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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第761話:かれえをどう使う?

「こりゃあ美味い! 食ったことのない味だ」


 かれえを口にしたイシュトバーンさんが感嘆する。

 そうだろうそうだろう。

 イシュトバーンさんには一度食べさせたかったんだ。

 意見を聞きたいから。


「匂いも特徴的でしょ?」

「ああ、これの再現を目論んでいるのか? しかし何がどうなってこの味が出てるのか、サッパリわからねえな」

「必須の香辛料は教えてもらって、もう魔境で見つけてきてるんだ。今年中には試作品作れるよ」

「ははーん」


 何か考えてるね?

 目がえっちになってます。


「ユーちゃん、ふわとろの卵おいしい!」

「本当です。全然カレーの刺激に負けてない。素晴らしいオムカレーです!」

「旨みが強いんだよね。ワイバーンの卵は高級食材だよ。でも魔物の卵だから、大量生産はできないんだよなー。商売には向かない」

「あんたの考えは、いつも商売方向なんだな」


 皆が笑う。


「かれえはドーラで米食普及させる切り札にしようと思って」

「米はクセがあるわけじゃねえ。価格が安くて炊き方さえ知られれば、すぐ一般に普及するだろうけどな。米食い慣れてる移民は多いだろうし」

「そーかー」


 となると心配しなくても米は広まる。

 炊き方の心配の方が先か?

 いい炊飯窯を手に入れてマネしないとな。


「しかし……こいつは人を呼べるぜ」

「えっ?」


 当たり前のこと言いだしたぞ?

 そりゃあ匂いが強烈だから、人は集まるだろうけど。

 耄碌したか?

 画集完成まではしゃんとしててよ。


「耄碌じゃねえよ! ドーラでしか食べられない料理として、帝国から観光客を呼べるって意味だぜ」

「観光客? つまり商人じゃない一般人が直接ドーラに来て、買い物したり食事したりするってこと?」


 本気で観光を考えたことはなかったな。

 でも帝国の人が物見遊山でドーラに来て、おゼゼを落としてくれるのは大変ありがたい。

 ドーラ観光を推進するためには、旅費に釣り合うだけのエンターテインメントを提供しなくちゃいけないから……。


「かれえだけじゃいかにも弱くない?」

「まあな。だがあんたの持ってくる美術品は、そうそう拝めねえ一級品特級品ばかりだ。美術館を作れば誘引力になる」

「美術館かー」


 なるほど、美術品を売るんじゃなくて、ウリにして人を呼ぶ方向性か。


「あんたが獲得できる魔宝玉だってそうだ。普通は宝物庫に収蔵されてるようなやつだぜ? 見たい者はいくらでもいる」

「ふんふん」

「亜人独特の習俗とかアイテムなんかも面白いな。あんたなら伝手あるだろ」

「海の一族と森エルフは大丈夫。獣人とドワーフも何とかなりそう」


 ゲレゲレさんやアルアさんのルートでイケそう。


「他にもアイデアあるだろ?」

「あたしが提供できる一番のエンターテインメントは、わくわく魔境ツアーだけど」

「レベル上げしてどうするんだ。観光客は我が儘だから、魔境連れてくと危ねえぞ?」

「だよねえ」


 となると帝国人にとって興味深そうなものと言えば……。


「やっぱ魔物なんだよなー」

「特に帝国からドーラに遊びに来そうな連中は、見世物くらいでしか魔物を見たことはないと思うぜ? ただ魔物を飼うのは意外と難しいんだ」

「そーなの?」

「ああ。邪気持ってるやつらは人に馴れにくいし、魔物除けで弱っちまう。飼い方が確立されてるようなのは、それこそ帝国でも見られるしな」

「となると野生のドラゴ……あっ、スライム牧場!」

「ああ、オーランファーム西から北へ行ったところだったか。まだ商売してるんだな。しかし、スライムも危なくねえか?」


 イシュトバーンさんが行ったことあるとすると、少なくとも一〇年以上は前だろう。

 まだスライムの品種改良も進んでなかったに違いない。


「今、あそこのスライムすごく人懐っこくて可愛いんだよ。頭撫でてやるとキューって言うの」


 クララがコクコク頷く。


「お孫さんと協力して牧場を広げようとしてるから、話の持っていきようによっては、レイノスの近くに観光用の第二牧場を作ることができるかもしれない」

「面白いな」


 夢が広がるなあ。

 もっとも帝国が出国税を格安に設定してくれないとどうにもならんが。


「ぎゅー」

「悪くないぬ。もっと心を柔らかくするといいぬ」

「はっ、精進します!」


 ヴィルがシスターにぎゅーされて何ぞ判定してるぞ?

 変なの。


「おいしかったわ~」

「卵とかれえは案外合うことがわかった。でも普通に鶏卵使うとかれえに負けそうだから、工夫しないとなー」


 かれえの試作と卵の供給体制確立の方が先だな。

 ニワトリ増やしたい。


「ユーちゃんは忙しいの?」

「明日は肉祭りだよ」

「「えっ?」」


 バエちゃんとシスターは驚き、イシュトバーンさんは例のえっちな目を向けながらニヤニヤしている。


「移民が来たから、お肉をごそっと狩ってパーティーして、保存用のお肉も確保しとくの」

「いーなー」

「いいでしょ?」


 イシュトバーンさんが言う。


「保存用か。塩は足りるのか?」

「あ、わかんない。でも塩足りなくても聖風樹の箱がたくさんあるから、とりあえずの用は足りるよ」

「ああ、そうだったな」


 ザクザク宝箱のイベントで得られる、中に入れたものが劣化しにくい箱だ。

 移民用に持っていこ。


「しかし人口急増は決まってるんだ。製塩事業は早めにスタートさせないといけねえだろう?」

「やっぱイシュトバーンさんもそう思う? 新規に塩作ろうって黄の民と話してるんだけど、今開墾の方に人手を取られて動けないんだよね」


 海水を取り込んで転移させる基幹装置は試作しといた方がいいか。

 デス爺は暇だろうけど、アルアさんは忙しいしな?


「うーん、考えがまとまらない」

「ハハッ、まあ少しは休むといいぜ」

「そうよ。ユーちゃん働き過ぎ」

「動いてないと退屈でしょうがないんだよ」

「理解はできる、が」


 イシュトバーンさんは若い頃、足で稼ぐタイプの商人だったという話だ。

 ドーラ中を駆け回ってたんだろうなあ。


「あんたの行動力は異常だろ。動いてないと死ぬのか?」

「死んじゃうかも。美人薄命だから」


 アハハと笑い合う。

 『アトラスの冒険者』になってやれることがたくさんになったのは嬉しい。


「ごちそうさん、美味かったぜ」

「ごちそーさま。今日は帰るね」

「またね」

「さようなら」


 転移の玉で行ったり来たりを繰り返し、イシュトバーンさんを送り届けて帰宅する。

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