第760話:シスターはムチが似合いそう
「ただいまー」
「おかえりなせえやし」
完成したサフランの原画を版画屋さんに置いてきて、ついでにおっぱいさん、ニルエ、アリスの刷り上がりの絵をもらって来た。
よし、これでヘリオスさんに会って交渉できるな。
今日この後の用事は、イシュトバーンさんをチュートリアルルームに連れてって、絵を描いてもらうこととかれえを食べること。
「イシュトバーンさん呼んでくるね」
◇
フイィィーンシュパパパッ。
チュートリアルルームにやって来た。
「ユーちゃん、いらっしゃい。えーと、その方が?」
「絵師のイシュトバーンさんだよ。こちらバエちゃんとその上司のシスター・テレサ」
「おお、二人とも美人じゃねえか。よろしくな」
「「よろしくお願いします」」
今日はバエちゃんとシスター・テレサの絵を描いてもらう日だ。
バエちゃんはいつもの正装にあたしがあげた頭飾りを身につけている。
シスター・テレサはやや光沢のあるスーツだな。
色眼鏡をかけて軍人みたいな帽子を被っている。
シスターも正装なのかもしれない。
「……シスターはムチが似合いそう。何となくだけど」
「奇遇だな。オレもそう思ったぜ。あんた持ってねえか?」
「さすがにムチはないなー。あっ、もっといいものがあるから持ってくる! 先にバエちゃん描いててよ」
「おう」
転移の玉で一旦家に戻り、以前宝箱から出た魔法のロープを持って再びチュートリアルルームに戻る。
イシュトバーンさんが聞いてくる。
「そのロープは……マジックアイテムだな?」
「イシュトバーンさんに見せてなかったっけな? 持ってる人の思った方向に伸ばせるの」
「ほう? かなり自由なポーズにできるな」
うむ、あとはイシュトバーンさんのセンスにお任せだ。
「ユーちゃん、カレーの煮込みがちょっと足りないと思うの。お願いしていい?」
「オーケー、任せて」
ワイバーンの卵も持ってきてるしな。
タイミングを見計らって調理していこう。
かれえは一度煮立ててかき混ぜて、と。
「もういいんですか?」
「うん、このまま蓋して保温しといて、食べる前にもう一度火入れれば十分」
「これがワイバーンの卵ですか。大きいですね」
ハハッ、シスター驚いてるし。
「疲れただろう。もう腕下ろしていいぜ」
「はい」
バエちゃんは足を揃えて立って、少し両腕を開いたポーズだった。
聖職者っぽい。
しかし描かれた絵は安定のえっち風味。
シスターが首を捻る。
「不思議ですね。何故この絵はこんなに色気があるのでしょう?」
「謎技術だよねえ。でもシスターの絵はもっとえっちに仕上がると思う。モテモテになっちゃうよ」
「も、モテモテですか?」
食いついてきたぞ?
「完成品の画集はもちろん一冊進呈するけど、それ以外にシスターだけのポスターも刷れるんだ。ポスターは一枚一〇ゴールド以下だよ。何枚か必要? あげたい人とかいるのかな?」
「では、一〇枚お願いできますか?」
「毎度。でき上がったらバエちゃんに渡しとくね。画集の完成はまだまだ先だけど、ポスターは数日で刷れるよ」
「わかりました。楽しみです」
飛びながら見ていたヴィルが言う。
「御主人、わっちの絵は描かないぬか?」
「ごめんねえ。これ帝国にも輸出する予定なんだよ。クララとヴィルはさすがに正体に気付く人がいると思うから」
「そうぬか……」
「いいぜ、ヴィル。今度描いてやろう」
「ありがとうぬ!」
「よかったねえ」
ヴィルも描かれたいのか。
意外だな?
画集には載せなくても、ポスター販売でイシュトバーンさんに還元できそうではある。
「よし、描けた! モデル交代してくれるか?」
「ありがとうございました! どおどお?」
「バッチリだよ」
「いやーん、いい感じ!」
高速クネクネ出ました。
イシュトバーンさんが目を見張っている。
描き直しさせろって顔してるけど、これはこれでよく描けてるからいらないとゆーのに。
「シスターは画集じゃない一枚の絵欲しいみたいだけど、バエちゃんもいる?」
「私は画集があればいいかな」
あとで注文もできるからね。
「これはまた……」
イシュトバーンさんがシスターのポーズにかなり注文を付けている。
椅子に座って足をやや開き気味に、色眼鏡をかけたまま片手で下げ瞳を見せる。
もう片方の手でロープを空中に漂わせて……。
「既に雰囲気がひじょーにえっちなんだけど?」
「完成が楽しみだろ?」
バエちゃんがかぶりつきで見ている。
「嫌らしいぬ! でも悪くないぬ!」
「ズバリヴィルの言う通りでしょう」
まさに嫌らしいのに悪くない絵だ。
イシュトバーンさんノリノリなのが見て取れる。
「えっち過ぎて発売禁止になったらどうしよう?」
「もう筆が止まらねえよ。露出が多いわけじゃねえんだ。見るやつの性根がエロいとエロく見える絵って銘打っとけ」
「ズル賢いなあ」
そー言われるとそんな気もしてくる謎絵だからなあ。
「ピーロリロン」
「何の音?」
「あっ、お米が炊けた音なの」
「へー、便利だな」
じゃ、かれえにもう一度火を入れて、スクランブルエッグも作っとくか。
ワイバーンの卵は火が通るの時間かかるしな。
「クララ、手伝ってくれる?」
「はい」
クララにかれえを見てもらい、あたしはスクランブルエッグだ。
殻の頭をカットし、塩入れて混ぜ混ぜ。
殻ごと火にかけて、さらに混ぜ混ぜ。
「ふうん、殻ごと火にかけるのねえ」
「うちにはワイバーンの卵を調理できる大きさの鍋がないんだよ。で、こういうやり方を教えてもらったの」
あ、火が通ってきた。
もう少しだな。
「イシュトバーンさん。どれくらいで描き終わる?」
「あと五分だ」
「ちょうどいいな。こっちできたら盛りつけとくね」
「おう」
よーし、あとは余熱でいい感じだろ。
米をよそいかれえをかけて、さらにその上にスクランブルエッグを乗せると。
「できたぞー!」
「こっちもだ!」
どんな絵になったかな?
「うはー、こりゃあ男が群がっちゃうねえ」
「そ、そうですか?」
「間違いないぜ」
イシュトバーンさんの鼻高々、会心の出来なんだろう。
ヴィルは?
うん、大丈夫だな。
変に酔ったりしていない。
「これ、モデルのお礼に渡してるんだ。もらってよ」
透輝珠を渡す。
「ありがとうございます」「ありがとう」
「描いてる最中から匂いが気になってたんだぜ」
「でしょ? 熱い内にかれえをいただこう!」




