第763話:出国税とドーラ遠征の関係
――――――――――一四九日目。
朝食後にうちの子達とちょっとした話をする。
まあ今日やることは肉祭りと決まっているのだが。
「はい、今日はお肉の日です」
「ミートデーね?」
「そーだ、ミートデーだ。実にいい響きだな、ミートデー。二日に一日くらいあってもいいな」
「二日に一日って。じゃあユー様。ミートデーじゃない日は何の日ですか?」
「ミートデーイブだね」
アハハと笑い合う。
「大好きなお肉を狩りまくれる日だからと言って、羽目を外してはいけません」
「姐御、それ自分に言い聞かせてやしませんか?」
「うん、何か楽しみ過ぎてすごく早く起きちゃったよ。あたしらしくもない」
楽しみ過ぎて、だけではないな。
毎日が楽しい乙女なあたしの睡眠時間は削るにはパワー不足だから。
今日は何か重要な事件があるのではないかと思われる。
あたしのカンが感知しているのだ。
「……ユー様、何か?」
「ん? いや、特にどうってことは」
付き合いの長いクララは、あたしの様子から何かあると気付いたようだ。
だけどあたしのカンもふんわりなんだよな?
「気を引き締めていきまっしょい!」
「姐御、今日の方針は? 肉祭りしか決まってることがないでやすぜ」
「大雑把に午前中肉祭り、午後ザクザク宝箱クエストでよくない? とりあえず」
突発的に何か起きそうという予感はあるが、さすがに予定に入れられないしな。
「せっかくですから、早めにコブタ狩りしておいた方がいいでしょう。運搬係を待たせないですみます」
「レッツゴーね」
「よーし、行こうか!」
「「「了解!」」」
本の世界へ。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「アリス、おっはよー!」
本の世界にやって来た。
マスターであるアリスに挨拶だ。
「おはようございます。こんなに早い時間に来るのは初めてではなくて?」
「うん、今日は大量肉狩りに来たんだ」
「そう。張り切ってるのね」
「張り切ってるんだよ。いや、張り切ってる暇があったら作業を進めないといけないのかな?」
「えっ?」
アリスが混乱してるような顔をしている。
ジョークだってばよ。
人形の表情が変わるわけじゃないけど、何となくわかるんだよな。
「そーだ、アリス。帝国から移民が来たんだけど、出国税の関係かなんかで、持ち物を取り上げられちゃってたんだよ。何か知らない?」
こういうことこそアリスがよく知ってそうだ。
でも出国税がどうのこうのなんてのは完全に予想外だったから、アリスに聞けなかったんだよな。
後手に回るのは悔しいが。
「約三年前にドーラは従順な植民地の指定から外されたのよ。自動的に法に基づいて出国税が引き上げられました」
「ふーん。帝国からドーラが従順って見做されなくなった理由は何なのかな?」
「海の王国の存在でドーラ近海の自由航行が妨げられていることと、魔物が多く計画通りに開発が進まないことよ」
「そんなん初めからだし、改めてドーラ植民地が何かしたってわけじゃないじゃん。バカバカしい」
カル帝国にはカル帝国なりにドーラを開発する計画があったらしい。
全然おゼゼが投下されてるような気はしなかったけど、どうせレイノスくらいにしか恩恵がなかったんだろ。
魔物をどうにかできるならして欲しいわ。
おゼゼを効果的に投入すれば可能だったかも。
とゆーのはひとまず置いといて。
「……ドーラが従順指定から外されたのは恣意的なものを感じるな。帝国がドーラ遠征を考え始めたのはいつ頃から?」
「わからないけど、『ドーラ再征服計画の勘案書』が提出されたのが二年少し前ね」
「少なくともそれより前に考慮されてたってことか」
「勘案書とほぼ同時期に、飛空艇計画が秘密裏にスタートしているわ」
「ふんふん」
飛空艇についてアリスの知ることも多くなっているらしい。
おそらく以前ほど厳密に機密を守る必要がなくなったことと、墜落後の調査書報告書が増えたことからだろう。
「ちなみに第二皇子ドミティウス殿下が主席執政官になったのはいつかな?」
「六年前よ」
第二皇子が主席執政官としての地歩を固めて、ドーラ遠征を目標に据えたって考えると時間的にはピッタリ。
全部繋がってくるなあ。
第二皇子とベッタリの悪魔バアルが関わっているのもその頃からなんだろうか?
「出国税は改正されるのかな?」
「帝国の非従順植民地が友好国として独立したケースは今までにないのよ」
「なるほど?」
じゃあ必ずしも嫌がらせや情報不足で法整備が遅れているわけではない?
「急ぎ法整備が進んでいるわ。来月の移民の出国税は大幅に引き下げられる見込みよ」
「わかった。ありがとう、アリス」
さて、お肉狩りだ。
転移の玉はどれくらいまで持って帰れるんだろうな?
今日は転送事故なんか起こしてる場合じゃないし。
まあ過去の経験から一〇トンまでは大丈夫。
「一〇トンずつ持って帰って、家の北側敷地外に積んどくのがいいかな?」
「そうですね。間違いないと思います」
「よし、一〇トンずつで!」
「「「了解!」」」
◇
「おーい、遅いぞー!」
「「「「……」」」」
台車を引いたカラーズ各村の運搬係がようやく到着した。
うずたかく積まれたコブタマンの山を見て絶句する面々。
ハハッ、気分がいいなあ。
「早く持っていっておくれよ。崩れると我が家が潰れちゃう」
「は、はい」
「これはどこで解体してお肉にする予定だったの?」
「各村で分配して行うはずでしたが」
「結構時間かかっちゃわない?」
各村の解体処理能力がどれくらいあるか知らんけど。
ま、いいや。
あたしの考えることじゃない。
「あたし達はとりあえず二〇トン持って、移民来てる開拓地の方へ行くよ。皆は村へ持っていってお肉にして、半分は各村のもので、もう半分は移民用に転移石碑で運んでくれるかな?」
「えっ? これは移民用の肉じゃないんで?」
「何言ってるんだ。全部が移民用ではないよ。そしたら君達タダ働きになっちゃうじゃないか。皆でお肉食べようぜ!」
「「「「おう!」」」」
肉祭りを勘違いしてたのかな?
皆で楽しんでこそ祭りだぞ?
「足りなきゃもっと狩ってくるから」
「「「「いやいやいやいや!」」」」
「遠慮深いね。じゃ、運搬よろしく」
あたし達はクララの高速『フライ』で、コブタ二〇トン及び運べる限りの聖風樹の箱とともに開拓地へ飛ぶ。




