー、ポロックさん」
ギルドに来たが?
どうしたポロックさん。
不審げな顔ですね?
「ユーラシアさん、今日はどういうわけか、チャーミングな上にキュートだね?」
「というかあんた、レベルはどうした?」
ダンまでやって来た。
「レベル下がっちゃった。この子捕まえるのに必要でさあ」
「……高位魔族だね?」
ポロックさんの目が細くなる。
「帝国の第二皇子の裏にいて、ドーラとの戦争を画策した悪魔だよ」
「「ほう?」」
ダンが言う。
「ああ、思い出した。ペペさんの魔法か。レベル全部使って拘束するっていう」
「よく覚えてたね」
「ユーラシアがレベルを犠牲にしなきゃいけないほどの強敵だったってことか?」
「いや、逃がすと面倒だから。もういいけどね。大げさな悪さをしないこと誓わせたんだ」
「悪魔の契約誓約は絶対だね。いいでしょう」
ポロックさんもホッとしたようだ。
「で、あんた何しにギルドへ来たんだ?」
「ダンに奢られに」
「そう言うと思ったぜ。奢るから詳しい話聞かせろ」
「やたっ!」
もちろん話すってばよ。
うちのパーティーにとっては全員のレベルを犠牲にしてまで得た、取っておきのネタだしな。
とゆーかバアルの言うことも聞きたいな。
「今日ペペさんいるかな? この魔法解ける条件がわかんないんだよね。ペペさんに聞かないといけないの」
「おう、魔法の効果も面白そうなネタだな。ペペさんなら寝てるぜ」
「アハハ、当たり前のように寝てるんだなー」
ギルド内部、お店ゾーンへ。




